データガバナンス

概要と組織における現状

執筆: ダニエル・ティーチー(Daniel Teachey)、「Insights」編集者

最初のコンピューターのスイッチを入れた時から今日に至るまで、IT部門をはじめ業務部門/事業部門の意思決定者たちは、このテクノロジーによって利用/生成されるデータの取り扱いについて模索し続けています。今ではもう、パンチカードを整理することはなく、磁気テープでのアーカイブ化も珍しくなりましたが、データに対するガバナンスは現在においても日常的に不可欠なことです。そこから生まれたのが、企業や組織でデータを収集、管理、アーカイブ化する方法に関する包括的なアプローチであるデータガバナンス・フレームワークに対するニーズです。

このホワイトペーパーでは、数百件にも及ぶデータガバナンスの導入事例で培われた実績をもとに、最先端のプログラムの構築基盤として高く評価されているSASのデータガバナンス・フレームワークの概要をご紹介します。このフレームワークでは、人員、プロセスにととまらず、データ管理に使用されるテクノロジーまで、データガバナンスで必要となるあらゆる要素が網羅されています。

データガバナンス・フレームワークの最も重要なポイントは、すでに組織で導入済みの個別の取り組みを、いかにして1つの手法に統合するかという点に集約されます。

さまざまな取り組みの過程において、多くの組織ではすでにデータガバナンス・フレームワークの要素を個別に導入しています。しかし、それらが有機的に連携していなければ、データガバナンスの価値が発揮されることはありません。

データガバナンス・フレームワークの要素

「データガバナンス」という言葉は、幅広い意味を含んでいます。しかし掘り下げてみると、どの定義も戦略と実行が一対になっていることが分かります。

また戦略上の観点からは、データガバナンス・プログラムによって、データの取得、管理、アーカイブ化に関する企業のフィロソフィーを形成することができます。この取り組みはまさに企業文化の変革であり、そのためには業務部門とIT部門が協力して、データ要素とアプリケーションを横断して、企業の資産であるデータを統合的に管理するルールを確立することが求められます。

一方、実行の面では、データガバナンス・フレームワークは個別のテクノロジー、データベース、データモデルにわたり、データ管理におけるほぼすべてのプロセスと関連しています。迅速かつ効果的な意思決定を実現するにあたって、このフレームワークはユーザーによるデータ作成・維持のプロセスや、アプリケーション内でのルールの複製方法にも影響を与えます。

このホワイトペーパーでは、多層的なフレームワークの概要とともに、データガバナンスがどのようにデータ主導型の資産やリソースのさまざまな領域に情報を提供し、影響を及ぼすかについて説明しています。また、組織にはデータガバナンス・フレームワークの基盤がすでに導入されている領域が数多くあり、これらを活用して将来的に大規模なプログラムの構築が可能であることについても言及しています。

本ホワイトペーパーで解説するデータガバナンス・フレームワークを構成する主な要素

  • 組織としての推進要因 – データに対してより効果的な管理とモニタリングが求められる理由。
  • データガバナンス戦略 – データガバナンス・プログラムの新規導入または刷新に伴う目標、原則、グループの設定。
  • 手法 – データガバナンス戦略の影響を受ける人員、プロセス、テクノロジー。
  • データ管理の構造とテクノロジー – アプリケーションまたはデータレベルでのガバナンスの確立と徹底に役立つ基盤となる概念、テクノロジー。

データガバナンス・フレームワークの前時代

我々が現在、データガバナンス・フレームワークと呼んでいる領域の多くの側面に、筆者は20年近くも前から関わってきました。私の専門はITではありませんが、最初のいくつかの仕事ではビジネス・アプリケーションのパワーユーザーでした。ITプロジェクトで業務部門側の窓口を務めた経験もあります。

こうしたプロジェクトでのIT部門とのやりとりを通じて、業務側では単純に見えることが、ITの観点からは途方もなく複雑になりうることを私は学びました。例えば最初の仕事では、製造企業のスペアパーツの発注をeコマース・ポータルで自動化したいと考えていました。ここで最大の障害となったのが、カタログデータです。不完全な表記や部品番号の不統一があちこちに見られたのです。さらに悪いことに、複数のベンダー間で共通の命名法すら確立されていませんでした。これらのデータが原因でシステムが突然停止する事態に見舞われたこともありましたが、その際も他のグループと連携して不具合の修正が行われることはありませんでした。

2003年、私はデータ管理会社に転職し、こうした課題の多くはデータの問題から派生している、と遅ればせながら自覚するようになりました。あるとき、グローバル・メーカーの経営幹部とあるシステム移行プロジェクトについて話す機会がありました。彼女によると、その会社では新システムへの移行が開始される約1年前から、導入ルールについて業務部門とIT部門の合意を図るための準備が進められたとのことでした。

適切な人員を集めて問題を解決し、言葉の意味について共通の認識を確立するための取り組みに、最初から一定の時間をかけると計画していたというのです。当時はその名称こそ使われませんでしたが、彼女のグループが構築していたのは、まさにデータガバナンス・フレームワークそのものでした。データの意味を複数のグループで議論してから、その情報を管理するルールも時間をかけて作成することは、まさにデータガバナンスの本質です。

(ちなみに、その移行は期限内かつ予算内で完了しました。優れたデータガバナンス・フレームワークが奏功した例でもあります)

こうしたアプローチを取っていたのは、このメーカーだけではありません。ほとんどの組織は、さまざまな取り組みの過程ですでにデータガバナンス・フレームワークの要素を導入しています。皆様の会社でも、フレームワークが部分的に導入済みかもしれません。とはいえ、強く求められているのは、それらすべてを結びつけることです。このメーカーでは当初、「データガバナンス」という言葉が社内に浸透していたわけではありませんでしたが、その状況もまもなく変わりました。

データガバナンス・フレームワークのビジネスニーズ

2000年代初頭になると、大企業の破綻が相次ぎ、メディアで大きく取り上げられたため、データに対する企業の見方が変わり始めました。本ホワイトペーパーでは、次のように指摘しています。

エネルギー業界大手のEnronやケーブルテレビ会社のAdelphiaなど大企業の破綻が続いたことを受けて、米連邦政府は企業情報の正確性と信頼性を改善するためのルールを策定することになりました。この取り組みの中で重要な課題となったのがデータガバナンスです。これはSOX法をはじめとする新たな規制が、経営幹部に対して事業で使用するデータへの理解と、その説明責任を個人として負うことを義務付けたためです。

このときまで、データの世界にはこうしたガバナンス確立のための確固たる推進要因が存在していませんでした。たしかに、私が話を聞いたメーカーのような一部の先進的な企業は、データに関して配慮と保守が必要な資産と考えていたことは事実です。しかし、SOX法、Basel III、ドッド・フランク法(ウォール街改革・消費者保護法)などの法律によって、すべての大規模な企業・組織がビジネス慣行のスマート化を求められるようになりました。

今、データガバナンスに関する取り組みは、企業におけるさまざまな推進要因と結びつけることができます。このことはデータガバナンス・フレームワークに2つの利点をもたらします。第1に、どのような取り組みも優先事項として重視する経営幹部やマネージャーから、必要な賛同が得られやすくなります。第2に、より大きな組織目標のプロセスと結びつけてデータガバナンスの価値を実証することで、将来的により充実した資金とサポートが得られるようになります。

導入にあたって

データガバナンス・フレームワークはトップダウン方式で確立される場合があり、その場合は担当する経営幹部の指示のもと、すべての取り組みが一斉に開始されます。それ以外の場合、データガバナンスは、コンプライアンスやメタデータ管理(MDM)に関する取り組みといった既存のビジネス・プロジェクトの一環として段階的に導入されます。ボトムアップ方式のアプローチでは、こうした取り組みを順次統合していき、より一貫した全社規模のデータガバナンス・フレームワークへと発展させることができます。

いずれにしても、データガバナンス・フレームワークの導入は、まったくの白紙状態から始めるわけではありません。通常はデータガバナンスの活動が局所的に進行中であり、新たな取り組みではそれらを活かしながらチームを編成することが可能です。

Data governance framework

データガバナンス・フレームワークの構築の落とし穴

データガバナンス・フレームワークを構築することが決まっても、これは一夜にして完成するものではありません。どのようなフレームワークでも機能させるためには不可欠となる主要な要素があることが、経験によって明らかになっています。データガバナンスがうまく機能しない、あるいは期待どおりの成果を達成できない理由として、以下の例が挙げられます。

  • 中央集中型の一元的な意思決定をサポートする社風ではない。
  • 組織構造がサイロ化しており、業務のさまざまな局面で調整が必要になる。
  • 業務部門/事業部門の経営幹部やマネージャーが、データは「IT部門の問題」と考えている。
  • データガバナンスはアカデミックな世界の話だと考えられている。
  • 業務部門/事業部門とIT部門が連携していない。

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