IoTデータの価値を高めるエッジ・コンピューティングの最前線
鉄道運行支援など最新の取り組みご紹介

IoTや機械学習といった最先端のテクノロジーに可能性を見いだしながらも、自社のビジネスにおける活用に頭を悩ましている企業は少なくないはずだ。今回の『IoT World Conference』では、昨今特に注目が高いエッジ・コンピューティングの最新の知見を披露する予定だ。米国で鉄道事業を展開するGEトランスポーテーションが実践する取り組みを例に、IoTデータの価値を高めるエッジ・コンピューティングの活用モデルをご紹介する。

IoTデータのリアルタイム解析による鉄道運行、車両整備の最適化

米国ゼネラルエレクトリック社の子会社として、鉄道車両をはじめとする輸送システムの製造を手がけるGEトランスポーテーション。同社は近年、設備の提供だけでなく、最先端のデータアナリティクスによる列車の運行、また車両整備の最適化にも注力している。米国大陸を走る鉄道車両は日本のそれとは比較できない。最長のものは約7キロメートルという非常に長い車列を組むことになる。この為、地形に応じた運転の調整がきめ細かく必要で、効果的な運転を行わないと、エネルギー効率が悪い運行となり、経営の足かせとなる。「Brain on the Train」を合言葉にカスタマーサービスの改善を推進する同社の取り組みは、多くの企業にとってエッジ・コンピューティングの活用を考える上でのわかりやすいモデルケースとなるはずだ。
このプロジェクトでは、同社が運行を管理するおよそ1,400両の車両に2,000点以上のIoTセンサーを取り付け、それから集約される膨大な運行・稼働データをリアルタイムで解析。これにより刻々と変化する地形や天候状況に応じて、加速減速、ブレーキの長さ、強さと言った運行方法の指示や、運転実績を加味した装置の消耗具合に応じたメンテナンスの指示を行っている。
EdgeLINC(エッジリンク)」と名付けられたこの一連のサービスを可能にしているのが、SASのエッジ・コンピューティング・ソリューションだ。なかでもSAS Event Stream Processing(ESP)はEdgeLINCの中核的な役割を担うソフトウエアで、無数に設置されたIoTセンサーなどのエッジデバイスから生成されるビッグデータをリアルタイムで分析することで、最適な判断や指示が可能になっている。
SASが提供するエッジ・コンピューティングでは、たとえば製造業であれば製造ラインの各所に配置したセンサーからデータを収集して機械学習を実行し、この分析結果に応じて設備装置の運転に最適なパラメータの選択、指示に繋げることが出来る。GEトランスポーテーションは、この仕組みを鉄道車両や施設に応用しているが、データから知見を得て、判断の基準とし運用につなげるプロセス自体は、他のさまざまなビジネス分野にも応用が可能で、アイディア次第で大きな変革に繋がると考えている。

EdgeLINC システム構成図

車両から得たデータをリアルタイム分析し、結果に応じて最適な処理や対応が即時実行される

アナリティクスの全領域を一気通貫で結ぶプラットフォーム

我々は現在、エッジ・コンピューティングの可能性をさらに拡げるべく、ネットワーク機器の世界的なリーディングカンパニーであるCisco Systems, Inc.と共同で、「Cisco SAS Edge-to-Enterprise IoT Analytics Platform」を提供している。これはシスコが提供するゲートウェイの中にSASのソフトウエアを搭載し、収集したデータをもとにした機械学習によって業務の最適化を実現するための仕組みだ。
たとえば、発電所のタービンやメーカーの製造ロボット、小売業の顧客動向など、さまざまな「データの発生源」から送られてくるデータを、センサーのすぐ近くにある「エッジ・コンピューティング」で瞬時に分析。その結果によって継続的に業務を改善しながら、プロセスの高度化につなげていくことができる。
また、Cisco SAS Edge-to-Enterprise IoT Analytics Platformでは、エッジ領域を通過してクラウドやデータセンターに蓄積したビッグデータに対して、大局観を持った分析を実現するためのビッグデータ・アナリティクスを実現するためのアーキテクチャも完備している。エッジ・コンピューティングとして対処するストリーミングデータの領域とビッグデータの領域に対する両面のアナリティクスアプローチを実現する。

sas edge computing diagram

Cisco SAS Edge-to-Enterprise IoT Analytics Platformは、エッジ・コンピューティングとビッグデータ分析を実現する為の構成で出来ている。

このプラットフォームの中核となっているのもやはりESPだが、より多くの分野やデバイスでエッジ・アナリティクスを利用できるよう、ESPの実行環境をさまざまな側面から拡張する取り組みを行っている。
そして、Yocto ProjectやUbuntuといったオープンソースソフトウェアのサポートも進める中、さまざまな主要データベースやSNSなどのサービス、標準プロトコルに対応する各種アダプタやコネクタの提供もしている。さらに今後はARMチップのサポートも予定しているが、これが実現すればモバイルを含む多種多様なIoTゲートウェイでご利用いただける仕組みだ。
SASでは蓄積したデータによるビックデータ分析とIoTデータのリアルタイム分析を組み合わせることで、ストリーミングデータをフル活用できる仕組みを提唱している。これは「IoTアナリティクス・ライフサイクル」と呼ばれ、こうした全方位のデータ分析・活用を提供できる点は、データアナリティクスの分野をリードし続けるSASならではだと言える。

拡大するエッジ・コンピューティングの領域と可能性

今後、幅広い領域での活用が期待されるエッジ・コンピューティングについて、ここでは鉄道や製造業を例に紹介してきたが、ESPおよびCisco SAS Edge-to-Enterprise IoT Analytics Platformは、それ以外のさまざまな分野・業務領域における大きな活用の可能性を秘めていると考えている。
具体的なユースケースとしては、たとえば海外の電力会社において、スマートグリッドにおける設備保全の現場で、リアルタイムな異常の検知、またホテルにおけるお客様へのエンゲージメント強化、カスタマーエクスペリエンスの向上のためのリアルタイム・オファリングの実現、と言ったユースケースが出来ている。
これだけを見ても、エッジ・コンピューティング=IoTによるリアルタイムのデータ解析は、さまざまな業種におけるビジネスのプロセスに大きな変革をもたらし、デジタル・トランスフォーメーションを実現する重要なテクノロジーであることがわかるだろう。
この『IoT World Conference』では、海外の最新事例に加え、国内での今後の展開などについても詳しくお伝えする。IoTや機械学習などのデータアナリティクスによる業務改革をお考えの方は、ぜひご聴講頂きたい。

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