販売でなく、来訪にこそ価値あり

Macys.comが、エクスペリエンスとエンゲージメントを重視する理由

SASインサイトエディター アリソン・ボレン

小売業界において、Macy’sは非常に象徴的なブランドだ。テレビや映画にたびたび登場し、Macy’sでのショッピングは休日の過ごし方の一部ともなっている。米国におけるその人気や、生活、文化への影響力は誰もが知るところだ。

消費者がWebサイトでショッピングを始めた頃には、Macys.comはオンラインチャネルを手中にした最初の小売業者になった。その後のスマートフォンやタブレットの浸透にも、Macys.com はすばやく追随してきた。オムニチャネルで優れた成功を納めるパイオニアとして小売業界で高く評価されるMacys.com は、パーソナル化されたサービス、優れた品揃えに加え、すべてのデバイス上で共通したブランド体験を提供するよう、戦略を立ててきた。

しかしながら今日、「オムニチャネルの概念は進化している」と同社 マーケティング担当グループ 副社長ダレン・ストール氏は話す。「我々は、まさに変化のさなかにいる」 と。ストール氏は、進化を続ける同社のオムニチャネル戦略をRetail’s Big Show (ニューヨーク市)の場で語った。

オムニチャネルは顧客に関するものであり、チャネルについてのものでない

歴史的にオムニチャネル戦略と言えば、顧客来訪ごとの販売額を向上するという小売業者のゴールに即して、各チャネルの販売を最適化するためのものだった。「表面上、これは明らかな機会です」とストール氏はいう。「特にデータから、オンラインと店舗の両方で購入する顧客は、ひとつの購買チャネルからだけ購入する顧客の2倍も購入することが分かるような場合などです」

しかしMacys.comは、成功するオムニチャネル・エクスペリエンスには、それ以上の、微妙な側面があると気づいた。エンゲージしたもの結局そのチャネルでは購入しない顧客が、実は非常に価値ある顧客となりうるということに。実際、複数のデバイスを使って商品を検索、探索し、比較までしたのにオンライン購入しない顧客が、あなたの企業の最優良顧客なるかもしれないのだ。

ストール氏のデータに寄れば、複数のチャネルを介してエンゲージする顧客は、そうでない顧客と比較し、70%も価値が高いという。彼らがどこで購買行動をとるかによらず、だ。複数デバイスを使う顧客は、彼ら自身の購買チャネルをそう容易には変更しないという。実際、Macys.comの顧客はそれぞれのチャネルを異なった目的で使用している:

  • デスクトップ顧客は、価値や選択肢を求めている
  • モバイルは、商品探索、および行きたい場所を確認するために使われる
  • Macys.comアプリをダウンロードして使用する顧客は、より個人的なショッピング体験に興味を持っている
  • リアル店舗は、外観や音、においなど、小売店舗全体の雰囲気を含めた Macy’s体験の全てである

「私たちは基本に立ち返り、お客様が私たちと対話しているときに何をされようとしているかを理解する必要があります」とストール氏は言う。どのデバイスを使っている、というだけでなく、彼らがいまどこにいて、何を探していて、この対話の本当の目的は何なのか?を問わなくてはならない、と。

「お客様が地下鉄でMacys.comモバイルアプリを使うときと、店舗に来訪されてアプリを使うときとでは、その使用方法はかなり異なっています」とストール氏は続ける。

優れたカスタマー・エクスペリエンスへの3つガイド

チャネルによらず、優れた顧客体験を作り上げるのは何だろうか? Macys.comマーケティング担当グループ 副社長ダレン・ストール氏は、次の3つのガイドラインを挙げる:

  1. チャネルではなく、顧客のことを考える 「お客様中心であるから、オムニチャネル思考が求められるのです」とストール氏は言う。
  2. 顧客のやり方でのショッピング 「お客様の好み、期待する体験を中心に組み立てるのです」
  3. 戦略的、戦術的な顧客のレンズを用いる 「お客様が何をやりたいのかが分かれば、それをガイドするために私たちに何が必要なのかがわかります」


「お客様が私たちとどのように対話するか、その全てが分かれば驚異的なパワーとなります」ストール氏は言う。「しかし、まだ始まったばかりなのです」。データを収集、活用してどのようにカスタマー・エクスペリエンスを向上するか、その重要性は、今後小売業界においてますます拡大するだろう。

オムニチャネル・データの分析

多くの小売企業にとって、従来のオムニチャネル・マーケティングのゴールは、顧客を呼び込み、商品をプロモーションして、購買プロセスへ誘導するというものだった。しかし、このモデルが機能しなくなったとき、データやその分析を使って、どのように戦略を変更していけるだろうか?

「価値は来訪にあります。販売ではありません」ストール氏は言う。「マインドセットを変えなくてはなりません。が、一旦それができれば、いくつかの本当にきちんとした活動を開始できます。そしてここに、ビッグデータの出番があります」

例えば、Macys.comは「彼らとはどのようにエンゲージしている?彼らはどのように共有している?彼らは何を購入している?そして、それはどこで?」といった問いを立てる。そして、同社はそのデータを用いて、異なるチャネル上の行動やエンゲージメントが、より大きな戦略にどのように影響するかを理解する、というわけだ。

「分析することで、より先を見渡すことができます」と、ストール氏は言う。「エンゲージメントと実購買のデータを組み合わせて見通しを立てることで、チャネル横断的な行動が当月だけでなく、翌シーズンの売上をも牽引することが分かります」

オンライン活動の価値をつぶさに見ていくこと-それが即購入につながるかどうかによらず-が、Macys.comのオムニチャネル戦略のキーとなっている。

「スマートフォンから始めたお客様は、デスクトップ上であっても、スマートフォン上であるかのようにして、購入手続きを完了する傾向があります」とストール氏は言う。さらに彼らの調査データによれば、スマートフォン上での行動を終えた顧客が第一に考えることは、実店舗での購入だという。

この2点だけを見ても、スマートフォンを通した顧客行動に対する考えが変わるだろう。本質的に、スマートフォンは他チャネル上の消費者行動を増幅するのだと、ストール氏は言う。

ユーティリティ、モチベーション、そしてインスピレーション

この業界ではいま、誰もがオムニチャネルについて語っているが、Macys.comはカスタマー・エクスペリエンスにフォーカスしている。「もし店内でお客様に『オムニチャネル体験』についてお聞きしても、何のことかお分かりにならないでしょう。私たちが拙い対応をしたときにお客様はそれが分かるというだけなのです。」

例えば、もしオンライン上の商品やイベントが、実店舗でのそれと異なっていれば、顧客は気づく。エクスペリエンスとは、耳障りなものではなくて、分かりやすく、シームレスで、繋がりのあるものでなければなりません」とストール氏は語る。「そのやり方が拙ければ、お客様にとっては悪体験となるだけでしょう」

最終的にすべては、いつ、どこであっても顧客のために最大の価値を提供する、ということに尽きる。「利便性を通じた顧客維持には、ユーティリティ(有用性)、モチベーション、そしてインスピレーションがキーとなります」と、ストール氏は締めくくった。

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