機械学習 + ウェアラブル医療機器 = もっと健康的な未来

執筆: アン-リンゼイ・ビール(Anne-Lindsay Beall)、「SAS Insights」編集者

米国を代表する科学者のヴァネヴァー・ブッシュ(Vannevar Bush)が、将来の世界では機械が自ら思考し学習するようになると予測したのは、1945年のことでした。当時はSFまがいの話にしか聞こえませんでしたが、現在ではごく普通のことであり、誰もが利用するGoogleの検索結果も機械学習の産物です。Netflix社は機械学習を活用(英語)して、会員向けのお勧め映画情報をパーソナライズしています。独身者向けのマッチング・サイトを運営するeHarmony社は機械学習で恋愛の相性を予測(英語)しています。銀行はサイバー監視機能に機械学習を組み込んで、不正や濫用の発生をモニタリングしています。

機械学習は私たちの日常生活にますます影響を及ぼすようになっていますが、その定義、機能、重要性については、まだ多くの誤解や混乱があるのが実情です。

2015年当時、Geneia社のCOO(最高オペレーション責任者)だったヘザー・ラヴォア(Heather Lavoie)氏は、The Premier Business Leadership Series(英語)での講演で次のように説明しています。「簡単に言うと、機械学習とはデータから自律的に学習できるアルゴリズムを構築および学習するために使われる手法です。この種のアルゴリズムは、明示的にプログラミングされた命令に従って動作するのではなく、入力にもとづいてモデルを構築し、それを用いて予測や判断を行うという仕組みによって動作します」

Geneia社COO(2015年当時)のヘザー・ラヴォア(Heather Lavoie)氏
The Premier Business Leadership Seriesで機械学習について講演した、Geneia社COO(2015年当時)のヘザー・ラヴォア(Heather Lavoie)氏

パターンを見極めて命を救う

医療テクノロジーおよびコンサルティング会社のGeneia社では、ビッグデータに機械学習を適用することで、医療機関がより優れた治療をより低コストで患者に提供できるよう支援しています。

「Geneiaでは多くの異なるソースからデータを取り入れています。臨床データ、研究データ、生理データ、保険数理データ、消費者データなどです。こうしたデータを統合して機械学習手法を適用できるようにするために、Theonという統一プラットフォームも構築しました」(ラヴォア氏)。

同社では機械学習を活用することで、欠損値のマッチングと判定、さらには主成分分析を通して、データ内のパターン、すなわち、傾向や因果関係の把握に役立つクラスターを発見できるようになっています。

「機械学習を使うと、データに潜む以前は把握できなかったパターンも明らかにすることができます。また、ウェアラブル医療機器やセンサーを通じて、さらに膨大な情報を取り込むことも可能です。室内の空気の清浄度、湿度、患者が冷蔵庫を開けた回数、トイレを使った回数などはそのごく一部であり、患者個人をあらゆる角度から総合的に把握すると同時に、多くの患者に共通する傾向も特定できます」(同氏)。

データ全体に機械学習を適用できるようになったことで、Geneia社では診断の正確性が向上しており、臨床評価とラボ値を用いて以前よりも早期に病変を予測し、より迅速に対処できるようになっています。中でも、連続的なデータセットから変化を格段に素早く察知できる点が特に役立っています。

「例えば、あなたの御祖母様が鬱血性心不全で自宅療養中だとしても、ウェアラブル医療機器を利用すれば体重、酸素脈レベル、呼吸数の変化を素早くキャッチできます。当社ではこれらのデータを全てTheonアプリケーションに取り込むことで、心臓機能低下の兆候をかつてないほど早期に検知し、アラートを発することができます」(同氏)

ラヴォア氏が指摘するように、人口の高齢化に対して医療機関の数が不足している現状では、従来の枠に縛られない新たな患者ケア手法を見出すことが急務となっています。

「機械学習をウェアラブル医療機器と組み合わせる手法は、地域住民の健康を増進し、寿命を伸ばし、患者が最も幸せな場所で、つまり家族に囲まれながら自宅で療養できるようにする取り組みに役立ちます」

機械学習の将来

機械学習の活用は今や、業種や組織規模を問わず一般的な取り組みになりつつありますが、ラヴォア氏は「いずれはユビキタスな存在となり、ビジネスの競争に不可欠なのものになる」と話しています。

また、適切に学習したモデルにも制約が伴うことを認識する必要性を踏まえながらも、ラヴォア氏は、従来は関連付けられることのなかったデータセット群(環境、社会経済、バイオメトリック、金融、ゲノム、農業など)が機械学習の適用によって統合的に分析される状況を思い描いています。これが実現すれば、ヴァネヴァー・ブッシュですら予見しえなかったブレークスルーも夢ではないでしょう。

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