ソーシャルメディア、オープンデータ、政府の将来

執筆:チャールズ・リードビーター Demos-社アソシエイト兼著述家

はじめに

市民と政府との間のやり取りはオンライン化しつつあります。 この移行が進むにつれて、市民の物の見方と嗜好に関する新たな情報が豊富に利用できるようになるでしょう。 私たちがソーシャル Web を利用する際に残るデータ証跡は、計り知れないほど大量のデータを生成しています。 そこには、経済や社会に革新をもたらす新たな情報源としての可能性がある反面、プライバシーや情報の所有権に関する新たな懸念も生じています。

企業が捕捉する情報の量と詳細さの増大、マルチメディアやソーシャルメディアの普及、インターネットのモバイルデバイスへの拡大といった動向に加え、オーブンからペースメーカーまであらゆる電子機器にネットワーク対応のセンサーが組み込まれる可能性も考慮すれば、データの爆発的な成長は今後も続くと考えられます。 こうした「ビッグデータ」ソースが出現し、極めて小さなトランザクション、コメント、接続が大量に発生している状況は、政府にとって豊かな情報の鉱脈を生み出す可能性があります。

よりインテリジェントな政府というビッグデータの恩恵が期待どおりに実現されるのは、市民、起業家、活動者がそれぞれの目的に自由に利用できるような形でデータを公開する方法を、政府が理解している場合に限られます。

他方では、ソーシャルメディアによって、「市民ロングテール」が出現する条件が整いつつあります。 そこでは、小規模な会話、キャンペーン、利益団体などが大量かつ緩やかに結びついており、場合によっては大同団結して大衆運動化する可能性も秘められています。 今後は世界中の政府が、こうした市民ロングテールと対峙および協力する必要に迫られることになるでしょう。

政府の将来は、次の 2 つの動向のせめぎ合いによって形作られることになると思われます。

  1. 政府がこの流れに乗って効率性、有効性、そしておそらくは接続性を向上させるために、どのようなビッグデータを対象に、どのような方法でデータマイニングやデータ分析を行うことができるのか
  2. 市民ロングテールの発展と、より積極的な市民としての活動を目指す動き

頼みの綱となる Web

これは称賛に値することですが、先進諸国の政治指導者たちは、市民から乖離して疲弊した政治システムや、煩雑で効率の悪い行政サービスシステムの再生に、ソーシャルメディアと Web が果たしうる可能性に早くから注目してきました。

米国連邦政府は、行政データを公開する Data.gov など、期待が持てる一連の構想を立ち上げています。 英国政府も、それに次いで充実した政策を進めており、例えば、信頼性と使いやすさを兼ね備えた方法で行政データを公開および利用できるようにするために、公共データ法人(Public Data Corporation)を設置しています。 また、地域社会が警察の活動を把握できるように支援する、全国犯罪地図などの重要プロジェクトも動き出しています。

世界各地でも同様の試みが行われています。例えばイタリアでは、公共サービスや行政機関の有効性と説明責任を強化する上で、オープンで誰もが参加でき、共同作業がしやすい Web の可能性を、政府が先頭に立って追求しています。

各国政府は、ソーシャルメディアの普及を脅威と捉えるのではなく、生成される大量のデータを通じて市民の絶えず変化するセンチメント(感情評判)、興味、需要を理解する手段としてソーシャルメディアが役立つと考えているようです。 仮に、政府がこうしたデータを素早く巧みに分析して意味を理解できるようになったとすると、新たに生じたニーズへの対応や将来の予測もうまく行えるようになるはずです。 政府はよりインテリジェントになり、リソースをより有効に活用し、個人別に最適化したサービスや地域密着の施策を容易に提供できるようになるでしょう。

約束された未来のように聞こえます。しかし、こうした可能性を追求するのは簡単ではなく、保守的で、自己防衛意識が働きがちな官僚組織の場合はなおさらです。 イノベーションを実現するための新たなスキル、展望、方法を導入することに加えて、外部の組織と良好な関係を築くことが必須となるでしょう。 ここでいう外部の組織とは、一過性の強いソーシャルメディアの世界と政府の官僚的な世界との橋渡しができる、民間企業や市民の Web 起業家などです。

ソーシャル Web で利用可能なツールとデータを政府が有効に活用できるようになれば、行政の説明責任、連携性、革新性、有効性は向上すると思われます。 それと同様に重要なのは、地域社会と市民の側でも能力、適応力、弾性力を高める必要があるということです。 より良い政府とより強力な地域社会の組み合わせであれば、手を携えて成長していけるでしょう。

オープンデータを用いた共同作業

とはいえ、市民が何を行い、何を望んでいるかについて、成長し続ける大量のデータ、つまり「ビッグデータ」から約束どおりの恩恵が得られるのは、より多くのデータが公開され、より多くの人々が分析し、そこから価値を見出せる場合に限られます。 政府内の取り組みだけでは、利用可能なデータに潜む価値をすべて引き出すことはできないでしょう。 データを他者に公開して「ふるい」にかける方が、多くの目とアイデアを通して大きな価値を引き出すことができるはずです。 ここでいう「オープンな政府データ」とは、政府が公共の利益に供するために、全データの匿名性を確保した状態で公開するデータセットのことです。 そして市民には、誰の許可を得なくても、どのような目的のためにでも、そのデータを利用・共有する権利が与えられます。

よりインテリジェントな政府というビッグデータの恩恵が期待どおりに実現されるのは、市民、起業家、活動者がそれぞれの目的に自由に利用できるような形でデータを公開する方法を、政府が理解している場合に限られます。 繰り返しますが、ビッグデータと市民ロングテールの連携が必要です。

そこで課題となるのは、市民の将来に関する非常に異なる 2 つのビジョンをうまく組み合わせる方法を見つけることです。 ビッグデータ分析と、適応力と能力を高めた地域社会の両方に支えられて、有効性とインテリジェント性を高めた公共システムこそが、データを有効活用しながら、直面する課題を解決していくことができます。 では、どうすればそれを実現できるのでしょうか。

長い目で見た場合に鍵となるのは、政府が、それぞれ独自の地域性と利害性を持つ地域社会とのつながりを強化し、その創造性を高めることを通じて、行政を維持・改善していく必要があるということです。

Government 2.0 とは、人々が市民として政治プロセスを通じて、あるいは納税者またはサービス受益者として、政府との関係を改善できるようにする取り組みです。 Community 2.0 とは、地域社会における市民同士の関係を拡大および強化しようとする取り組みです。 前者は、主として政府のサプライチェーンと意思決定における問題点を解消することで、より優れたサービスを人々に提供することを目指します。 後者は、地域社会として自治の有効性を高め、共同体に根ざした創造性を発揮するための場として Web プラットフォームを提供することを目指します。

ソーシャル Web は、おそらく史上初めて、これら 2 つのストーリーを結びつける方法を提供しているように思われます。 よりスマートになった政府であれば、より強力になった地域社会ともうまく連携できるでしょう。 そこでは、よりインテリジェントで、統合性と成熟度の高い公共サービスが、市民行動主義のロングテールと組み合わせられます。 その結果、規模面の拡張性を備えていると同時に、地域、人間性、個人への十分な配慮も忘れない行政システムが実現します。 これこそが、スケールメリットによる効率的な運営を実現しながら、親しみやすさや順応性も失わない高度な成熟レベルに達した、将来の行政システムといえるでしょう。