Vodafone Australia

顧客との関連性強化で、反応率アップとコスト削減を実現

オーストラリアにおける携帯電話の音声通信およびデータ通信市場は、事実上、飽和状態に達している。そんな中、Vodafone Australiaはオーストラリアの携帯人口の95%に相当する約374万人にサービスを提供している。Vodafoneのような通信事業者が、今後も成長基調を維持していくためには、戦略の1つとして競合企業がもつシェアを獲得することが不可欠だ。また一方で、獲得した顧客1人当たりの売上増加も図らなければならない。

さらに激しい競争によって利益がますます圧迫されている現状を受け、マーケティング・キャンペーンにも高い成功率が求められてくる。競争激化に伴って、顧客には当然、競合企業から数多くの魅力的なサービスが提案されているはずであり、そうした中でも既存顧客を維持し、より優良な顧客へと育てていくといった課題も出てくる。

このように困難な課題を抱えながらも、Vodafone AustraliaはSAS® Marketing Optimizationを導入することによってマーケティング機能の強化を図り、販売率の大幅な向上に成功した。新ソリューションの導入はわずか3ヵ月で完了し、その高度な分析機能と顧客最適化のテクニックを利用することによってVodafoneは、よりターゲットを絞った、コスト効率のよいマーケティング・キャンペーンを展開することができるようになり、それがキャンペーンの成功率向上に結びついたのだ。


お客様とのコミュニケーションの中で一貫性が欠けたり、矛盾が生じたりすることがなくなり、顧客満足度の向上だけでなく、マーケティング・キャンペーンに関するROIも大幅に改善できると期待していました。

Cahyadi Poernomo氏
Vodafone Australiaキャンペーンの分析およびインテリジェンス担当責任者

キャンペーン・コストを30%削減

Vodafone Australiaで市場動向の研究と改革推進を担当するゼネラルマネージャーのTyrone O’Neill氏は、同社がもつ多様なニーズへの対応を図るためにSAS導入を決定する上で、非常に重要な役割を果たしました。また、SASがVodafoneが使用している既存のITインフラとも容易に統合が可能である点もソリューション選択の際には好材料となった。このインフラの中には、SASと緊密なパートナー関係にあるTeradataのデータウェアハウスも含まれている。

O’Neill氏は、他にもSAS選択の理由を次のように述べている。

  • SASが提供する幅広いツール群
  • システムを停止させずにソリューション拡張が図れること
  • SASによる24時間365日のサポート体制
  • 世界各国で同様のソリューションを展開してきたSASの豊富な導入実績
  • オーストラリアにおけるSASの総合的なサービスおよび実績の高さ

O’Neill氏はVodafoneにおいて今後の方向性を示す指導的立場にあり、Appleをはじめとする製品との連携を図ってマーケティング活動にショート・メッセージ・サービス(SMS)を利用することを考えた先駆的存在でもある。今回SASを導入したことによってVodafone Australiaは予測的分析を利用したり、顧客に関する情報を単一画面に統合して視覚化したりするなどして、他の地域よりも一歩進んだマーケティング活動を展開できるようになった。

SASを導入する以前Vodafone Australiaでは、毎回100万人を超える顧客に対して定期的にダイレクト・マーケティングのキャンペーンを実施していた。しかし、同社でキャンペーンの分析およびインテリジェンスの担当責任者であるCahyadi Poernomo氏は「扱うキャンペーンの数が増え、戦略的にキャンペーンの連携が必要になってくるにつれ、われわれの能力は徐々に限界に近づいていました。必要な情報を手作業で引き出すには、あまりにも時間がかかり過ぎていたのです」と振り返る。

当時Vodafoneはキャンペーンに数百万ドル単位の予算をかけていた。Poernomo氏によれば、同社はこのコストを最大30%程度削減することを目指していたという。「SASの導入によって、お客様とのコミュニケーションの中で一貫性が欠けたり、矛盾が生じたりすることがなくなり、顧客満足度の向上だけでなく、マーケティング・キャンペーンに関するROI(投資対効果)も大幅に改善できると期待していました。Vodafoneは、こうした革新的な技術を最大限に活用した、オーストラリアで初めての企業となったのです。」

反応率の劇的な改善

VodafoneはSAS Marketing Optimizationを利用してデータの収集および分析を行い、キャンペーンのどの部分が最も成功したのかを厳密に計算している。最新の情報を得ることにより、一定の条件下において、どのチャネルが最も効果を上げたのか、どういった種類の顧客をターゲットとして、いつ、どんなアプローチを実行すべきだったか、といったことを知ることができる。

また分析結果は、次のような方法によって、今後のキャンペーン企画の手直しや最適化に活用され、これまでにない成果を上げられるようになった。

  • 携帯ユーザーの種類や行動の分類を促進するスコアリングやモデル化を行う
  • チャネル毎の傾向を管理する
  • 顧客ロイヤリティーおよび顧客離れの問題を解決する
  • クロスセル/アップセルの成功率を上げる

分析機能のおかげで30分もかけずに50万件以上もあるリードを処理し、最適化することが可能となった。Vodafoneが次の段階として目指しているのは、価格の最適化とリアルタイムでのWeb分析である。

O’Neill氏は、ソフトウェアの導入によって顧客からの反応率を以前の3倍~4倍にまで高めることができたといい、「時には、従来の10倍以上という反応が得られるといったこともあります」と説明する。オーストラリアで有数の新聞「The Australian Financial Review」とのインタビューにおいてもO’Neill氏は、SASシステムの購入および導入に要したコストは、全体的なITコストから見れば控え目な額であったと言及し、このプロジェクトに関しては初期投資から数ヵ月以内で早々に採算が見込めると見ていると述べている。

よりインパクトの強いコミュニケーション

さらにVodafoneではSASを利用して、顧客のトランザクションを記録したデータベースを徹底的に分析し、マーケティング・キャンペーンへのフィードバック状況を個人レベルで調査するなどして顧客行動の特定を進めている。例えばSASを使うと、かかってきた電話を取れないことが多い顧客を特定することができ、その結果から留守番電話サービスによってメリットを得られる顧客層を見極められる。この例では、次に選別された顧客層のみを対象とした留守番電話サービスの販促活動が行われることになる。

SAS Marketing Optimizationを導入する前は、非常に広い範囲の顧客に対して、さまざまな販促活動を行っていた。「しかし現在では、より少数の顧客に的を絞った提案を行っています。実際にお客様とのコミュニケーションの回数は減りましたが、働きかけを行う場合には、毎回よりインパクトの強い提案を行うことを意図しています」とO’Neill氏は語る。

反応率の飛躍的な向上以外にも、Vodafone側が行う提案がメリットとならない顧客層には提案を行わないように配慮することで、よりターゲットを絞ったコミュニケーションが図れるようにもなってきた。SASを利用することで、今ではどの顧客に対しても関連性のある提案だけを行うことが可能となったのだ。

またSASの導入は、マーケティング部門の文化に生産性を意識した変革をもたらすことにもつながった。導入以前は、これから案内しようとしている情報が顧客にとって魅力的であるかどうかを即座に判断することができなかったため、どんな製品でもすべての顧客に案内するといったアプローチが取られていた。顧客毎に最適なアプローチをすることが困難だったため、必然的にマス・マーケティングを行うことになっていたのだ。

しかし現在ではSASを使えば、たった2日で予測モデルを組むことができるので、特定の行動特性をもつ顧客を探し出して適切なアプローチができるようになり、商品の市場化も加速した。各顧客の行動特性に即した、ニーズの可能性が検出された製品だけを案内するというアプローチが取られるようになり、ニーズが検出されなかった顧客には当然ながらアプローチをしなくなった。

Vodafoneでは、時間の無駄または顧客との関係を悪化させる可能性がある施策を回避することで顧客へのアプローチの回数を減らすことができ、ダイレクト・マーケティングのコスト削減での成功を収めた。また、その一方で、顧客からの反応率が劇的に向上し、ROIにも目覚しい改善が見られ、結果としてビジネスの成長につながった。

Vodafone AustraliaでCRMの責任者を務めるSally Crockett氏は「全体的に見て、SAS Marketing Optimizationを使って感度分析を行うことによって、需要やサービス量、予算、サービス提供に必要なリソースを管理する能力が高まりました。このことが最終的には、サービスの市場化を早め、ROIにいたっては最大で4倍もの改善をもたらしたのです」と語った。

Vodafone Australia
Cahyadi Poernomo氏

課題

事実上、飽和状態にある携帯市場において成長を維持するため、競合企業のシェアを奪い、獲得した顧客1人当たりの売上アップを図る必要に迫られていた。

ソリューション

SAS Marketing Optimization

利点

マーケティング・キャンペーンへの反応率はこれまでの3倍~4倍にアップし、よりターゲットを絞ったキャンペーンを実施することによって、結果的にROIも向上した。