アナリティクスで都市をスマート化する10の方法

執筆:ポーラ・ヘンダーソン(Paula Henderson)、SAS政府・自治体向け事業担当副社長
 

私たちの多くは「スマートシティー」という言葉を聞くと、交通状況からエネルギー使用量まで、あらゆる日常活動に関するデータをセンサーが収集するという様子をイメージします。行政リーダーたちに共通するのは次のような考え方です。「うちには関係ない。まだそんな段階ではない」。しかし、何からのデータを収集しているのであれば、あなたの組織も住民のためにそのデータ活用して都市のスマート化を図ることができる立場にあります。

行政機関では各部門が収集する大量のデータを負担に感じているかもしれませんが、それは実際には(うまく活用できれば)宝の山であり、住民の安全の向上、予算のスリム化、サービスの向上に役立てることができます。つまり、データの意味を解釈するためにアナリティクスを活用している、世界中の都市の仲間入りができるのです。

行政リーダーの多くはまだ、業務の改善や市民生活の充実のためにアナリティクスを活用しようも、どこから始めればよいのか分からないと考えています。実際にはとても単純で、分析は課題から始まります。解決したい課題は何でしょうか? 簡素化する必要のある業務は何でしょうか?多くの自治体は、データベースを統合した上で1つの課題の解決にアナリティクスを使うところから始めています。そして、最初の課題解決から価値を引き出すことに成功するのを待ち、それが確認できたのちに、組織全体のその他の課題の解決にもアナリティクスを適用していくのです。

以下では、行政機関が抱える課題の解決や業務の簡素化にアナリティクスが活用されている10の事例をご紹介します。

アナリティクスは、災害復旧の取り組みにおけるリソース配分の優先順位付け、児童の育成に資する革新的な行政施策の結果測定、先細りするエネルギー資源の保護などに役立てることができます。
  1. 市民へのフィードバック
    カナダのアルバータ州公園管理局では、約250ヶ所のキャンプ地と約1万4,000ヶ所のキャンプ場を管理しており、年間180万人以上の宿泊客を受け入れています。同局は5月から10月半ばまでの間に、利用者からアンケート調査の回答を1万5,000件も受け取りますが、テキスト・アナリティクス・ソフトウェアを活用しているおかげで、調査結果の精査を観光シーズン後の閑散期まで先延ばしにする必要がありません。フィードバックのコメントに見られる傾向を速やかに把握できるため、施設の運営を臨機応変に調整して利用者のキャンピング体験を改善することが可能になっています。
  2. 刑事司法と公安・治安
    英国最大規模の警察署の1つが、組織全体にインテリジェンス・アナリティクス・プラットフォームを導入しました。このミッションクリティカルなシステムは、1,200万件の文書と900万件の構造化レコードを取り扱い、24時間体制でリアルタイムのインテリジェンスを提供します。4万人以上の警察官と警察職員が日常的に利用しており、他の政府機関からもセキュリティを維持してアクセスすることが可能です。このプラットフォームは、機密情報を扱う高度な専門性と高度なセキュリティ保護が求められる部署とも統合されています。このインテリジェンス管理システムの導入により、情報にもとづいてリアルタイムで行動し、不眠不休で公共の安全を守ることが可能になっています。
  3. 児童福祉
    ニュージーランドでは、社会開発省がアナリティクスを変革手段として活用し、恵まれない境遇にある子どもたちが明るい将来を築けるように支援しています。これは、いわゆる「包括的成長」(inclusive growth、全面的成長/全領域的成長とも)の完璧な実例であり、個人、社会、経済を同列に置いてその成長を支援する取り組みです。対象者を的確に絞り込むことで、【効果的かつ効率的な支援を提供し、】福祉受益者に生きていく自信と生活に役立つスキルを身につけさせ、福祉に依存する期間の短縮を図っています。
  4. 経済開発
    イタリアのカンパニア州で州都ナポリの近郊に位置する自治体の行政機関では、7,000件を超える地域開発プロジェクトの申請に関する評価と対応、入札基準を遵守しているかどうかの検証、資金調達段階とプロジェクト完了までの進捗管理にアナリティクスを活用し、いずれの業務でも最大限の透明性と迅速性を実現しています。ここ数年で、職員たちは手作業のプロセスから統合モニタリング・システム(IMS)への移行を完了し、科学的調査の取り組みについても資金調達を管理できるようになっています。
  5. 教育
    米国ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外のフォックス・チャペル地区を管轄する学区は、全米で憧れの的となっている連邦教育省のブルーリボン賞を学区内の各校が受賞しており、何度も賞賛を浴びてきました。それでも同学区では、あるグループの生徒への対応を強化したいと考えていました。それは学習障害を抱えた子どもたちです。現在では、同州の付加価値評価システム(PVAAS)を活用することにより、生徒全員の毎年の成長をより的確に追跡できるようになっています。その結果、州が義務付ける学力テストの成績を見ると、学習障害と診断された高校2年生の習熟度は、10年前には数学で14%、国語で29%でしたが、今では両学科とも69%の習熟度に達しています。
  6. 市民サービス
    フランスでは、失業手当を受給している求職者が、個人別の事情に応じてカスタマイズされた支援を受けられるようになっています。アナリティクスを導入し、就業へのパーソラナイズされた道筋をつける作業を地元の行政サービス支所で行えるようにしたことで、ニーズに合わせて個別調整された市民サービスを実現しながら、就労の質と一貫性に関して国が定める基準と目標も達成できるようになっています。
  7. 不正検知
    米国カリフォルニア州ロサンゼルス郡の社会福祉課(DPSS: Department of Public Social Services)は、貧困層の市民を支援し、健康の増進、個人の自立、経済的自立を促すために幅広い施策を展開しています。郡内の隅々にまで目配りしながらDPSSが実施しているサービスには、一時的な貸付、就労支援、無償/低負担の医療保険、食料品購入補助、高齢者や障害者向けの在宅サービス、その他の金銭的支援などがあります。カリフォルニア州の低所得者向け社会保障プログラムであるCalWORKs「ステージ1 育児プログラム」の公正な運用を支援するため、同郡はSAS® Analyticsを導入し、潜在的な不正行為の特定、調査の強化、不適切な支払の防止を図りました。その結果、コミュニティの最も恵まれない弱者に対する支援を維持しながら、貴重な税金を何百万ドルも節約できています。
  8. 医療
    米国ノースカロライナ州ウェイク郡では、群の救急医療局(EMS)がアナリティクスにもとづいて発令した新たな勧告のおかげで、心停止に陥った患者の蘇生率が向上しています。同郡のEMSは、心停止患者に関する20年分のデータを分析した結果にもとづき、心肺機能蘇生(CPR)措置に関する勧告を「CPRを施している間に救命士(EMT)が心拍を確認できた場合には、CPRの継続時間を(業界標準の)25分間から60分間以上に延長する」という内容に変更しました。調査の結果、新しいCPRガイドラインの導入初年度で100人の命が救われたことが判明しています。
  9. 天然資源とその保護
    米国ノースカロライナ州ケーリーでは、水道検針自動化システムの導入により、市民が水道使用量をモニタリングできるよう支援すると同時に、水道事業において数百万ドルの節約を達成しています。このAquastarと呼ばれるシステムでは、手作業による毎月の検針を無線IoTシステムに置き換え、1時間毎にメーターデータを収集します。これにより、水道事業の運営効率が向上したほか、SAS Analyticsで作成した詳細な水道使用量レポートを市民に提供できるようなりました。ケーリー内で最先端の新型メーターと無線送信機にリプレースされた住宅用および商用の水道メーターは約6万台に上ります。Aquastarが水道事業にもたらすコスト削減効果は1,000万ドルを超える見通しであり、これはプロジェクトのコストを上回る金額です。
  10. 交通運輸
    デンマークとスウェーデンを結ぶオーレスンブロン(Øresundsbron: デンマーク語とスウェーデン語の単語からなる合成語で「オーレスン橋」の意)は、長さ約8キロメートルの橋と【約4キロメートルの】海底トンネルによって、2つの国と2つの大都市圏(デンマークの首都コペンハーゲンとスウェーデンのマルメ)を結んでいます。この施設ではアナリティクスを活用して、1人ひとりの嗜好に合わせて「顧客」と行き先とを結ぶサービスも提供しています。これは、施設の維持に必要な収益をもたらす交通量を確保するための独特のアプローチです。SAS® Customer Intelligenceを活用している同施設のマーケティング/顧客サービス部門では、通行パスを所有する18万人の旅行者1人ひとりにとって何が有意義で関連性の高いオファーなのかについて、全員が情報を共有しています。利用者に毎週送信する電子メールの開封率は30%に達しています。

結論
アナリティクスが都市生活の快適化に貢献している事例は世界中で数多く見られます。アナリティクスは、災害復旧の取り組みにおけるリソース配分の優先順位付け、児童の育成に資する革新的な行政施策の結果測定、先細りするエネルギー資源の保護などに役立てることができます。あなたの街では、スマート化の現状やさらなる推進計画にアナリティクスがどのように役立っているでしょうか?
「State and Local Connection」(英語)ブログで、お勤め先の事例をぜひご紹介ください。その他の事例もお読みいただけます。


Paula Henderson profile photo

ポーラ・ヘンダーソン(Paula Henderson)はSASの政府・自治体事業担当副社長として、米国の全50州および全米各地の数多くの郡や自治体にSASアナリティクスのパワーをもたらすという1億ドル規模のビジネスの責任者を務めています。

ポーラは、行政機関がリソースと予算を最大限に有効活用しながら質の高いサービスを提供し、最終的に市民生活の向上を実現しようとする取り組みに、アナリティクスが役立つと確信しています。不正や無駄や濫用の削減、公安/治安や医療の成果の改善、そして最も重要な領域である子供たちの保護など、米国中の州と自治体の行政機関には、生活およびビジネスの場としてのコミュニティの快適性・安全性を高めるためにアナリティクスを適用できる幅広い可能性が存在しています。

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