有限責任監査法人トーマツ

監査品質のさらなる高度化へ向け、
「SAS® Fraud Framework」を利用し、
精度の高い分析とプロセスの自動化を実現する

有限責任監査法人トーマツ(以下、トーマツ)は、より高品質な会計監査を行うために「SAS® Fraud Framework」の刷新導入を行った。監査先企業から預かったデータや外部データを取り込み、予測モデリング、テキスト・マイニングなどアナリティクスを活用したリスクの明確化を行い、出てきた結果を「SAS® Visual Analytics」によって可視化することでビジュアルを利用した監査先企業とのディスカッションに活かすといった、データの取り込みから洞察の提供までを1つのツールで実現する仕組みを深化させる基盤を整えた。

SASによってデータ管理が容易になり、クライアントからデータを受け取る頻度を高めることも可能に。経時的に情報を分析して仮説を立て、浮かび上がってきたリスク要因に対し、早期対応を実現できるようになりました。

矢部 誠氏
Deloitte Analytics 日本統括責任者
パートナー

アナリティクスを活用した、高品質な監査サービスの提供へ

トーマツは、日本で初めて全国規模で展開する監査法人として1968年に設立され、現在では、全国約40都市に拠点を構え、約3400社の会計監査業務を担う。公認会計士を中心とするプロフェッショナルたちが、会計監査をはじめ、コンプライアンスやリスク管理などのアドバイザリーを務め、クライアントの企業価値向上を実現するための取り組みを行っている。

監査業務にSAS Fraud Frameworkを採用したのは、2013年。それまでは、業界特化型のソフトウェアや表計算ソフト、データ抽出のための自社開発ツールなどを併用して監査業務を行っていた。当時の業界特化型ソフトウェアは、四則演算が中心。従来の監査では活用されていなかった監査先企業の財務・非財務データを様々な属性情報や外部データと組み合わせて分析・視覚化し、高度かつプロアクティブな監査サービスとして提供する「Audit Analytics」を、本格的に導入していくという狙いからだった。

トーマツ Deloitte Analytics 日本統括責任者 パートナー 矢部 誠氏は、「高品質な監査サービスを提供するためには、会計情報だけでなく、売上や在庫など、さまざまなデータを見ていく必要があります。そのため、数億レコードのデータを高速に処理でき、優れたデータ抽出機能を提供してくれるSASを、アナリティクス基盤の一つとして採用することに決めました」と話す。

「反復的な監査業務はもちろん、経年変化を見る、統計的手法を利用した分析を積極的に活用したい等、利用方法が決まったソフトウェアの活用にとどまらず、必要な分析を自由に設計できるセキュアなデータ管理基盤が必要でした。SASが提供するプラットフォームを導入することで、安全にトーマツ独自の分析手法を開発し、その手法を多くの監査手続に活用する事が可能になりました」(同氏)

データの管理が容易になり、より高度な分析に時間を使えるように

トーマツは、2013年以降「Audit Analytics」の適用対象企業を拡大しつづけている。これら分析の中で、プロフェッショナルの能力とSASの分析は、バランス良く展開されている。プロフェッショナルが設計したアナリティクス手法に従ってSASのツール基盤がリス クを検知・予測し、その背景にある要因をプロフェッショナルが解釈・判断する。監査人としての知識と経験に加え、より精度の高い洞察の獲得のために、SASによる分析を活用している。

「Audit Analytics」を導入した監査チームの主任は、「たとえば、約3カ月の在庫はリスクです、と文章で伝えるより、タブレットの画面を見ていただき、統計的な根拠を示しながら、87日を超えるとリスクになります、とリスクの閾値と根拠を示せば納得感が違います。それだけでなく、個々人が手元のタブレットで“なぜ”の部分についてドリルダウンしながら議論を深めることで、参加型でインタラクティブな報告会が開催できるようになりました」と、2013年以降、毎年「Audit Analytics」を使ったプロジェクトメンバーに実施している社内アンケートの中で感想を記している。

また、データの管理が容易になったことで、クライアントからデータを受け取る頻度を高めたケースもある。決算時期だけでなく、経時的に情報を分析して仮説を立て、浮かび上がってきたリスク要因に対し、早期対応を実現した。

「大量のデータでも、確実な管理をしながらクレンジングも容易にできるため、より高度な分析に時間を割くことができるようになり、監査人は深度の深い仮説が立てやすくなりました。また、リスク要因は、早期にクライアントに確認しておき、どの拠点がリスクなのか、もしくはどの製品ラインに問題があるのかなど、決算を待たずに行動に移すことが可能になりました」(矢部氏)

新たな手法を身に着けることでプロフェッショナルとして成長

「Audit Analytics」の展開が加速するのと比例して、社内でSASを利用できるプロフェッショナルが増えてきた。それを支えているのが、社内で行うSAS研修だ。SASを初めて使うことになる新人でも、採用後に実施される研修とOJTで、半年もすればデータ分析業務に取り組むがことができるようになるという。データ分析を習得する人材は新人に限られておらず、SASに触れるユーザー数も日々増加しているとのこと。

矢部氏は、「SASプログラムになると難易度は高まりますが、これまで蓄積した知見を活用するため、実際にゼロからプログラムを組むことは、ほとんどありません。現在の業務では、「直感的なSASの画面を見ながらロジックを作っておいて、後から修正する程度で済みます。そこにまずたどり着き、より高度なことをやりたいとなれば、各自が自発的にその手法を考え身に着けることで、プロフェッショナルとして成長してくれています」と話す。

これまでの活用方法に固執せず、「高品質な監査を追求するため、機械学習や人工知能などを取り入れ、リスクの閾値を自動で学習させることや、予測モデルとしての決定木学習、What-if分析などもいままで以上に活用し、より高度なデータ分析を積極的に実施していきたい」と、アナリティクスを活用したさらなる品質向上のために研究開発を進めていると、同氏は語る。

矢部氏は、「SASは、業務に使えば使うほど洗練され、トーマツの業務クオリティーが上がっていきます。私たちは、「Audit Analytics」を通して、クライアントの監査体験をも変革していきます」と話してくれた。

※「Audit Analytics」は、従来の監査では活用されていなかった関与先の財務・非財務データを様々な属性情報や外部データと組み合わせて分析・視覚化し、監査人の経験則では捉えられない相関や傾向・推移を識別することで、効率的かつ効果的な監査を実現するデロイトの先進的な手法です。

課題

数億レコードのデータを高速に処理し、必要な分析を自由に設計できるセキュアなアナリティクス基盤が求められた

ソリューション

利点

大量のデータでも確実な管理をしながらクレンジングも容易にできるため、より高度な分析に時間を割けるようになった