モノのインターネット(IoT)に関する3業種の導入事例

既に現場で成果を上げているIoT実装プロジェクト

執筆: アリソン・ボーレン(Alison Bolen)、「SAS Insights」編集者

モノのインターネット(IoT)とは、相互接続されたアプライアンスやスマートなランニングシューズの利便性を約束する消費者向けの壮大なファンタジーにすぎないのでしょうか? それとも、ビジネスのほぼ全ての側面についてリアルタイム情報を収集したいと考える企業にとっての大きなビジネスチャンスなのでしょうか?

消費者向けのIoTアプリケーションについては日頃から多くの情報を耳にしますが、現在までのところ、IoT革命におけるアーリーアドプター(早期導入者)の多くは、操業や事業運営に関するデータの収集と分析に関心を持つ企業や政府機関です。機械設備の温度から風力タービン群のパフォーマンスまで、IoTセンサーは既に多くの業種において貴重な情報を提供するようになっています。Blue Hill Research社では最近、IoTの3つの導入事例について詳細な定性的調査を実施し、レポートを発表しました。本稿では、その内容を要約してご紹介します。

レポートの全文はこちら(英語)

官公庁、公益事業、製造業におけるIoTの導入事例

同レポートが取り上げているのは、以下の3つのIoT導入事例です。

  • 米国のある地方自治体では、町内の全ての住宅用および事業用水道メーターを対象に、使用量をスマートメーターでモニタリングするシステムを導入しました。このプロジェクトには、それまで検針と記録を手作業で行ってきた6万6,000台の水道メーターにセンサーを設置する工程も含まれていました。
  • 米国のある石油・ガス会社では、IoTによって油田における原油生産を最適化しています。このIoT活用例では、2万1,000の油井について原油抽出率、温度、油井圧力などを測定するためにセンサーを活用しています。
  • ある国際的なトラックメーカーでは、予知保全用のセンサーをトラックに装着することで、新たな収益源を創出しました。このシステムは、必要に応じて修理を自動的にスケジューリングし、修理に必要なパーツの発注も行います。既に10万台を超えるトラックにこのデバイスが装着され、1台のトラックにつき毎日1万件以上のデータポイントが収集されています。

下の表を見れば分かるように、これら3つの導入事例ではいずれも、IoTによるデータストリームが1日あたり100万件以上のデータポイントを生み出しています。

Streaming data details for our Internet of Things Examples

IoTプロジェクトのROI

これら3つの組織は、生のIoTデータをどのようにしてビジネス・インサイトや具体的なメリットへと変えているのでしょうか?その秘訣は、アナリティクスを活用して、IoTデータの分析に関連する直接費用と機会費用のバランスを見極め、最適化していることです。

水道使用量の検針をスマートメーターに切り替えた米国の地方自治体では、持続的な節約効果が即座に現れました。この事例の場合、データ収集プロセスは、検針担当者が全てのメーターを巡回する人海戦術から、メーターの検針値が自動的に記録されて中央データベースに送信される方式へと進化しました。その結果、労働時間と巡回用機材(車両など)の両面で大幅な資金の節約が実現しています。同町では、このイニシアチブのライフタイム全体で、総節約額は2,800万ドル、(資本投資総額を除外した)純節約額は約1,000万ドルに達すると予測しています。

それ以外にも、サービス指向のプロアクティブ(能動的)な組織へと根本的な変革を実現できたことにより、間接的な節約効果も生まれています。現在の同町では、水道使用量に関する問題を週単位や月単位ではなく、数時間以内に特定できます。より高い頻度でより正確なデータが得られるため、家庭や事業所にプロアクティブに働きかけ、水の使いすぎや想定外の料金といった事態の発生を減せるようになっているのです。料金請求や事業管理を担当する部門も、内部向けのレポート作成を重視する組織から、需要家対応における情報を一元管理する「ハブ」へと変わり、需要家体験の飛躍的な改善に貢献しています。

石油・ガス会社でも同様に、日次あるいは週次で終業時に油井のパフォーマンスをモニタリングできるようになっており、これが改善機会(生産性の向上など)の洗い出しや、潜在的な懸念がある領域の早期特定につながっています。さらに同社では、こうした情報を取りまとめた上で、調整や修理を行う現場の担当者に提供することも可能になっており、その結果、ダウンタイム削減と生産性向上が実現しています。同社の推定によると、1本の油井が操業を停止すると、1時間毎に500ドルの損失が生じます。センサー導入当初の効果を分析した同社では、油井の修理が迅速化する結果として、1本の油田につき毎月約14万5,000ドルの節約が実現すると推定しています。

国際的なトラックメーカーの事例は、センサーデータの成熟した活用例といえます。このシステムでは、トラックに装着したセンサーのデータを予測モデルと組み合わせ、機械的故障が発生すると思われる時期を検知します。故障の可能性を検知すると、システムはそのトラックの運行経路と配送予定の両方を加味した最適化の結果にもとづき、整備予約をスケジューリングします。さらに、このシステムは適切なパーツの発注と、指定した整備拠点への出荷を手配した上で、修理内容の詳細を整備士に通知します。以上の結果、単にセンサーと業務システムが網の目のように相互接続されるだけでなく、アナリティクスを駆使した情報交換を通して事業運営全体で時間とコストの節約を追求できる体制が実現しています。

これらの事例はいずれも、IoTと産業グレードのアナリティクスを組み合わせることにより、顕著かつ持続的な形でビジネスを強化することに成功しています。IoTイニシアチブから持続的なビジネス価値を引き出すためのカギとなるのは、結局のところ、ビジネス・アナリティクスを的確に実践できるかどうかなのです。

man-in-oil-field-on-computer

次にお読みいただきたい資料

Back to Top