キリンビール株式会社

予測精度の高いSCMシステムにより、在庫の適正化をはかる

洋酒事業を効率化するために、新しいSCMシステムを構築

低アルコール/ライトテイストへとシフトする嗜好の変化などによって、日本における酒類の消費構造は劇的に変わりつつある。こうした状況下、キリンビール株式会社の洋酒事業は、シーバスリーガルやツードッグス、カルフォルニアワインのフランジアといった多岐にわたる人気商品を取り扱うことを通して、同社のさらなる競争力の強化と顧客満足度の向上に貢献している。

「現在、私たちはビールだけでなく、多種多様な酒類を取り扱う総合酒類メーカーとして、お客さまに支持され続けるためのさまざまなチャレンジに取り組んでいます。その中で、物流本部ではビール・発泡酒で培ってきた手法をもとに、洋酒事業における需要予測や商品発注、また出荷の流れや在庫推移といった、現時点から将来にわたるモノの流れのすべてを、一気通貫で管理できる新しいサプライチェーンシステム『洋酒SCMシステム』を開発しました。私たちはこのシステムを活用して、業務の生産性向上を実現していきたいと考えています」(キリンビール株式会社物流本部 需給担当 部長補佐 窪田圭吾氏)。


初期および運用における総合的なコスト評価や、日本での導入実績、サポート力、そして処理スピードなどにおいても、SASが一番のパフォーマンスを発揮してくれました。

石井 勝利氏
キリンビール株式会社 物流本部 企画担当

需要予測と調達業務を改革

洋酒SCMシステムの特長は、大きく2つある。ひとつは、属人的に処理してきた発注計画・受払シミュレーションなどの調達業務をシステム化し、自動的にアウトプットできるようにしたこと。そして、需要予測・出荷計画が、適切な分析手法によって科学的に導きだせるようになったことである。

「洋酒事業では、輸入品の割合が非常に多く、現在、海外14ヵ国34サプライヤと取り引きしています。しかも、発注から輸入通関までの必要期間(リーディングタイム)は極めて長く、商品によっては1年以上も前から予約しなければ確保できないものもあります。さらに、地域や季節、発注ロットなどによってもリーディングタイムは異なってきますし、国によってトラックの積載量なども法律で変わってきます。これらの複雑なファクターや条件をマスター化することで、どのようなタイミングで、どのくらいの数量を発注すれば良いのかという意思決定を、すべて自動化することが可能になりました。各担当の知見や経験に頼り、スプレッドシートベースで行なってきた属人的な作業を、大幅に効率化することに成功したのです」(同 企画担当 石井勝利氏)。

7つのモデルを駆使して、つねに一番精度の高い予測を選択

需要予測・出荷計画において、最も大きな役割を果たしているのが、洋酒事業に特化した7つの予測モデルである。これは、過去のデータに沿って予測するもの、直近の実績をより反映させるもの、また季節性に適合させるものなど、数十を超える分析手法をアレンジして特別に設計されたモデルである。ユーザーは、商品特性に合わせて変数やパターンを変えてシミュレーションでき、7つのモデルの中から一番予測精度の高い数値を選べるようになっている。また、新しいシステムでは、予測データの蓄積ができないといったことなど、従来のパッケージツールが抱えていたさまざまな問題も解決した。これにより、予実推移の比較と把握、実績/販売予測との実月ベースでの比較などがスピーディに行なえるようになった。さらに、予実の乖離を警告してくれるアラーム機能によって、変化に対する適切な修正も、素早くかけていくことができるようになっている。

「需要予測は、在庫適正化という目的を達成するための要となる部分です。そのソリューションとして、SASを選択したのは、何より予測精度に重きを置いたからに他なりません。候補に上がっていたいくつかのベンダー各社に、実際の過去のデータをモデリングしていただき、その結果を比較検討したところ、最も満足すべき予測精度を示したのがSASだったのです。また、初期および運用における総合的なコスト評価や、日本での導入実績、サポート力、そして処理スピードなどにおいても、SASが一番のパフォーマンスを発揮してくれました」(石井氏)。

さらなるインテリジェンス獲得をめざして

新しいシステムの導入によって、すでにいくつかの成果がみえはじめている。「これまでは『どれだけ発注すれば良いのか』ということにほとんどの時間を費やしてきました。そうした作業が自動化された今では、『その予測値が本当に正しいのか』という部分に視点が移ってきています。このモデルはどういうモデルで、どのような特性を持っているのかというところまで踏み込んで、システムを自分のものにしていきたいと考えています」(同 需給担当濱本祐子氏)。

担当者が自ら予測モデルをコントロールし、実践的なシミュレーションをくり返す。これによって、データを見る目が養われ、予測管理能力は徐々に高まっていくだろう。洋酒SCMシステムは、ユーザーのインテリジェンスの向上をサポートする仕組みにもなっているである。「今は、とにかく使い込んで、システムに関する理解を深め、習熟度を確実にあげていくことにフォーカスしています。そしてそこから得られた課題などを2次開発にフィードバックし、少しでも管理レベルを高めていけたらと考えています」(窪田氏)。


Kirin Brewery Company
写真右から: キリンビール株式会社 物流本部 需給担当 部長補佐 窪田圭吾氏 同 需給担当 濱本祐子氏 同 企画担当 石井勝利氏

課題

在庫適正化を実現する、精度の高い需給予測ソリューション

ソリューション

SAS® Supply Chain Intelligence による需要予測の精度向上と在庫回転率の上昇