日立キャピタル株式会社

コンタクトセンターの顧客対応履歴の分析で、高品質かつ整合性の取れたサポートを実現
―顧客との過去3年分のやり取り履歴から、即対応が必要な案件を瞬時に検出―

日立キャピタル株式会社(以下、日立キャピタル)では、コールセンターにおいて顧客から1日当たり平均1万5000件もの問い合わせを受けている。その膨大なやり取りの情報は、オペレーターによりデータとして蓄積されている。同社はSASを採用したことにより、高度な分析によってそのデータを活用し、オペレーターの対応をより良いものにするためのフィードバックを行える仕組みを構築した。

適切な顧客対応がなされていることを自動でチェックできる仕組みをめざして

日立グループの総合ファイナンス・サービス企業である日立キャピタルは、自動車ローンやリース、カード、損害保険など、多岐にわたる事業を展開している。日立ブランドを背負う企業として、提供する商品とサービスの品質に高いハードルを設定しているのが特色である。50年以上の歴史を持ち、創立時に家電品クレジットからスタートした事業領域は、現在では保険、信託、保証、回収などへと広がっている。近年は海外展開を積極化しており、国・地域ごとに異なるビジネス要件にも柔軟に応えられる体制を整えている。

同社は、「商品やサービスについて慎重に吟味し、高品質なものだけを顧客に提供する」という企業文化を軸にビジネスを展開している。その一環として2012年、顧客サポートの品質を高めることが経営課題の1つとして認識されるようになってきた。個人から法人まで、それぞれニーズの異なる幅広い顧客層は、さまざまな国と地域に広がっている。顧客対応をより良いものにして顧客満足度を高めることに加え、やり取りの中で万一不適切なものやコンプライアンスに抵触するおそれのあるものがあれば、それを検知して迅速に手を打てるようにできれば理想だ。

品質保証本部 資産債権管理部 部長 渡部 健司氏は、「現在、就業員数は日立キャピタルグループで約 5,000人に上ります。サービスの均質化・標準化を目的とする教育制度は従来からありましたが、それを補完する意味でも、現場で行われている実際のやり取りを把握し、対応のやり方について直接担当者にフィードバックするなど、従業員教育のPDCAを回せる仕組みが必要だと考えました」と語る。

当時、同社は顧客とのやり取りを記録するデータベースを複数運用し、一部には簡易な検索ツールが備えられていた。しかし、1日に1万件を超えるやり取りを、人数の限られる本社の担当者がすべて確認することは事実上不可能だった。自動化のためにはITが不可欠となる。このニーズに応えるソリューションを探していたところ、製造業のコールセンター業務で利用されていたSASの事例を知り、課題を解決できるヒントを得て導入を検討することになった。

品質保証本部 資産債権管理部 審査グループ 主任 飯村仁志氏は、「SASは、一般的なモニタリングツールでは不可能なレベルまで、さまざまな抽出条件の組み合わせができることに魅力を感じました」と話す。

採用が決まり、必要なすべてのやり取り履歴をSASに集約する作業がスタートした。同時に、膨大な情報の中から、現場へのフィードバックが必要なやり取りや、特殊対応が必要なものを発見する検索・分析の仕組み作りにも着手。2013年3月の稼働の際には、約70のルールで運用が始まった。

コールセンタースタッフによるデータ入力の質も向上

稼働後、仕事のやり方は一変した。新システムは、過去3年分のやり取り履歴と前日に投入される約1万5000件の情報を横断的に検索・分析し、毎朝担当者宛に、対応が求められる案件の情報を電子メールで送信。担当者はシステムにアクセスして内容を把握した上で、迅速にアクションを取れるようになった。

飯村氏は、「以前は各担当者が手作業で検索をかける必要があり、例えば休みを取ると業務が止まってしまうおそれがありました。今回の仕組みでは、一連のプロセスを自動化できたことで、情報を多方面に一斉配信することもできます。担当者は、ヒットした内容が適切か不適切かを判断し、それをシステムにフィードバックすると、システムが育ってくれるのもありがたいポイントです」と話す。

現時点において、緊急の対応を要するやり取りはそれほど多くない。当初は毎日平均で数十件くらいヒットしたというが、稼働後2カ月を経た現在はシステムが育ってきたため、数件に収まっている。今後検索条件のより細密化を実施していく。その際でも同様のヒット率で収まるよう、人、システムを育んでいきたいという。

初期のシステム化範囲は、国内に絞った。コールセンターへの簡単なお問い合わせから、お話をじっくりうかがうもの、Webから送られる長文の問い合わせ、手紙の文書データ、現場の顧客対応内容など、すべてのテキストデータをSASで検索・分析する。コールセンターでの言葉遣いなどは、現場のスーパーバイザーや管理職が即時指導する。

これにより、たとえば書類のやり取りが発生する際にコンプライアンスを遵守できていることを確認する作業などについては、本社がすべて把握できるようにした。また、債権回収の際に弁護士や司法書士が介入するという情報が現場担当者から入ると、本社主導で連携を取るなど、関連部署・関連グループ会社との連携が必要な情報を素早くキャッチする体制も整った。

現場改革も進んでいる。データを入力するコールセンターのオペレーターを中心に、情報は後から利用されるものであるという意識が高まったのだ。入力された内容は、5W1Hが明記され誰もが読みやすく、起承転結をはっきりさせたものへと変わってきたという。

過去の記録をさかのぼり、問題やエラーを瞬時に検出

システム導入における最大の成果について渡部氏は、「われわれは10年近くに及ぶ長期間のモニタリングを必要とする商品を扱っています。それぞれについて相当な量の履歴を残さなければならないのですが、顧客を軸に、過去の長い記録を即座にさかのぼり、人の目では見つけにくい問題点を見つけ出せるようになったことは重要な成果です」と話す。

日々の検索・分析のほかに、SASは過去のデータにも適用できる。すると、顧客と契約した条件を瞬時に取得し、現在の顧客の状態や契約について重要な情報を把握した上で対応できるようになるのだ。

導入時の目的は、顧客との不適切なやり取りをなくすことを中心とした、サポート品質の高度化だった。現在、新システムの稼働で現場改革が進んだことにより、たとえば顧客の行動分析など、より前向きな施策をSASで実行したいという考えが生まれてきた。やり取りの活発な顧客からリアルなニーズを引き出し、有効なマーケティング施策の立案につなげることなどが検討されている。

さらには、海外展開も視野に入っている。渡部氏は、「海外展開の際には、国や地域によって、政治・宗教などに重要なキーワードが存在するケースがあります。そのあたりを判断し、まずは現在力を入れている東南アジア市場において、サービス改善のためにSASを使っていきたいと考えています」と話している。

写真 : 日立キャピタルのプロジェクトメンバー
写真 : 日立キャピタルのプロジェクトメンバー

課題

コールセンターに寄せられる膨大な問い合わせ内容を履歴として蓄積してきたものの、そこから人の目で問題点を見つけ出すことは難しかった

ソリューション

膨大な問い合わせ履歴情報の中から現場へのフィードバックが必要なやり取りや、特殊対応が必要なものを瞬時に検出し、顧客サポート品質を向上させた

利点

コールセンターへの問い合わせから、Webの問い合わせ、手紙の文書データ、現場の顧客対応内容など、すべてのテキストデータを検索・分析し、対応が必要な案件を担当者に引き渡すことで、迅速かつ最適なサポートを実現した