Data Scientists Special Talk Session
データサイエンティストが語るアナリティクスの現在と未来

【 後編:データサイエンティストが切り拓く未来 】(3/4)

激増するデータ、拡大する役割

―― さて、これから世界中のデータ量が激増していくと言われます。その中でデータサイエンティストの役割はいよいよ大きくなっていくかと思うんですが、これからのデータサイエンティストに、皆さんからアドバイスなどいただけましたら。

孝忠 データサイエンティストがこれから何をなすべきかというお話で言えば、「組織の壁を超える人材になる」必要があると思います。
どういうことかというと、今までは、マーケティング部門のためにマーケティング部門の人が分析しますとか、縦割りの分析がやはり多かった。これからは部門単位だけでなく、会社全体を良くするために何をすべきか、データ分析から価値を見出していくべきだと思うんですね。いわば、部門横断型のデータサイエンティスト。今やもう、業務と分析が紐づいていたり、施策と分析が紐づいていたりということが、当たり前になってきている状態なので。
では、データサイエンティストが広く横断的に会社内で動き回れるという状況を、データサイエンティスト自身が準備するのか、あるいは会社が準備するのかという課題はあると思います。しかしその枠組みは現に求められていますし、先進的な会社は、大体そうなっている。分析室みたいなものが設けられていて、オーダーを受けて、業務や部門、会社のための分析を行い、結果を返していく。そういう仕組みを持っている企業も増えてきているので、目指すべきはそのような世界観だと思います。

――なるほど。社内的な位置づけといいますか、役割ですね。データサイエンティストというのは、何となく「外側にいる分析屋」みたいなイメージがありますが、そうではないと。

山下 こういったデータ活用やアナリティクスを企業として使っていくことは、もう当たり前のことになるのは間違いありません。使わなければ負けるという時代になる。
その時に、やはり1つ、組織の問題は非常に大きいですよね。これはもう完全にマネジメントの問題で、個人ではどうしようもない部分がある。例えば、先進的なあるネット系企業では、分析用の組織を分社化して、グループ全体をサポートするというような動きにまで進んでいますけれども。

―― データサイエンティストという個の力はもちろん、より組織として分析が運用されるべきだ、ということでしょうか?

山下 そうです。極端な話、一般のビジネスユーザまで含めて、分析がごくごく当たり前の話になる。やらないと会社が存続しない。そういうレベルになると私は思っています。

孝忠 その部分でしか、他社との差異化の道がなくなってくるんじゃないかと思いますね。

―― 辻さん、いかがでしょう。データサイエンスの世界において、今後求められることとは。

データを「作る」必要性

 お二人の意見に付け加えて。これは自分がやっていかなければという面も含めてなんですが、1つには「データをもっと作っていく必要がある」と考えています。

―― データを作っていく?

 ポイントが2つあって。1つには、データの取得コストが非常に安くなってきています。センサーデータなどの、IoTの世界ですね。ですから、もっと行動を細かく取ればビジネスバリューが上がるものに関しては、積極的に取っていくべきだろうと。例えば防犯カメラの画像を新たに取り込めば、店舗では把握しにくかった来店者の人数や性別がわかるようになった。孝忠さん、年齢もおおよそわかるんですかね?自動販売機が認識するぐらいなので。

データサイエンティストはこれから、
「組織の壁を超える人材になる」
必要があると思います。

孝忠 NECのソリューションの場合、おおよそ年齢はわかりますね。何か群衆が集まっているな、みたいなこともわかります。

 そういったテクノロジー自体を、データとして活用していくべきという点が1つ。
もう1つ、既存のデータが、昔のフォーマットのままにずーっと来てるんですね。例えば商品マスターのようなマスター系が既に時代遅れになっているというのは、分析していて感じるところです。在庫管理のためのマスターにはなっていても、マーケティング用のマスターになっていないっていうのかな。

―― なるほど、重要な指摘ですね。

 既存のデータに、お客様の購買行動を加味した上で、改めてマスターに戻す。こうして精度よく活発に使えるデータを作っていくことは、データサイエンスとしてやっていくべき課題になるんでしょうね。
もちろんツールの先進化もあって、データサイエンティスト自体がどんどん専門的ではなくなり、一般化してきている。市民データサイエンティストと言いますか。
ですから今後は組織のために「データをたくさん作る」「皆の資産として、結果も含めて共有する」。そうしておけば、誰かが結果を考察して新しいことにトライしようとした時にも、リスクが減りますよね。

―― その中心として、データサイエンティストが旗振りをしていく。さらには、先進化していく必要があるのかもしれませんね。

NEC&SASが、お客様に提供できること

―― ここで孝忠さんにお聞きしたいんですけど、SASを利用する意義、あるいはSASとのパートナーシップの意義を、どんなところに見出していらっしゃいますか?

孝忠 オールラウンドなアナリティクス製品という観点からすると、SASがベストという判断をしています。特定のアナリティクス機能に特化したプロダクトやソリューションは数多くあるわけですが、トータルとしてプラットフォームをどう整理するか、全社基盤をいかに作るかを考えれば、SASという選択肢にたどり着くと思います。
それはやはり、SASが持つ製品群が、オールカバーになっている強みなのかなと。ですから我々が目指すのは、SASのプラットフォームの上に、幾つか特徴的なものを組み合わせて、その付加価値を持ってお客様に提供していくという姿です。

―― ありがとうございます。辻さん、NECという大きなパートナー企業に対して、SASのコンサルタントの立場から、どんなことを期待されていますでしょうか。

 データを分析する、あるいは組織内で共有するところに関してはSASで扱っているんですが、その外側の部分…例えば画像認識のエンジンやカメラといった機器類などは、SASではラインナップしていません。
今後分析というものに対して、プラットフォームだけでなく、もっと意味付け、価値付けをしていこうという企業が増えてくるとすると、そういった外側まで、トータルで考えて提供していただけるNECのような会社が市場に必要とされます。その部分を積極的に担っていただいて、SASはプラットフォームを支えるといった協業体制を、これまで同様、これからもお客様にご提供できればと思っています。

情報系システムは、基幹系システムと融合する

―― 山下さんはいかがでしょうか。

山下 時代の流れとして、情報系は、ミッションクリティカルに向かうはずです。いわゆる基幹系のシステムに、当たり前のように組み込まれるケースが多くなってくるだろう。といいますか、もう既にそうなってきています。CRMだったら、リアルタイムでクーポンが届くとか。機械のリアルタイムな故障予測なんかもそうですね。
SASとしては、情報系システムのこれまでの狭い定義を超えて、その世界に向かっていかなければならない。その時にはこれまで以上に、NECとの協業体制が重要になってくると考えています。
SASユーザの皆さまには、ストリームやリアルタイム系、その辺りへの進化をご期待いただければと思います。

孝忠 情報系と基幹系というのは、昔は分けて考えられていましたよね。基幹系は止まったらだめ、ミッションクリティカルであるのに対して、情報系は若干緩やかな感じだった。ところが今は、情報系すら基幹系になっていくという時代。そんな背景の中でNECは、これまでの基幹システム構築ノウハウを武器にして、お客様に価値を提供していきたいと思っています。これについてはぜひ、SASとの協同体制で進めていきたいと考えています。