コカ・コーラが値上げすべき理由

執筆:ラフィ・モハメド(Rafi Mohammed)Culture of Profit社創業者

シンシナティで過ごした子どもの頃から、私は価格設定に興味がありました。1980年代初頭に新しい大型スーパーが開店したとき、コカ・コーラの2リットル入りボトルが88セントで売り出されていたことを記憶しています。「何て安いんだ」と思ったものです。それから30年が経ちましたが、コカ・コーラの2リットル入り製品の実売価格は今も1ドルを下回っています。ごく最近、ボストンの自宅に近いスーパーマーケットでは、88セントで特売していました。これでは価格設定など意味がないようにも思われます……。

今年の初夏にアナリストたちが、コカ・コーラ社に投資している人々から、必ず受ける質問は米国での価格設定戦略に関するものだ、と断言したのも不思議ではありません。特に、同社はどうして商品の価格を上げることができないのか、または、そうしようとしないのか、という疑問です。

米国では均一価格戦略を取っているにもかかわらず、コカ・コーラ社の販売量は安定して増加しており、利益総額も成長し続けています。直近の第2四半期決算によると、欧州全体の販売量は7.5パーセント成長しており、私のお気に入りの「コカ・コーラ ゼロ」の販売は15パーセントの急成長を遂げました。コカ・コーラ社は米国トップのソフトドリンク・メーカーであり、市場シェアは17パーセントです。昨年、業界誌の『Beverage Digest』は、「ダイエットコーク」(シェア9.9パーセント)が「ペプシ」(シェア9.5パーセント)を抜いて業界第2位のブランドになったと報じました。あの有名な「ペプシ・チャレンジ」のテレビ・コマーシャルを憶えていらっしゃるでしょうか?ペプシコ社は自信たっぷりに、ペプシとコークを飲み比べてから、どちらを買うかお決めください、と消費者に勧めていました。まあ、誰もが「コークの圧勝だよね」と話していたのですが。

大手の小売店に行ってみると、コカ・コーラとペプシの製品は同じ価格で売っているでしょう。同一価格を維持するのが安全な戦略なのです。しかし、コカ・コーラに投資する人々が安心だけを望んでいるとは限りません。同社は自社製品にプレミアム価格を設定すべきだと私が考える理由も、ここにあります。少なくとも、「ドクターペッパー」、「コカ・コーラ ゼロ」、「スプライト」のような差別化に成功している飲料については、価格を引き上げるべきでしょう。ペプシコ社も同様です。ソフトドリンクの「マウンテンデュー」(シェア6.8パーセント)は十分に差別化できているため、やはり高めの価格を設定できるチャンスがあると思われます。他の市場と同様、ソフトドリンク市場でも、製品イノベーションを達成した企業は高めの価格を設定できてよいはずです。

ただし、これが通用するのは小売レベルだけの話です。コカ・コーラの原液の大口取引、たとえばファストフード・レストランなどへの販売について同様の値上げを勧めるつもりはありません。なぜでしょうか?原液の卸売チャネルでは、コカ・コーラとペプシは、いわば「仮想商品」です。すなわち、レストランチェーンなどの購買側は、仮にコカ・コーラからペプシに切り替えたとしても店舗の集客にはほとんど影響しないことを知っているため、価格を重視します。顧客にとって、食べ物の差別化は大きな意味がありますが、ソフトドリンクのメーカーはあまり重要ではないのです。

コカ・コーラの場合、こうした状況、つまり自社製品が、ひとつの市場ではコモディティ的な商品であり、別の市場ではプレミアム製品であるという状況は、経営の観点からは難問かもしれません。そして、こうした状況は同社に限ったものではありません。大多数の商品には、チャネルや地域に応じて異なる価格を設定できるチャンスがあります。的確な価格設定のカギとなるのは、それぞれの市場の微妙な違い(ニュアンス)を把握し、有効に活用することです。
また、経営幹部にとって「収益性を向上させる高価格」の利点を認識し、それを実行するのは簡単なことですが、逆の戦略は難しいチャレンジとなります。企業は、「成功」の証として利益率の高さにプライドをもつ傾向がありますが、たとえそれが正しいとしても、そうしたプレミアム戦略を取れない市場が存在するのも事実です。私のアドバイスは、「プライドを捨てよ」ということです。コモディティ的な商品の市場では利益率を低く抑え、その結果として得られる売上増と利益増を追求し、それで良しとするのです。利益率にもとづくプライドを打ち破る切り札があるとしたら、それは利益総額しかありません。

もし、コカ・コーラのようなブランドがペプシよりも少しだけ価格を引き上げたら、あなたは鞍替えしますか?コカ・コーラは小売販売ではプレミアム価格を設定すべきでしょうか?どのような場合に、購入者は製品またはサービスを高度に差別化されている、あるいは、コモディティ的だと見なすのでしょうか?ぜひ皆様のご意見をお聞かせください。

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