新世代のビジネス・インテリジェンスがIT部門にもたらす価値とは

IT部門は、企業全体のIT資産を選定・管理し、経営の見える化およびスピードアップの実現で企業価値を高めようとしている。ここ十数年、情報資産を生かすBI展開は、IT部門にとって大きなチャレンジだった。しかし、BIツールには大きな弱点もある。期待どおりの性能を出すために投資がかさみがちになること、そして一度作ったモデルを容易に変更できないことなどだ。それらの弱点を、インメモリ技術やグリッドコンピューティングなどでインフラレベルから抜本的に解決する、いわば新世代のBIが登場した。新世代BIにより、IT部門が提供できる価値とはどのように変化していくのだろう。SAS Institute Japan ビジネス開発本部 IMAグループに聞いた。

――IT部門にとって、従来のBIツールにはどのような課題があるのでしょう。

BIツールは企業全体の経営状況の可視化や経営分析を実現できるツールとして浸透し、広く普及するとともに多彩な機能を備えるようになりました。ただ、多機能であることと現場のニーズは必ずしも一致するとは限りません。「多機能だからだれもが使える」となればいいのですが、実際には「多機能だから使いづらい」ことも多く、IT部門はマニュアル作成やトレーニング提供にかなりの業務負担を強いられます。

一方、機能を限定してノントレーニングで幅広いユーザーに使ってもらおうとすると、深く分析したい人のニーズには合わないものになってしまいます。多くの人が使うことになると、システムが重くなりますから、性能が落ちることも問題でした。さらに、特に高機能・多機能なBIツールになると、経営分析に利用するモデルを柔軟に変更しづらいことが多く、現場のニーズが変わっても、迅速に対応することが難しいという問題も抱えています。それらの課題は、すべて新世代のインメモリBIであるSAS Visual Analytics(VA)で解決できます。

――まず性能面から伺います。VAにはパフォーマンスの問題は存在しないのでしょうか。

使用する環境によって、まったく問題がないということではありません。ただ、インメモリの分散型アーキテクチャを利用するため、パフォーマンスを高めたければブレードを追加すれば済みます。新たにサーバを立ち上げ、入念にテストをしてから公開するような手間と時間はかかりませんし、パフォーマンス向上にかかるコストも見えやすいということもメリットです。

旧来のBIツールを利用する場合、現場のセルフサービス化を加速するという名目で、「IT部門はデータを整えます。現場は自由にお使いください」というアプローチは非現実的でした。現場に自由に使われてしまうと性能を保証することができませんし、現場が欲しがるデータを提供するためにIT部門が関わらなければならない場面が多いためです。VAなら、「IT部門は必要なデータをすべて公開し、だれもがデータの意味をわかるようにしておきます。システムのパフォーマンスは保証するので、自由に分析してください」というアプローチが可能になります。

――VAを導入すると、現場はどの程度自由に分析できるのでしょう。そして、IT部門は、どの程度現場ユーザーへのデータ提供という面でかかわっていけばいいのでしょう。

これまでのBIツールでは、キューブを作ること、検索効率を高めるためのキー設定やインデクシングなどがIT部門の仕事でした。IT部門は、現場が必要とするデータを、必要な形で提供することで現場を支援してきたのです。VAがあれば、これらの作業は必要なくなります。ただ、データについてその意味を含めて深く知っているのはIT部門です。IT部門主導で、組織横断型のBICC(BIコンピテンシーセンター)のような機能を設け、現場に向けて能動的にデータの使い方を提案するような関わり方ができれば理想的なのではないでしょうか。

――現場にとっても、価値の高いツールと言うことができますか。

現場にとって最大の価値は、事実に基づいて仮説を立てられることでしょう。ビジネス分析を行うにあたって、まず仮説を立てるのですが、実はその仮説自体が極めて恣意的に立てられていることがあります。仮説を立てる前提が、現場担当者の経験と感覚に基づいていることが多いのです。これは、情報が大量にあっても、それを全件分析して傾向を把握できるような、高性能なシステムには莫大な投資が必要だったためです。VAなら、全件データを対象に素早く分析し、仮説を導くことができます。現場にとって、その価値は極めて高いものになるはずです。

――コストについてはいかがですか。

IT部門にとってハードウェア投資は、コストが見え、失敗するリスクの少ないものです。最近では、データベースをチューニングして性能向上を図るより、ハードウェアを追加した方が安全で安いという議論があるほどです。BIツールの性能向上を図る場合、従来型のスケールアウトでは、サーバの立ち上げ、設定、ソフトウェアのセットアップなどの作業が必要でした。これに対し、VAはパフォーマンス向上のためにブレードを追加するだけで済みます。ですから、コスト削減はもちろん、リスクの低下、ガバナンスの徹底という面でも大きな魅力になるでしょう。ここで言うガバナンスは、現場がブラウザやタブレット端末から利用できるため、クライアントソフトウェアを配布する必要がないという意味を含みます。

――タブレット端末には、多くのIT部門が注目していますね。

IT部門にとってタブレット端末のメリットは、PCより安く導入でき、メンテナンスが楽という点にあります。すでに導入している組織も多く、たとえば病院で業務に利用されているタブレット端末を目にするケースが増えてきました。VAをタブレット端末で利用する例としては、製造業の品質管理があります。生産機械の調整をする技術者はこれまで、毎朝デスクでデータを調べてから現場へ行っていました。VAを導入すると、現場でタブレット端末を手にして必要な情報を得ながら機械をセットアップできますから、作業時間が短縮され、リアルタイムなデータを使った機械の調整も可能になります。VAをタブレット端末から利用してもらうと、IT部門は、「欲しいときに」、「欲しい情報を」、さらに「欲しい場所で」提供できるようになるのです。

――最後に、IT部門のリスク低減にVAが果たせる役割についても教えてください。

IT部門の業務にはリスクがつきもので、担当者はリスクを正しく認識し、さらにコストも考えた上でサービスを提供しています。現場からニーズが上がってきても、「次のシステム更改まで待ってくれ」と返事をせざるをえないのは、そのためです。たとえば、そのニーズを実現しようとするとデータベースの項目追加が必要で、システム全体に及ぼすリスクチェックに時間やコストがかかります。IT部門としては、できることならニーズに応えたいのですが、できないという現実問題があるのです。

VAなら、新しいニーズに応えるためにブレードを追加して、必要になるデータをメモリにロードするだけで使えます。また、IT部門が現場をサポートできる面白い機能もあります。現場の担当者がPCに保存している大きなデータをVAにアップロードし、VAのハイパフォーマンスな環境でほかのデータと組み合わせて分析できるのです。アップしたデータは数時間後に自動で消えるように設定できますから、リスクも最小化できます。このように、VAはリスクを抑えながら現場のニーズに最大限に応えられる環境を作れます。VAは、現場だけでなく、IT部門にとっても高い価値を提供できるソリューションと言えるでしょう。