顧客ロイヤルティの向上

北米のメジャーリーグ・サッカー、きめ細かくパーソナライズされたマーケティングでファンを獲得

スポーツビジネスの成否は、ファンのロイヤルティにかかっている。米国とカナダにおけるトップレベルのプロサッカー・リーグであるメジャーリーグ・サッカー(MLS)は、いわゆる「カスタマー・エンゲージメント」を向上させることを目指し、SAS® Marketing Automationを導入してファンに関する理解を深めることにした。


MLSは、従来のように同一内容の電子メールを一斉送信する代わりに、ファン一人ひとりの居住地や好きなチーム(リーグには米国16チーム、カナダ3チームが所属)に合わせてパーソナライズした情報を提供したいと考えた。そのためにMLSがまず行ったのは、ファンのデータベースを作成することだった。

このプロセスの最初のステップは、チケット発行、関連商品、デジタル視聴契約といった多様な内部ソースに保管されているデータをリーグの全チームから集め、統合することだった。次にMLSは、ファンたちが何を望んでいるのかをより深く把握するために、SAS Marketing Automationの予測分析とデータマイニング機能をそのデータに適用。そして、そこから得られた洞察を活用して、各チームがチケットと関連商品の販売機会を増やせるように支援する、自動化されたカスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)プログラムを構築したのだ。

ファン・ファネル

MLSでは、このCRMプログラムを「ファン・ファネル」と呼んでいる(ファネルとは、先がだんだん細くなっていく漏斗のこと。CRMの分野では、潜在顧客がロイヤルティの高い顧客になるまでに辿る工程全体を指すために使わる言葉)。MLSのCRMおよびアナリティクス・ディレクターであるチャーリー・スン・シン(Charlie Sung Shin)氏の説明によると、このファネルは、データの取得、カスタマー・エンゲージメント、収益化、ロイヤルティという4つのフェーズで構成されている。このプログラムの目的は、一連の働きかけ(マーケティング活動)を通して、あるフェーズから次のフェーズへとファンを導いていくことにある。

シン氏の説明によると、それぞれのフェーズは戦術的な行動と特定の目的に結びついている。各フェーズのROI(投資対効果)とKPI(重要業績評価指標)を調べることで、同リーグは必要に応じてマーケティング戦術を調整できるのだという。

「私たちが行う活動のすべてが評価、追跡、分析されます。そのため、活動を振り返って改善し、戦略に変更を加え、調整することができるのです」(シン氏)。

フェーズ1: データの取得

このフェーズの目的は、シン氏によると、ファンとの関係を確立するために情報を収集することだ。そのためには、盤石なファン・データベースの構築が必要となる。MLSではファンに関するデータを内部ソース(MLSのWebサイト)、パートナーシップ活動、第三者機関から取得している。

フェーズ2: カスタマー・エンゲージメント

ファンに関するデータを収集したら、次はそのデータを統合し、ファンとの関係を深めるために利用できるような、より意味のある形にまとめ上げることになる。シン氏によると、リーグのカスタマー・エンゲージメントには、ニュースレター、パーソナライズ、コンタクト戦略という3つの側面があるという。

フェーズ3: 収益化

MLSでは、マーケティングキャンペーンの効果を、チケット発行、関連商品、デジタル視聴契約という3領域の売上で評価している。シン氏は、これらの領域における収益アップの目標を次のように説明した。

「チケットの売上をできる限り伸ばすため、ファンのプロファイルとトランザクション履歴にもとづいて、パーソナライズされた電子メールを送信します。また、私たちにとって最も大事なシーズンチケットのお客様も、つなぎとめなければなりません」。

そして同氏はこう付け加えた。「関連商品の売上に関しては、新規のセールス、クロスセル、アップセル、そして過去の購買履歴を把握することに重点を置いています。また、デジタル視聴契約を増やすためには、顧客の行動と居住地に合わせて絞り込んだオファーを提示する必要があります。」

フェーズ4: ロイヤルティ

MLSには19チームが所属しており、それぞれがファンのロイヤルティを向上させる責任を負っている。「結局のところ、ファンはチームのファンなのであって、リーグのファンだというわけではありません」(シン氏)。とはいえ、リーグ側でもテクノロジーとアナリティクスを通して各チームを支援している。

チームの多くは独自のロイヤルティ・プログラム(会員特典制度など)を実施している。こうしたプログラムのチームにとっての価値は、ファンの行動に影響を及ぼせるということだ。例えば、ファンにスタジアムに1時間早く入ってもらうことができれば、スタジアム内での飲食物の売上は伸びるだろう。

ファンにとっての価値は、金銭に換えられない体験が中心となる。例えば、選手と一緒に試合会場に入場できる、コーチと話ができる、といった特典だ。「このような体験に参加できるのは、シーズンチケットをご購入いただき、ロイヤルティ・プログラムに参加していただいた場合のみです」(シン氏)。

測定とトラッキング

同リーグのCRMフレームワークで重要な要素となっているのは、測定と分析だ。マーケティングキャンペーンを成功させるには、その効果を測定およびトラッキングできなければならない、とシン氏は説明する。MLSでは、フェーズごとにKPIを用いて効果を測定している。

「データの取得時は、データベースの増大の度合いと全体的なサイズを測定します。また、データの出自も確認します。内部ソースなのか、外部ソースなのか、といったことです。また、6ヶ月前に実施したパートナー獲得キャンペーンは成功したのか、つまり新しいデータを何件取得できたのか、といったことも調べます。」

収益化のフェーズでは、総売上、顧客による商品の購入頻度、コンバージョン率を測定することが最終目的となる。「キャンペーンが実際の売上に転換されているのかどうか、それを調べます」(シン氏)。

「ロイヤルティに関しては、顧客の好きなチームを測定しています。私たちが顧客に送るメッセージには毎回、顧客がどのチームのファンなのかを問う内容が含まれています。その返信から得られた情報を利用することで、各チームはファンとの交流を図り、親密な関係を育てることができます。このような形でエンゲージメントが深まるにつれ、収益性とロイヤルティが向上し、最終的にはファン一人ひとりの生涯価値が増大することになります。」

最後に

MLSのCRMプログラムは目に見える成功の実例ではあるが、このプロセスは今も進行中だ。シン氏によると、同様のプログラムの実施を計画しているなら特効薬を求めてはいけない。1回限りの努力で一気に新しい場所に移れるような戦略は存在しない、ということだ。「組織全体で継続的に取り組み、常に改善を重ねることに注力する必要があるのです」(シン氏)。

「CRMの取り組みは長い旅路です」とシン氏は強調した。「スタート地点とゴール地点が決まっているわけではありません。たゆまぬ進化の取り組みです。常に向き合いながら、改良を重ね、一度に一歩、少しずつ進んでいくものなのです。」

本稿は以下のプレゼンテーションを元に構成したものです:Major League Soccer Scores with Analytics、チャーリー・シン(Charlie Shin)、Integrated Marketing Week 2013 in New York

sascom_magazine _logo

関連情報:

SAS® Marketing Automationの主な機能

SAS Marketing Automationを使うと、追跡可能かつ反復可能な自動化された方法で、より多くのキャンペーンを実行し、優れた結果を導くことができます。対象セグメントの定義、選択ルールの優先順位付け、コミュニケーション・チャネルの選択、キャンペーンのスケジューリングと実行、キャンペーン結果の分析を迅速に行えるほか、将来のキャンペーンの実績を改善するための調整も簡単に行うことができます。


10チームがアナリティクスを活用して成果を達成

さらに新しい調査レポートもあります。スポーツにおけるアナリティクス: 新たな勝利の科学(英語版)では、トーマス・ダベンポート(Tom Davenport)氏が25以上の主要なスポーツ組織にインタビューしています。レポートをダウンロードして、各チームが分析を活用して達成した成果(およびその他の興味深い話題)をご覧ください。

米ナショナル・フットボール・リーグ

  • ニューイングランド・ペイトリオッツ
  • シンシナティ・ベンガルズ

全米プロバスケットボール協会

  • オーランド・マジック
  • フェニックス・サンズ
  • ヒューストン・ロケッツ

メジャーリーグ・ベースボール

  • ボストン・レッドソックス
  • ニューヨーク・メッツ
  • オークランド・アスレチックス

プレミアリーグ(サッカー)

  • ウェストハム・ユナイテッド
  • マンチェスター・シティ

Back to Top