チャットボットとは?
どうすればアナリティクスと組み合わせることができるのか?
執筆: アリソン・ボーレン(Alison Bolen)、SAS Insights Editor
あなたがたとえSiriやAlexaと会話したことがなくても、オンラインでチャットボットに出会っている可能性はあります。多くの場合、それらはチャットウィンドウの中に登場し、次のような挨拶をしてきます。
- サイトへのご来訪ありがとうございます。本日はどのようなご用件でしょうか?
それがどのようなサイトかにもよりますが、あなたは故障した家電製品について尋ねるかもしれませんし、投資のアドバイスを依頼するかもしれません。チャットボットは適切に応答するようにプログラムされており、フォローアップの質問を尋ねてくることさえあります。
オンラインの顧客サービス・チャットボットから家庭のパーソナル・アシスタントに至るまで、さまざまなチャットボットが私たちの生活に浸透し始めており、多くの場合はとても便利です。しかし、どのような仕組みで動いているのでしょう? また、その機能をビジネスの世界に拡げるにはどうすればよいのでしょうか? この記事では、チャットボットを動かしているテクノロジーについて説明し、アナリティクスでチャットボットを活用する方法を検討します。
チャットボットの定義
チャットボットとは、人間とコンピューターのやり取りを簡素化するために設計された会話型AIの一種です。チャットボットを利用することで、コンピューターは話し言葉や書き言葉による人間の入力を理解し、それに応答できるようになります。
「チャットボットは、シンプルなキーワードやプロンプトに応答するように、あるいは、特定のトピックについて複雑な会話をするようにプログラムすることが可能です」と、SASのAIおよび言語アナリティクス・ストラテジストであるメアリー・ベス・ムーア(Mary Beth Moore)は述べています。「キーワード照合を用いた情報取得機能から、先行する会話に基づき “詳細な応答” や “個別調整した提案” を提供するアクティブ・ラーニング機能まで、チャットボットの複雑さの度合は多岐にわたります。」
多くの業種では、顧客サービスやeコマースを改善したり合理化/効率化したりする目的でチャットボットを利用しています。以下に示すチャットボットの主要な応用用途を考えてみてください。
- 顧客サービス・チャットボット: 多くの企業は、助けを必要としている顧客向けの最初の対応窓口としてチャットボットを利用しています。ほぼすべての業種の企業が、顧客が容易にWebサイトを閲覧できるように手助けしたり、顧客のシンプルな疑問に返答したり、人々を適切な連絡窓口に案内したりする目的でチャットボットを利用しています。
- eコマース・チャットボット: 小売企業や通信企業は、顧客とのやり取りの追加的なチャネルとしてチャットボットを利用しています。こうしたボットは、リクエストや取引を完了させるための直線的なプロセスフローに沿って顧客を導くように設計されています。
- バーチャル・アシスタント・チャットボット: Siri、Cortana、Alexaといったパーソナル・アシスタントが人気を博している理由は、そのメリットの即時性が向上し、消費者の日常生活に容易に組み込めるようになったからです。人々は「情報の取得」、「予定のスケジューリング」、「各種のスマートホーム機能の操作」などを素早く実行するために、これらのアシスタントを利用しています。
チャットボットは、人間の会話をシミュレートしたり、人間と同等の知的な振る舞いを示したりするようにプログラミングされます。 Mary Beth Moore AI and Language Analytics Strategist SAS
チャットボットの動作の仕組み
チャットボットは発話音声またはテキストを通じて人間とコミュニケーションをとります。どちらの場合も、機械学習や自然言語処理(NLP)のような人工知能(AI)テクノロジーを活用します。
NLPはAIの下位分野であり、人間の言語を解読・分析・解釈できるように機械に学習させる取り組みです。このテクノロジーはチャットボットに対し、言語の構造と意味を理解するためのベースラインを与えます。NLPにより、コンピューターは実質的に「人間が何を尋ねているか」、「どのように応答するのが適切か」を理解できるようになります。
「チャットボットは、人間の会話をシミュレートしたり、人間と同等の知的な振る舞いを示したりするようにプログラミングされます」と、ムーアは述べています。「ディープラーンニングと強化学習の発展により、チャットボットは、より複雑な言語表現を解釈したり、人間と機械の会話のダイナミック性を改善したりできるようになっています。」
実質的に、チャットボットは「あなたが尋ねた内容」を「チャットボット自身が理解している意図」に照合しようと試みます。チャットボットはあなたとのコミュニケーションを重ねるほど、より多くのことを理解し、あなたや “同様の質問をする他の人間” とのコミュニケーション方法をより多く学習していきます。あなたがポジティブな反応を示すと、それによってその回答が強化され、チャットボットはその回答を再び使うようになります。
ダウンロード: ディープラーニングをSAS® で実践する方法
チャットボットを支える重要なテクノロジーであるディープラーンニングと、その応用用途について理解を深めましょう。このホワイトペーパーはデータサイエンティスト向けに書かれており、SASを用いてディープラーニング・モデルを作成する方法に関するステップバイステップ方式の概要説明も含んでいます。
アナリティクスにおけるチャットボットの応用
SiriやAlexaのようなパーソナル・アシスタントは複雑なタイプのチャットボットであり、現在の天気から、最新のニュース、個人のカレンダー、音楽の選曲、不特定の質問まで、幅広いシナリオや問い合わせに応答するように設計されています。「顧客の苦情や問い合わせを担当窓口に取り次ぐこと」のような特定の目的を持つチャットボットは、可能性のある質問/返答の範囲を限定して設計されています。
SASでは、チャットボットをビジネス・ダッシュボードやアナリティクス・プラットフォームに組み込むための様々な方法の開発に取り組んでいます。これらの機能には、アナリティクスの結果を利用するユーザー層を拡大し、新規ユーザーや技術に詳しくないユーザーを魅了するポテンシャルが秘められています。
「チャットボットは、人々がそれとは気づかないままでアナリティクスを利用できるようにする上で重要なテクノロジーです」と、SASの元経営幹部であるオリバー・シャーベンバーガー(Oliver Schabenberger)は述べています。「チャットボットは人間のようなやり取りを生成するため、誰もが(アナリティクスの)結果にアクセスできるようになります。」
チャットボット機能をアナリティクス・ソリューションに導入すると、アナリティクスと会話機能を組み合わせた多様な機能が実現します。
- チャットボットは、企業が保有する、または一般公開されている大規模なデータセットに対して自動的にクエリを発行し、その結果を言葉で説明することができます。
- ユーザーは例えば「この四半期に最も多くのリードを生み出したマーケティング・キャンペーンはどれですか?」と口頭で伝えるだけで、集計結果や分析結果をリクエストできます。
- チャットボットは質問への回答を提供した上で、データ内や関連する過去のクエリ内に認められるパターンに基づき、追加の情報を提供したり、閲覧するべき関連レポートを提案したりすることができます。
- ユーザーはチャットボットに対し、結果を他人と共有するように依頼することもでき、共有の操作は自動的に実行されます。
チャットボットと専門業務用アナリティクス・ソリューションを組み合わせ、アプリケーション内で明示的なタスクを実行させることも可能です。
ソーラーファームに関する質問に答えるチャットボット
ソーラーファームの来月の発電量はどれくらいの見込みか? 個々のソーラーセルはどのような状態か? ソーラーファームが夜間に発電することは可能か? チャットボットはこれらの質問やその他の質問にどのように回答するのでしょうか? その答えは、SASのアドバンスト・アナリティクス研究開発部門シニア・マネージャーのジャレッド・ピーターソン(Jared Peterson)と、SASの元経営幹部のオリバー・シャーベンバーガー(Oliver Schabenberger)によるデモでご確認いただけます。
ソーラーパネルに話しかける
ある大規模なソーラーファームの施設管理者は、コンピューターから離れているときでもソーラーパネルのモニタリングやコントロールを実行できるツールを必要としていました。そこで、ソーラーパネルからライブ方式で届くストリーミング・データを分析する「施設管理用のSAS® ソリューション」を用いて、チャットボットが設計されました。
この施設管理者は今では、施設の状態や個々のパネルの発電量について直接チャットボットに尋ねるだけで、日次/月次/季節単位の発電量のサマリー情報を受け取れるようになっています。また、モバイル・チャット・インターフェイスによって技術者向けの機能拡張がなされており、技術者たちは「パネルを再起動するために、あるいは悪天候時にパネルの状態を確認するために屋外に出ているとき」でも、施設管理アプリケーションに問い合わせることができます。
不正と闘うための時間を増やす
ある非営利の金融機関は、ID窃盗の削減を促進するためにチャットボットとアナリティクスを組み合わせました。このチャットボットはオンラインまたは電話で被害者とやり取りすることで、それぞれの状況に応じた適切な保護手順の実行をコーチングします。また、財布からパスワードまでの広範囲にわたり、サイバー攻撃、詐欺行為、不正行為、プライバシー問題、実際の損害額の識別も行います。
この分析に基づき、チャットボットは「必要な情報を収集し、次のステップをレコメンドするための具体的な質問」を被害者に行います。この合理化/効率化されたアプローチにより、コールセンターの担当者がケースの解決に専念できる時間が増大します。
成否のカギはコミュニケーション
上記のボットはどちらも自然言語処理を用いて会話のトピックを予想し、典型的な会話フローを管理します。そして、アナリティクスまたはAIアルゴリズムの算出結果に基づいて回答やアドバイスを提示する、という方法で応答します。
「チャットボット・テクノロジーはAIを我々全員がアクセスできるものにし、また、それを実現するためにチャットボット自体がAIを利用します」とシャーベンバーガーは述べています。
あらゆる種類の企業や組織が今、チャットボットとAIアナリティクスの組み合わせに秘められているエキサイティングな可能性に注目し始めています。なお、NLP、AI、ディープラーンニングなどのテクノロジー面は複雑に思われるとしても、本質面では「コミュニケーション」という1つのシンプルなコンセプトに立ち戻りますから、その点を見失わずに取り組むことが重要です。
推奨資料
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