Fubon Financial Holdings

業務効率化と大幅なコスト削減を達成し、金融市場で競争力を発揮

Fubon Financial Holdingsは、この1年で、クレジットカード部門においては約2億円のコスト削減に、顧客サービス部門では人件費の14%、商品コストに至っては50%の削減に成功した。同時に、クレジットカードの累積債務危機も回避することができた。これらすべての成果は、SAS Performance ManagementソリューションのSAS Activity-Based Management(SAS ABM)によってもたらされたものだった。

台湾の金融サービス業界は、市場の成熟とともに統廃合の時代を迎えている。業界を超えた合併や再編成が続き、ビジネスの複雑化と競争激化が進んでおり、なかでも銀行業は、業界全体に競合ひしめく成熟市場にあって、より利益率の高い商品を発掘・開発しなければならないという新たな課題に直面している。こうした環境の中で競争力を維持していくには、企業は、取引コストを抑え、各部門の業績を厳しくチェックする一方で、商品の差別化を図り、多くの顧客に魅力的なサービスを提供していかなければならない。2001年、市場構造の複雑さが増す中で、Fubon Insurance、Fubon Securities、Fubon Bank、Fubon Lifeの合併によって誕生したFubon Financialは、台湾の金融市場で最も幅広いサービスを提供する総合金融サービス機関となった。


顧客が求める真のニーズを理解するために顧客行動の分析を行うわけですが、こうした分析の価値は2つあります。1つ目は、顧客のニーズを把握し、対応するために役立つということで、2つ目は、分析結果を参考にして業務プロセスを再構成することによって、コスト削減を図れるということです。

Chung Ming-Ling氏
Fubon Financial Holdingsプランニング担当アシスタント・バイスプレジデント

SASを利用したコスト分担モデルの開発

Fubonは、組織の再編成を行う前提として、各部門の正確な営業コストを早急に把握しなければならないと考えていた。そこでFubonはSAS ABMを導入し、活動管理のワークフローを変更することによって、これまで困難だった全部門のコスト査定を簡単に実行できる体制を整えた。同時に、収益率の高い商品を開発する一方で、サービス品質や業務効率性の向上にも取り組んだ。

およそ300万人のカード利用者を擁するFubon Financialのクレジットカード部門は、SASソリューションをパイロット導入することとなった。この部門は、組織内で最も急速な成長を遂げており、営業費用も最も高額だったので、導入効果を試すには最適の部門だと判断されたのだ。ここで効果が認められれば、他の部門や支店でも同様の効果が期待できるはずである。「SAS ABMは、柔軟性のあるシステムなので、まず1つの部門で単独のROI(投資対効果)を確かめることにしました。」と、プランニング担当アシスタント・バイスプレジデントを務めるChung Ming-Ling氏は語った。

「私たちは、このシステムの拡張性にも大変満足しています。クレジットカード部門で行ったパイロット導入において、より早く効果が得られる方法を学んだので、このエンタープライズ・ソリューションを他の部門へ展開していく際にも順調に成果を上げることができると考えています。」

経費の無駄を特定

パイロット導入の第一段階では、SAS ABMを使い「リスク因子とリターン因子」によって、クレジットカード利用者のセグメント分けを行った。分析結果をもとに顧客を18の分類に分け、それぞれに異なる価格体系とサービスを設定することにより、顧客毎にサービスチャネルを最適化して、営業コストの削減を図ろうというのだ。例えば、ジョイントアカウント(連名口座)は取引コストが高めなので、コストのかかるダイレクトセールスによる管理をやめ、低コストのサービスチャネルに切り替えていった。

次に銀行は、クレジットカード部門が使っている郵送コストが非常に高額であることに注目した。さっそくSAS ABMを使って郵送コストのデータを洗い出して分析し、サービスレベルを維持するのに不可欠な場合のみ郵送という手段を使うこととした。さらに、サービス提供のプロセスを分析することで、特定のケースではそのプロセスを4段階から5段階は省略できるということも明らかになった。このようなコストの見直しや反復プロセスの削減を通して、Fubonが提供するサービスは、以前よりもスムーズかつ効率的に実行されるようになっていった。

SAS ABMは、組織的な業務プロセスをモデル化し、商品・顧客・業務といったセグメント毎に経費や収益性を正確に計算していく。「顧客が求める真のニーズを理解するために顧客行動の分析を行うわけですが、こうした分析の価値は2つあります。1つ目は、顧客のニーズを把握し、対応するために役立つということです」と、Chung Ming-Ling氏は指摘し、「2つ目は、分析結果を参考にして業務プロセスを再構成することによって、コスト削減を図れるということです」と結んだ。

クレジットカード負債による被害を回避

台湾の銀行は、2006年の年末までに Bael II が規定するリスク管理へのコンプライアンス(規制対応)が義務付けられている。Fubon Financial HoldingsはSAS ABMを導入したことによって、リスク管理体制を確立するとともに、クレジットカード部門のデータベースの完全性を維持することができた。当時、台湾では高額のクレジット負債を抱える顧客が急増しており、Fubonは一連の改革によって、こうした被害を回避することができた。

Chung Ming-Ling氏は、「銀行は、リスクを管理する一方で、顧客の生涯価値も考慮していかなくてはなりません」と話す。「高リスクの顧客であっても貢献度が高ければ、除外リストからは外すべきです。私たちは顧客に関するリターンとリスクの両方を考慮しなくてはなりません。ですから、さまざまな次元から情報を見ることが非常に重要なのです。」

業務効率性の向上を目指して

典型的な活動基準原価計算のツールとは異なり、SAS ABMは単一のプラットフォームで、データの一元管理や、ビジネスのモデル化、レポート作成、分析機能といったすべての機能を提供することができる。その結果Fubonは、正確なコスト情報の入手や合理的な価格設定システムの確立、共通の業務目標の設定、リソース配分の効率性向上といった効果を得ることができた。また、Fubonは台湾全土に124の支店を展開しているが、SASソリューションの活用によって、より効率的な人員配置を実現し、コスト削減にも貢献している。

クレジットカード部門におけるSAS ABM導入の成功から、Fubon Financialは、他の支店やビジネスユニットへのスムーズなシステム展開のために必要なステップを学ぶことができた。次のSASフレームワーク導入候補には、コーポレート・バンキング部門が予定されている。

業務改善から戦略的プランニングへ

SAS ABMは、コストやプロセス、収益性に関する洞察を提供することによって、組織全体の収益を最大化し、プロセスの効率化やコスト削減を実現する、戦略的かつ組織的な意思決定を支援していく。SASソリューションは、Fubonの全部門、全ビジネスユニットで、戦略的意思決定をサポートする重要なツールとして、その実績を評価されている。

SAS ABMのユーザーは、プログラミングに関する知識がなくても、自らの手で簡単にデータモデルを構築することができるので、IT部門に頼る必要もなくなった。Fubonが新設した分析専門チームも、システムがもつ優れた柔軟性と操作性のおかげで、増大する仕事量を難なくこなすことができている。この柔軟性と操作性は、ビジネス環境の変化が生じた場合でも、迅速かつ効率的にデータモデルを修正できるという意味でも大きなメリットとなる。

活動基準型管理を導入したFubonでの成功事例は、改革や成長に懸けるFubonの強い意志とSASのソリューションとのシナジー効果がもたらした結果だといえるだろう。

Credit Card Image

課題

成熟した金融市場環境でFubon Financial Holdingsは大々的な組織再編を断行するため、各部門の営業コストを正確に把握しなければならなかった

ソリューション

SAS Activity-Based Managementのモデル化機能を活用し、コストやプロセス、収益性に関する洞察を得ることに成功

利点

リスク因子とリターン因子にもとづいた顧客分類、正確なコスト情報、明確な業務目標の設定によって、124の支店への効率的なリソース配分を行い、システム導入1年目にはクレジットカード部門で約2億円相当のコスト削減に成功