Bank 3.0の世界で求められる新たな金融サービスの形

金融デジタル革命で変化する顧客行動を知り、エンゲージするために

SAS Institute Japan株式会社
ソリューションコンサルティング第一本部
Customer Intelligenceグループ マネージャー 羽根 俊宏

急変する“金融サービスと顧客”のあり方

近年Bank3.0、FinTechといった概念の出現とともに、金融サービス事業者と顧客の関係が大きく変貌しています。1990年代、2000年代を通じ、金融サービスのオンライン化と自由化は大きく躍進しましたが、昨今のデジタル革命に至り、顧客はかつてないほど容易に「いつでも」「どこでも」「必要な金融商品」にアクセスできるようになりました。
とりわけ、リテールバンキングの世界においては、顧客接点(チャネル)や決済手段の多様化と同時に、それらを差別化戦略の源泉として市場に参入するプレーヤーも増加しており、顧客は「いつでも」「どこでも」「必要な商品」に加え、「自分にあった金融サービス会社」をも容易に選択・入手できるようになったのです。逆説的に考えると、従来からの金融事業者にとっては競争環境の激化を意味し、いかにして「顧客に選ばれる」かを真剣に考える必要に迫られていると言えます。

Bank3.0の文脈で考えると、かつてリテールバンキングの主体は銀行でした。例えば、顧客は居住地域から最寄りの銀行を選び、支店の営業時間に取引を済ませることを当然のことと受け止めていました。しかし、Bank3.0の世界において、顧客は地理的、時間的制約に縛られることなく、必要な取引を手元のスマートフォンで好きな時間に行うことができます。その上、顧客からの依頼・要求がなくとも、銀行側が顧客のニーズを先読みし、その顧客にあった情報や提案を迅速に提供する“プロアクティブ”なサービスまで求められます。
今後顧客はこのようなサービスを当然と受け入れ、より先進的かつ自分にフィットするサービスを提供してくれる銀行を選ぶようになることでしょう。つまり、銀行と顧客の関係は、今後より一層「顧客が主役」という流れにシフトすると考えられます。

変化を“チャンス”に変えた先進銀行事例

このような流れと少子高齢化という外部環境も相まって、弊社の金融サービス業のお客様からも先進事例に関するお問い合わせが増えています。銀行はもとより、富裕層に傾倒したビジネスモデルからの脱却を図る証券会社などからのご依頼が増えている点も特徴的です。
弊社ではこれまでも国内外の金融機関のお客様に、イベント・ベースド・マーケティング(EBM)を実践するためのコンサルティングサービスや、マーケティング・オートメーションなどのソリューションを提供し、ビジネスゴール達成の支援をして参りました。最近では「顧客一人別」に「最適な提案(オファー)」を「最適なチャネル(対面・非対面横断)」から「最適なタイミング(リアルタイム)」で実現するための、オムニチャネルの提案も強化しています。例えば、弊社がご提供したシステムを全社で活用されている銀行では次のような取り組みが実践されています。

  • ヨーロッパ大手銀行:
    お客様が金融商品を必要とするタイミングをスマートフォン、Webサイト(インターネットバンキング)、ATMといった無人チャネルでも検知し、そのお客様にあったご提案をそのお客様に適したチャネルからリアルタイムで実施。全てのチャネルがそのお客様の状態を「判断」することができるため、最適な金融商品のご案内、対面チャネルへの誘導をスムーズかつ効果的に実施することが可能。その銀行からのオファーは高い成約率を誇る。
  • オーストラリア大手銀行:
    顧客プロファイル、取引履歴、Web動態情報、位置情報等、あらゆるデータを分析し、「個客」のニーズを事前予測。1,000万超の顧客一人一人に対して最適なご提案内容を予測し、ライフタイムイベントや取引後の期間経過イベントなどに応じて自動でご案内を実施。調査結果でも、その銀行からのオファーに関する「NetPromoter Score(NPS)」は非常に高いと言う。

ビッグデータと顧客理解、オムニチャネルをフル活用するプラットフォーム

これらの先進銀行の成功には1つの共通項があります。それは徹底して「顧客を理解」しようとする取り組みです。
前述の通り、Bank3.0は「顧客ニーズの先読み」によって特徴付けられますが、ニーズを先読みしたアクションとは、「適切な顧客に」「適切な提案を」「適切なチャネルから」「適切なタイミングで」提供することに他なりません。そして、それを実現する上で欠かせないのが、顧客と顧客の「コンテクスト」を理解することです。
優秀な営業員が十分にお客様について理解した上で商談に臨むのと同じであり、そのような営業員が、お客様を理解せずに一方的に商品説明をするだけの営業員よりも成績が良いのと共通する話ではないでしょうか。
現実問題として、大手の地銀で数百万、メガバンクに至っては数千万の顧客がその理解の対象となるわけですが、「ビッグデータ」には正にこの理解を助ける材料が眠っています。それらを組み合わせ、アナリティクスの技術を活用することで、基本的な顧客属性や取引傾向だけではなく、顧客一人一人の資金・運用ニーズ、興味・関心、ライフスタイルも予測することが可能となるのです(図1)。

顧客を理解する

また、そこで導いた顧客に関する知見(カスタマー・インサイト)を各種のチャネルシステムと連携することで、コールセンターや営業店といった有人チャネルに対して、顧客とコミュニケーションする上での有益な情報を提供することができるだけでなく、Eメールやスマートフォンからのプッシュ通知、ATMでのお知らせといった無人チャネルからのメッセージもその顧客向けにカスタマイズできるようになるのです。例えば、ある銀行では、顧客がATM操作で困り、操作が滞ると、即座にその顧客の日頃の取引ぶりやチャネル選好を考慮し、適切なチャネル(メール、コールセンターなど)からサポートが入る仕掛けを構築していますが、その顧客の「普段」と「いま」を理解してこそ実現できる仕組みと言えます。
弊社はこのような顧客の理解と、それにもとづき全社の顧客接点をオムニチャネルとしてコントロールするプラットフォーム、Customer Decision Hubをご提供しています(図2)。 

Customer Decision Hubによるリアルタイム・チャネルオーケストレーション

全ての顧客をあらゆる角度から理解し、その顧客への最適なアクション(Next Best Action)を決定するマーケティング最適化機能、Web、ATM、コールセンター、営業店などのチャネルで顧客が接触してきた際にリアルタイムで顧客の状態を判断し、最適なメッセージを届けるリアルタイム機能、そしてイベント・ベースド・マーケティングを効果的に実施するためのマーケティング・オートメーション機能が含まれます。
金融サービス業における様々な技術革新は、競争環境の激化にもつながりましたが、一方でこのようにビッグデータを活用し、他社への競争優位を実現する「攻めのIT活用」ももたらしました。
弊社は国内外の金融機関における豊富なコンサルティング実績と、顧客接点の情報武装化とオムニチャネル化を実現するCustomer Decision HubでBank3.0の世界における顧客対応の高度化を強力に支援しています。

出典:「金融機関.YOM」第20号 (2015年8月刊)掲載記事

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