Data Scientists Special Talk Session
データサイエンティストが語るアナリティクスの現在と未来

【 後編:データサイエンティストが切り拓く未来 】(2/4)

職業適正と、育成のプログラム

―― ここで、少し話題を変えまして。データサイエンティストの育成について考えてみたいと思います。どうしたらデータサイエンティストになれるのか?もしくはマネジメントの観点から、どうしたら育成できるのか。その辺りは、どのようにお考えでしょうか。

孝忠 現在、データサイエンティスト協会にて、データサイエンティストが有すべきスキルをまとめたチェックリストが制作されています。それを見れば自分のレベルがわかる、そういう客観的な指標ですね。
もっと個々人寄りのベーシックな部分で言えば、「何を自分の軸(武器)とするか」があるかと思います。1つ自分の強みを軸として、そこに付加していく。例えばビジネスに強みを持っていて、データサイエンスやエンジニアリングの観点を付加する人もいれば、データサイエンスの分析力を武器に他の2つを学ぶという方もいます。
NECの場合は、もともとエンジニア力が強みの会社なので、そこにデータサイエンスやビジネスの力をプラスアルファして、データサイエンティストを目指すパターンが多いですね。

―― NECでは、そのための具体的なHow toといったものを用意されているんでしょうか?

孝忠 当初は座学で色々やってみたんですが、ちょっとそれだけでは難しいという結論になっていて。基本はハンズオンというかOJT、先輩について回って一緒にやるのがベストだろうと。いずれにしても、1人で回せるようになるまでには時間がかかりますね。

―― SASには、アナリティクスのリーディングカンパニーとして、データサイエンティストをいかに育成するかといったプログラムはあるのでしょうか。

山下 はい。「データサイエンティスト基礎講座」というものを開講しています。加えて、ベースになる統計ですとか、システム系のトレーニングを豊富に揃えています。SAS社内でのデータサイエンティスト育成に関しては、別途、社内用のトレーニングを行っていますが、最後はやはりOJTですね。

 私自身の体験からすると…どれだけ案件に関わるか。案件の量と質に恵まれると、成長が早いんだと思います。私は運良く、若かりし頃にお客様に恵まれまして、色々な分析を試させてもらえた。成果ももちろん求められるんですが、長いお付き合いの関係性の中で「失敗してもいいから面白いことやってみな」という機会をいただいて。そういう時期があったから、分析って面白いなと思ったんですね。
この「面白いな」というモチベーションが消えない限りは…。データサイエンティストを構成する一部分は、そこなのかな。データを見て面白いという感覚であったり、役に立ったという達成感であったり。どうなんでしょう?

極上の分析は、アドレナリンを伴う?

――データを見て面白いというのは、独特の感覚ですね。確かにこの仕事に就かれている方々からは「データの話を肴にして飲める」といった、少々変わった話も耳にしますが。

孝忠 面白いテーマですね。データサイエンティストのモチベーションは、どこにあるのか?辻さんの場合は、データにモチベーションがあるだけじゃなくて、データに付帯する何かがあるような気がしますね。

 そうですね。なめこでいうと、ぬるっとした部分。前回もお話ししましたが。

私自身の体験からすると…
どれだけ案件に関わるか。
案件の量と質に恵まれると、
成長が早いんだと思います。

―― すみません、ちょっと余計にわからなくなったんですが…(笑)。山下さんはこの感覚、おわかりですか?

山下 データサイエンティストの3つの軸にも関連しますが、バックグラウンドのある人は、もともとその軸に興味があるわけですよね。ですから「このデータを使ったら、こんな発見ができるかもしれない」という、課題解決に喜びを感じるアナリストは、非常に多いですよ。

孝忠 アドレナリンが出るっていうか。何でしょう、説明がなかなか難しいんですが。分析から施策に落ちた瞬間というのは、本当にアドレナリンが出るような感覚なんですよ。「これをお客様に伝えたら、きっと凄く刺さるに違いない」という知見が、自分の中で上手く見つかった瞬間に、それはもう…。

 実は私もまさに昨日、同僚と一緒にアドレナリンを出したばかりです。発電機の故障のデータで、まったく傾向がわからなかったんですけれども、1つ、2つ、3つと分析手順を加えていくと、それまで見えていなかったものがポンと出てきて。それが仮説通りの動きをしていたことがわかると、もう2人で嬉しくて…。

―― ある意味、科学ですね。仮説を検証するという感覚。実験室での話などに似ている感じがします。

山下 アプローチはさまざまあるんですけど。まったくわからないデータには、最初に仮説を置いたりしますので。その通りになっていたということは、自分のロジックが合っていたということで、まさに研究ですよね。

孝忠 ええ、そんな感じですね。データそのものに何かがあるというよりは…「わかった!」という時の、まるで頭の上で電球がピカーンと光ったような感じ。多分、それが中毒になるんでしょうね。
この仕事の8割はデータ加工で、苦しい世界なんです。泥臭くやらなければいけなくて。その8割をどうして我慢できるかと言えば、残りの2割に、発見の楽しさや可能性が広がっているからなんです。練習を頑張っていると、オリンピックで大きく記録が出せる、というような。

―― プログラミングやSEの仕事とは、やはり少し感覚が違うんですね。大変興味深いです。