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財団法人 流通経済研究所

多様なデータ分析ニーズに対応できるデータ基盤にSASを採用
先進の店舗分析を迅速に展開できる体制を整備

財団法人流通経済研究所(以下、流通経済研究所)が運営するディマンド・チェーン開発共同研究機構(以下、DCD)は、店頭起点で製配販の効果的なマーケティング手法を開発する組織として企業や官公庁から注目を集めている。主な活動は、流通やマーケティングに関連する知見を得るために消費者や小売店頭を対象とした調査実験を行う「DCD共同研究」と、POSなどのデータを収集・蓄積し、会員企業にデータ分析基盤を提供する「データ分析サービス」である。近年、小売チェーンによるPOSデータの開示傾向の強まりを受け、メーカーの分析ニーズは多様化している。ところが、従来のデータ基盤では複雑化の一途をたどる分析ニーズに対応できなくなっていた。そこで、流通経済研究所はSASシステムを導入。2008年12月よりSASを中核に据えた新データ分析システムを稼働させ、多様なデータ分析ニーズに対応できるようになったことはもちろん、システム運用コストを大幅に削減するなど、大きな成果を収めている。


多様化するデータ分析ニーズへの対応が急務に

経済産業省が所轄する流通・マーケティング専門シンクタンクの流通経済研究所は、1966年10月に設立された公益研究機関である。流通・小売業の会員企業の協力のもと、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどの業態を対象に実証的な調査・実験・分析を行う店頭研究事業や、流通を取り巻く環境変化などを調査する共同研究会事業、企業および官公庁から請け負う受託/共同調査・コンサルティング事業など、幅広い活動を展開している。

店頭研究事業において中心的な役割を担うのはDCDである。主な活動は、実験店における実証実験を通じて流通やマーケティングの課題解決に向けた知見を提供する「DCD共同研究」と、POSデータや店頭コーザルデータ(店内における商品の陳列位置、価格変化、チラシや販促スペースを用いた販売の有無など、売上や来店客数に影響を与える要因情報)、消費者パネルデータなど、収集・蓄積・分析可能なデータを会員に提供し共同利用する「データ分析サービス」から構成される。

主任研究員 加藤 弘之氏は、「近年、小売チェーンでは、自社が蓄積するPOSデータを開示する傾向が強まり、小売業とメーカーの協業が活発になりつつあります。これに伴い、メーカーが最適な売場づくりを小売チェーンに提案するための受託/共同研究が増え、データ分析のニーズは多様化してきました。ところが、従来のデータ基盤は柔軟性や拡張性が低く、複雑化の一途をたどる分析ニーズに対応することが難しかったのです」と語る。

また、どの商品が、どの店舗で、いつ、どれだけ売れたかを示すPOSデータに顧客IDをひも付けたFSPデータが分析対象データとして加わったことで、データベースに蓄積するデータ量が大幅に増加。これに伴い、分析処理のパフォーマンスが低下してしまう問題も顕在化した。


扱いやすいSAS言語で分析メニューを整備

2006年2月、流通経済研究所は、多様化する分析ニーズに対して柔軟に対応できることはもちろん、データベースの整理・統合、データ分析パフォーマンスの向上、マスタデータ管理の合理化を目指すシステム開発プロジェクトに着手した。

システム選定にあたっては、システム運用コストを削減できることを重要な要件とした。従来のデータ基盤では、コマンド体系が未整備で研究所内部では扱いが難しいS言語でプログラミングされていたため、新たな分析メニューを実装するために外注のシステム開発業者に発注しなければならず、この部分のコストを抑えることも目的だった。

主任研究員 寺本 高氏は、「さまざまな要件との適合性などを考慮して複数のパッケージを評価したものの、SAS Enterprise BI ServerとSAS Data Integration Server、SAS Enterprise Guide®以外、選択肢はありませんでした。所員の半数はSAS言語に習熟しているため、特段の抵抗や弊害もなく、スムーズに定着させることが可能と判断できたことも選定理由の1つです」と話す。

2007年10月に開始した開発作業では、まずデータベースに格納するPOSやFSPなどの実績データ、商品や顧客、店舗などのマスタデータの整理・統合を実施した。次にデータ形式を統一し、マスタデータの更新や履歴管理におけるルールを明確化。さらにS言語で記述されていた分析メニューの中でも使用頻度の高い売上ABC分析、購買者属性分析、売上トレンド分析などの分析メニューをSASプログラミング言語に書き換え、会員の多様なニーズに応える新たな分析メニューをシステムに反映させた。SASのデータ管理機能によりデータ項目や分析手順を定義することで、POSやFSPをはじめとする実績データと、商品や顧客、店舗などのマスタデータをクロス分析するなど、多様な利用シーンに応じた分析メニューを柔軟に実行できる仕様も整えた。加えて、直感的に扱える使いやすいユーザー・インターフェイスを作り込むなど、約1年2カ月の開発期間を経て、2008年12月、新データ分析システムは本稼働を果たした。


システム運用コストを大幅に削減

流通経済研究所は、新データ分析システム上で扱える基本分析メニューとして、販売実績に関連する売上ABC分析、売上トレンド分析、購買者属性分析や、ブランドに関連する売価分析、試用率・反復率分析、購買スイッチ分析、および関連購買分析などを実装。基本分析メニューに加え、DCD共同研究において開発したより高度な分析手法を迅速に新データ基盤に反映できるようになった。加藤氏は、「SAS言語に習熟した所内の研究者により、開発した分析手法を迅速にメニュー化し、システムに反映できるようになりました。結果、外注費を含めたシステム運用コストを大幅に削減できたことはSAS導入の狙いと一致した大きな成果です」と語る。

また、DCDの会員約40社は、Webブラウザから新データ分析システムにアクセスし、さまざまな分析メニューを活用することで売場の需要開発と生産性向上に役立てている。会員社はインターネット経由でPOSデータをはじめとする分析対象データをデータベースにアップロードできるようになり、これまで手作業で行ってきたデータ入力負担は大きく軽減。データ管理機能によって、小売チェーンから収集したPOSデータなどを統一したデータ形式で格納できるようになり、分析プロセスが大幅に効率化した。

寺本氏は、「定期レポートを必要とする会員に週次・月次でレポートを添付した電子メールを自動送信したり、Webブラウザからダウンロードいただける仕様にしています。変化の激しい市場動向に合わせたタイムリーな製品戦略やマーケティング戦略を展開できるようになったという声が大きく、会員の評判は上々です」と話す。

流通経済研究所は今後、データベースに格納しているデータの整理・統合や、分析手順のテンプレート化などを推進し、より一層の分析パフォーマンス向上を目指す。また、SAS Enterprise BI Serverの高度な分析プロシージャを利用し、顧客のライフステージやライフスタイルと購買行動との関連を探る分析手順をメニュー化する計画である。

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上段左から、研究員 中川 宏道氏 / 研究員 野際 大介氏 / 主任研究員 鶴見 裕之氏 / 研究員 矢野 尚幸 氏
下段左から、主任研究員 山崎 泰弘氏 / 主任研究員 寺本 高氏 / 主任研究員 加藤 弘之氏(役職:2010年取材当時)

財団法人 流通経済研究所

課題:
会員企業と共有する従来のデータ基盤では、多様化するデータ分析ニーズに対応できない上、分析対象データの増加に伴ってパフォーマンスが低下する問題が顕在化
ソリューション:
多様化する分析ニーズに対応し、分析プロセスを最適化
利点:
開発した分析手法を迅速にメニュー化し、システム運用コストを大幅に削減
製品:

SAS Enterprise BI Server
SAS Data Integration Server
SAS Enterprise Guide

多様なデータ分析ニーズに対応できるデータ基盤の中核にSASを採用しました。結果、分析プロセスを最適化し、SIベンダーへの外注費を含めたシステム運用コストを大幅に削減しました

加藤 弘之氏

主任研究員