モノのインターネット(IoT)

モノのインターネット(Internet of Things: IoT)とは、産業機械から消費材まで私たちの日常を構成している「モノ」が相互接続するネットワークであり、いま急速に拡大しています。IoTにつながれた「モノ」たちは、人間が仕事、睡眠、エクササイズなど他の活動を行っている間も、情報を共有したりタスクを完了させたりすることができます。

まもなく、自動車、住宅、家電製品、さらには都市部の道路のすべてが接続され、さまざまな「モノ」のネットワークが形成されます。これこそがモノのインターネットです。

データストリームを絶え間なく生成し続ける何百万ものセンサーとデバイス。そのすべてから構成されるIoTには、私たちの生活やビジネスをさまざなま方法で改善するために利用できる可能性があります。しかし、その仕組みはどうなっているのでしょうか?また、このネットワークには何が必要なのでしょうか?

モノのインターネットは、以下の3つの要素で構成されます。

  1. モノ(または設備資産)そのもの
  2. それらを相互接続する通信ネットワーク
  3. モノが送受信するデータを利用するためのコンピューティング・システム

モノまたは設備資産はこのインフラを利用して互いに通信を行い、場合によっては、ネットワークを流れるデータの分析結果を踏まえて自分自身(モノ自体)の活動を最適化します。

芝生用のスプリンクラーが、天気予報、気象センサー、現在の水道料金にもとづいて、撒く水の量を最適化する様子を想像してみてください。あるいは公共の場所に置かれたごみ箱が、必要に応じてごみを圧縮し、中がいっぱいになったら市の職員に通知できるとしたら…。

昨今の自動駐車システムも驚くべき水準ですが、クルマが完全に自動運転するようになったらどうでしょう?タクシーのように街中を効率よく走り、乗り合わせた数人が相乗り料金を精算できるようにしたり、トラックのように重い商品を遠方へ安全かつ迅速に輸送し、交通渋滞を避けながら、部品交換の必要性を最適化したりすることができたら…。

ホームセキュリティのシステムでは既に、玄関の施錠やサーモスタットを遠隔制御できます。しかし、これがさらにプロアクティブ(能動的)に動作したらどうでしょう?あなたが自宅に近づいたことを察知し、あなたの好みやその日の気象条件に応じて、あなたの代わりに室内を冷やしたり、窓を開けたりしてくれるとしたら…。


センサーのおかげで、強力な知識へと変換できる詳細データが、かつてない形で利用できるようになっています。とはいえ、統合ビジネス・アナリティクス・プラットフォームがなければ、センサーのデータは情報処理の負担とノイズの増大しかもたらしません。

企業におけるセンサーデータの活用事例を見る


IoTに関する10の事実と予測

いかに多くのモノがインターネットと結び付けられており、また、経済効果がいかに大きいかを知れば、おそらく誰もが驚かれることでしょう。次に挙げるのは、そうした興味深い情報のごく一部です。

  • IoTが各業種にもたらす総合的な経済価値は、2020年には世界中で1兆9千億ドルに達します(Gartner社の試算)
  • 2020年までに500億台のデバイスがインターネットに接続されます(Cisco社の予測)。
  • 遠隔患者モニタリングの市場は、2007年から2011年の間に2倍に拡大しており、2016年にはさらにその2倍になると予想されています。
  • 公営事業のスマートグリッドへの転換により、2013年に25億ドル規模だった顧客情報システム市場は、2020年には約2倍の55億ドルに達する見込みです(Navigant Research社の調査研究)
  • 自動車業界にIoTテクノロジーが広く展開されると、事故の減少によって年間1千億ドルの節約が可能になります(McKinsey社の試算)
  • 産業インターネットによって世界のGDPは10兆~15兆ドル増える可能性があり、これは米国の経済規模が2倍に成長するのに相当します。(GE社の見解)。
  • 世界的なビジネスリーダーの75%が、IoTが生み出す経済的な機会を探求しています(「The Economist」のレポート)。
  • 英国政府は先ごろ、IoTテクノロジーのために4,500万ポンド(7,626万ドル)の調査資金を承認しました。
  • 今後20年間で、各都市がIoT向けインフラの更新のために投じる資金総額は41兆ドルに達する見込みです(Intel社の見解)。
  • IoT活動に関わる開発者の数は、2014年末までに世界中で170万人に達する見込みです(ABI Research社の見積)。

モノのインターネットに関する先進的な考え方

Duke Energy社のスマートグリッド・テクノロジーおよびオペレーションズ担当ディレクターであるジェイソン・ハンドリー(Jason Handley)氏が、あらゆるものが接続され、エネルギーが効率よく生産/消費され、高度なアナリティクスを活用して得られた知識によって全てが適切に制御される世界への展望を語ります。

モノのインターネットのメリットを享受する方法は?

デバイスやセンサーがネットワークでつながり、互いに通信し合えることに、どんな意味があるのでしょう?モノのインターネットは、あなたの日常生活にどのように影響してくるのでしょうか?最も明白なのは、GPSシステム、警報システム、サーモスタットなどでしょう。これらはすべてデータストリームを絶え間なく送受信しながら、クルマや住宅の挙動をモニタリングおよび自動制御します。それほど明白でないものとしては、床、コップ、服をはじめとする日用品類も、ネットワークに接続してデータを流し、インターネットからデータを受け取るようになる可能性があります。

企業は既に、市場の形成、前向きな変化の啓発、既存のサービスの改善といった、ストリーミング・データがもたらす新たな機会を積極的に探求しはじめています。こうした革命を最前線で推進している業界の事例をいくつか見てみましょう。

  • インテリジェントな輸送ソリューションは、交通の流れの改善、燃料消費の削減、車両修理スケジュールの優先順位付けを行っています。
  • 配電用のスマートグリッドは、再生可能資源の活用の効率化、システムの信頼性の改善、より高い粒度での使用量測定と料金算出を可能にしています。
  • 遠隔医療モニタリングは医療サービスの利便性を高め、より高品質で行き届いた医療を実現しながら、コストの削減にも寄与しています。
  • 住宅や空港、あるいは靴やドアでさえも、使われない状態が一定の時間を超えた場合や、不適切な時間帯に使われた場合にセンサーから信号を発信することによって、セキュリティの改善に貢献しています。
  • 産業機械に取り付けられたモニタリングセンサーは、未解決の保守整備案件や差し迫った部品切れを診断・予測するために使われているほか、修理要件と地域別ニーズへの対応を最適化するために保守要員の作業日程を調整するためにも利用されています。

What is the internet of things
こうした相互接続されたデバイスは既に、大衆市場へと進出し始めています。あなたは準備ができているでしょうか?

準備ができていようといまいと、データは押し寄せます

こうした相互接続デバイスは既に、ビジネスや産業の枠にとどまらず、大衆市場へと進出し始めています。今後は、日常的な家電製品や都市のインフラにおいて、ますます多くのコンパクトな接続センサーとアクチュエータ(駆動装置)を目にすることになるでしょう。例えば、あなたが帰宅途中にコンビニエンス・ストアの前を通ったときに、「牛乳が少なくなっているから買って帰って」と冷蔵庫が知らせてくれるとしたら、夕食時に初めてそれに気づく、ということはなくなります。

もしあなたがその店のメンバーカードを持っていれば、牛乳のパックを棚から取り出し、そのまま(レジ清算なしで)持ち帰ることも可能になるかもしれません。センサーが棚から取り出されたものを特定し、あなたがその商品を持って店を出たことが確定したとき、自動的にあなたのアカウントに料金を課すという仕組みです。

これらのデバイスによって生成され、ネットワークやシステムに送り込まれるデータは、実に膨大な量に達することでしょう。しかも今この瞬間も既に、毎秒数十億の情報イベントが生成され、どこかで処理・分析され、デバイス間および人々の間で共有され、何かしらの生活改善に役立っているのです。

デバイスの準備はできていて、ネットワークの基盤もあります。大量のデータも既に流れています。あなたの準備はどうでしょう?

Thomas Davenport
IoTを効果的に活用するには、AoT(Analytics of Things)が必要です。つまり、データ管理/統合に新しいアプローチが必要であり、ストリーミング・データを絶え間なく分析し続けるための新しい手法も必要です。SASがこの重要な領域に注力していることをうれしく思います。

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トーマス・H・ダベンポート(Thomas H. Davenport)
バブソン大学特別教授
International Institute for Analyticsの共同設立者 兼 リサーチ担当ディレクター
『Competing on Analytics 』(邦訳『分析力を武器とする企業』、日経BP社)、および『Big Data @ Work』(邦訳『データ・アナリティクス3.0 ビッグデータ超先進企業の挑戦』、日経BP社)の著者

モノのインターネットは、あなたの業種にどのようなメリットをもたらすのでしょうか?

製造や通信の業界で働いている方は、モノのインターネットがもたらす影響を既に実感していることでしょう。IoTが消費者の利便性を高めるだけのテクノロジーでないことは明らかです。IoTは、生産性と成功の新たな活力源となりうる新しいデータソースと事業運営モデルをもたらます。

ますます多くのデバイス、マシン、産業設備資産がインターネットに接続されるようになると、ビジネスを相互接続するエコシステムによって、仕事のやり方や意思決定の方法が変わることになるでしょう。既に膨大な量のデータが生成され続ける状況になっており、ストリーミング・データから有意義な情報を引き出せる企業は非常に大きな可能性を手にしています。

現代の石油・ガス掘削プラットフォームで生成されるデータは1日あたり8テラバイトに達することをご存知だったでしょうか?最新鋭の航空機では1時間あたり40テラバイトのデータ、最先端の自動車では毎秒1ギガバイトのデータが生成されます。しかも、モノのインターネットはまだ始まったばかりです!

IoTが生み出すデータは、データウェアハウスに保管し、後で分析できるように取っておくようなデータではありません。ストリーミング・データから利益を上げるためには、組織に流れ込んできた時点で分析する必要があります。それが出来ないかぎり、分析結果にもとづいて揺るぎない意思決定を行うことも、マシン間(M2M)通信向けに他のストリームと統合することも、制御室から状況認識をモニタリングして異常を警戒することもできません。ストリーミング・アナリティクスを適用することで、今まさに何が起ころうとしているのかを理解し、障害やセキュリティ・リスクを発生前に予測して、多額の資金を節約することが可能になるのです。

例えば産業機械に関して言えば、今や稼動率から、挙動、部品のパフォーマンスまで、あらゆることを理解できるようになっています。何が起きているのか、要件どおりに機能していないものは何か、サービスや保守をどうすれば改善できるかも把握できます。しかも、データが瞬時にフィードバックされるため、こうした側面の全てが以前よりも明確に分かるようになるのです。

The Interent of Things infographic
モノのインターネットのインフォグラフィックス。クリックすると拡大表示されます。

どうすればIoTのストリーミング・データを分析できるのか?

IoTにまつわる議論の中では、当初から、大量に流れ出るソースデータを豊かで有用な知識へと変換するためには、アナリティクス・テクノロジーが非常に重要であることが認識されていました。

しかし、センサーやデバイスから途切れることなく流れるデータをどのように分析すればよいのでしょうか?またそのプロセスは、いま一般的に使われている他のアナリティクス手法と何が違うのでしょうか?

従来の分析では、データはまず保管され、それから分析されます。一方、ストリーミング・データの場合は、まずモデルとアルゴリズムが保管され、データはそこを通り抜けながら分析されることになります。このような分析手法なら、データが生成されるのと同時に、興味深いパターンをリアルタイムで特定・検証することも可能になります。

つまり、データはクラウドやハイパフォーマンス・レポジトリなどに保存される前に、自動的に処理されるのです。そして、あなたがアナリティクスを用いてデータを読み解く間も、デバイスはデータの送受信をずっと続けています。

高度なアナリティクス技法の登場により、データストリーム・アナリティクスでは、現状をモニタリングするだけでなく、将来の成り行きを予見するために重要な変数を評価したり、複雑な疑問の答えを探ったりすることもできるようになっています。

データストリームから将来を予見するためには、ストリームが発生したその瞬間にパターンを特定できるようなハイパフォーマンスなテクノロジーが必要です。パターンを認識したら、データストリームに埋め込まれた指標にもとづき、相互接続されたシステム間で自動的な調整を行わせたり、担当者の即座の行動と的確な意思決定を促すためにアラートを生成させたりすることができます。

重要な点は、単なる状況や閾値のモニタリングを超えた高度なレベルで、将来の事象を評価したり、無数のwhat-ifシナリオを比較検討したりすることが可能なるということです。


モノのインターネット(IoT)に関するテクノロジー

今現在も、増え続けるデータ量のあまりの大きさと、それらを保管・分析する必要性に押し潰されそうになっているのが、多くの企業・組織の実情です。モノのインターネットはその難題をさらに悪化させるだけではないのか、という不安を覚えるのも当然です。

しかし幸い、さまざまな市場原理の相乗効果により、IoTデータを分析することは既に無理難題ではなくっています。コンピューティング性能の向上、クラウド・テクノロジーの普及、ハイパフォーマンス・コンピューティングの発展といったテクノロジーの最新動向は、モノのインターネットをビジネスに本格活用するための外堀が埋まっていることを示しています。つまり、適切なインフラを整備すれば、今すぐにでも開始できます。業種に応じて、以下のテクノロジーがそれぞれ一定の役割を果たすことになります。

モノのインターネットの影響は私たち全員に及ぶことになるでしょう。上に示したのは、世界全体が相互接続されるメリットを現実のものとするテクノロジーのごく一部にすぎません。これは未来の話ではありません。今この瞬間も世界中で実際に行われていることです。つまり、ネットワークを流れるストリーミング・データを分析することは、企業が新たな知識体系を築くために今すぐ実行できる取り組みなのです。

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