株式会社かんぽ生命保険

保険引受リスク管理業務における医事統計分析を
SASソリューションの活用により高度化、
ビッグデータ分析にもとづいた
保険引受範囲の拡大と安定的な収益確保へ

株式会社かんぽ生命保険(以下、かんぽ生命)は、医事統計情報の分析にもとづく保険引受リスク管理の適正化・高度化を実現するためSASを導入した。全契約データを自由に加工・分析し、様々なリスクパラメーターを実行することにより、リスクを見極めた上で保険引受範囲を拡大するとともに保険契約者間の公平性と安定的な収益を確保することが狙いだ。

SAS deployment team in Japan Post Insurance
保険金・給付金の支払い実績データだけで1億レコード弱。さらに入院疾病データが新規に年間300万件追加されます。この規模のデータを高速処理し、高度な医事統計を実現できるのはSASだけです。

川村 明氏
契約サービス部
企画役

大量データを業務部門が扱うにはSASしかない

かんぽ生命は、日本郵政公社の民営・分社化により誕生した生命保険会社である。全国の郵便局を募集代理店とし、各種の生命保険商品を提供している。貯蓄性商品に強く、高齢者が入りやすい商品を数多くラインアップしていることが特徴であるが、契約者の万一のときに支えとなる保障性商品の強化にも取り組んでいる。

保障性商品の強化にあたり、保険引受リスクを適正化するためのビッグデータ解析は不可欠になる。同社には、3,232万件の保有契約件数(2016年3月末現在)とその保険加入時査定データ、および病気や事故、死亡の際に保険金・給付金を支払った支払実績データなどが大量に蓄積されている。しかしながら、かつてそれらのデータは巨大なホストコンピュータの中に眠っており、自由に加工・分析することが困難だったという。

契約サービス部 企画役 川村 明氏は、「半年に一度、ある程度カテゴリを絞ったサマリデータをもらうのが精一杯でした。さらに抽出条件の変更にはその都度システム改正要求を出す必要があったため、抽出のたびに多額のコストが発生していたのです。年齢別の入院率など粗い分析はしていたのですが、引受基準の見直しに活用するに足るだけの詳細なデータ分析は実施できない状態でした」と話す。

保険金・給付金の支払実績データだけで1億レコード弱。精緻な分析をするためのツールは導入しておらず、データサイエンスの専門部署もなかった。“突っ込んだ分析”の重要性を考えたときに、行き着いたのはSASのソリューションだった。

「被保険者の入院傷病データだけで、年間約300万件が新規に追加されます。この規模のデータを高速かつ自在に扱うことができ、高度な医事統計を実現できるツールとなると、選択肢はSASしかありませんでした」(川村氏)

取れるリスクを見極める

2011年10月、同社は統計担当の専任チームを設置し、SASを導入。まず約1年をかけて既存データのクレンジングを実施した。既存データの構造は郵便局の窓口にある端末で扱いやすいことを重視して設計・蓄積されているため、各項目がどのファイルやテーブルのどこに保存されているのかも不明な状態だった。それらを丁寧に確認しながら医事統計に使えば価値の高そうなものをピックアップし、分析用のデータに加工していった。

さらに時期を同じくして2010年から新契約システムが稼動し、新規の契約情報が登録されるようになった。これにより従来、紙で管理・保管されていた新規契約情報をデータで入手できるようになり、SASを活用し分析に最適なデータフォーマットで加工・蓄積し分析することが可能となった。

契約サービス部 統計担当 主査 庭本 康治氏は、「それまで紙で管理されていた契約情報をすべて手入力でデータ化するのは現実的ではありません。精緻な分析は稼働後の契約データに絞って行い、既存データは医事統計に役立てるという方針で進めました」と話す。

まず取り組んだのは、保険契約の一部を再保険会社に委託する出再保険の方針決定を行うための分析だ。出再保険により、従来、高リスクと判断され、保険引受をお断りせざるを得なかったケースでも保障提供が可能となる一方で、引受リスクの適正化のためにはより一層精緻なリスク分析が必要不可欠だった。

さらに、契約者間の公平性についても適性に管理し、すべてのグループのリスクが均一になるような商品設計と運用が求められる。そのためのデータ分析にも、SASは利用されている。

契約サービス部 統計担当 主査 清水 友教氏は、「特定の疾病など、データ量の少ないものを分析したいケースもあります。そうした際にはベイズ統計を利用して有意性検定を行うなど、SASに搭載される統計ロジックを利用することができます。シミュレーションを実施する際に、結果をグラフとしてビジュアルに把握できるため、特徴をつかみやすいこともSASの良さです」と話す。

頭の中にない課題にもこたえてくれる

統計チームは社内のさまざまな部門から寄せられるデータ分析の依頼や相談にも対応している。社内でのSAS勉強会の実施やノウハウの共有などによりSASの活用は拡大しており、募集管理部門や監査部門などを中心に施策立案などのデータ分析にも利用されている。

従来、一晩かかっていた処理を数時間で実行できるようになるなど、ユーザーからも好評だ。データ分析による数字にもとづいた意思決定を行う文化は、着実に育まれており、今後もさらに多くの部門で幅広い用途に活用するため、継続的な支援を行っていく。

庭本氏は、「他部門でのSASの利用者数は100人を超えました。問題が起きたときにデータに立ち返り分析する、というところまでは来ていますから、これからは“データから着想を得る”レベルになるための、さらなる啓蒙活動を行っていきます」と話す。

商品開発部門、決算部門などでSASの活用が進めば、業務の精度はより高くなる。さらに将来は、営業分析や経営分析にもSASを利用したい考えだ。「いま頭の中にない課題にも、視覚化して気づかせてくれるのがSASだという共通認識を育てたいですね」(清水氏)。

SASの導入により大量データを高速に扱えるようになり、精緻な分析を意思決定に役立てることができるようになったのは、大きな成果だ。さらに間もなく、引受範囲の拡大と引受リスク適正化に伴う危険差益の獲得により、収益の拡大という明らかな成果が見えてくるはずだ。

課題

医事統計情報の分析にもとづく保険引受リスク管理の適正化・高度化を実現したい

ソリューション

利点

SASの導入によって大量データを高速に扱えるようになり、精緻な分析を意思決定に役立てることが可能になった

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