国立大学法人 山形大学

実践的に効果あるエンロールメント・マネジメントの実現に向け、「SAS® Visual Analytics」を活用

国立大学法人 山形大学(以下、山形大学)は、エンロールメント・マネジメントとインスティテューショナル・リサーチに重点的に取り組んでいる大学だ。2006年に部門としてエンロールメント・マネジメント部を発足させ、2010年には学生に関するあらゆる情報を蓄積するデータベースとデータ分析システムの構築を始めた。当初構築をめざしたデータ分析システムは、システムの柔軟性に問題があり、課題の連続であったが、「SAS® Visual Analytics」との出会いをきっかけにプロジェクトは急速に展開。学生の成長に対する“想い”と、データという“FACT”と、現場業務での“経験”を重視して意思決定を行う組織文化の醸成に取り組んでいる。

Yamagata University
データ集計・分析の中核にSASを据え、学生の成長に対する“想い”と、データという“FACT”と、現場業務での“経験”を重視して意思決定を行う組織文化を醸成しています

福島 真司氏
国立大学法人 山形大学
エンロールメント・マネジメント部 教授

学生の人生を支援する方法論

山形大学は、「学生目線による大学づくり」、「調和のとれた大学づくり」、「存在感のある大学づくり」の3つを大学経営の基本方針とする。少子化の影響を受け、国立大学法人といえども学生募集にしのぎを削る中、朝日新聞出版『大学ランキング』の「高校からの評価」「学長からの評価」では、全ての項目で東北地方のトップ3にランクされており、全国ランクでも高い評価を受けている。アットホームな雰囲気を重視するだけでなく、理工系学生の約半数が大学院に進学することから、教育期間を6年ととらえ、入学後の1年間だけではなく、長期間に渡って“人間づくり”のための基盤教育を行うプログラムが、外部からの評価を高めている。

山形大学では、早くからエンロールメント・マネジメントとインスティテューショナル・リサーチを重視してきた。エンロールメント・マネジメントは、入学前から卒業後まで一貫して学生の人生を支援することを目的とした大学マネジメント手法であり、一方のインスティテューショナル・リサーチは、学生の状況をしっかりと把握し、教育改善等の意思決定を支援するための自学に関する調査分析をさす。エンロールメント・マネジメントを実現するためには、大学内の各部署に点在している学生データの統合とデータ分析が必須になるため、この2つは相互に深く関連する機能と言える。

2006年に発足したエンロールメント・マネジメント部(発足時は、エンロールメント・マネジメント室)を中心に、データ分析の結果を活用しつつ、入試方法の改善を行うなど、まずは、学生募集に係わる意思決定の支援をはじめた。並行して、オープンキャンパスに来場した、大学説明会に参加した等の受験前の大学との接触に関するデータ、受験した入試区分や入試結果などの情報に加え、入学後の履修状況や出欠状況、成績、授業評価、各種アンケート結果などの情報、そして就職に関する情報の収集も開始。データが大量になり、Excel等の分析では限界を迎えた2010年、それらを統合的に分析する「総合的学生情報データ分析システム」の構築に着手した。

エンロールメント・マネジメント部 教授 福島 真司氏は、「データを必要とするすべての人が分析のための十分な時間とスキルを持っていれば、Excelでもやれたかもしれません。しかし、分析結果は共有されてこそ意味を持ちますので、セキュリティに配慮した共有の仕組みが必要です。加えて、データは年々増加し続けますし、データ項目も追加され続けるでしょうから、当時の理想としては、どのようなデータでも扱うことができ、どのような形でも分析結果を表現できるシステムをめざした訳です」と話す。

美しさと操作性に優れていなければ使ってもらえない

試行版の分析システムは稼働した。しかし、欲しいデータは一定程度集まるようになったものの、どのような切り口で見たいかは、議論が進むにつれて、変化する。当初に作り込んだ定型的な“データの取り出し方”では要望に添えないケースが数多く出てくるが、要望の実現には、電話帳のような厚さのマニュアルを覚えSE並にシステムに精通するか、あるいは、追加作業の高額なコストをSEに支払うしかない。さらに、セキュリティに過度に配慮し、複雑すぎる暗号化の仕組みや高額なハードウエアを利用した設計であったため、分析のために使うべきコストのほとんどが、ハードウエアの維持管理コストに消えていくような課題だらけのシステムとなってしまった。関係する教職員からの要望が数多く寄せられたが、対応がほとんど困難な状況に陥ってしまう。
「もう1つ、重要な問題がありました。それは、ユーザーインタフェースです。利用者のほとんどはICTの専門家ではありません。ただし、Excelは日常業務で利用しています。基準はそこですので、Excelより見た目や操作性が劣るシステムは、誰も使いたくないわけです。何でも入れて何でも出せるというのは理想としてはよいのですが、この柔軟性を実現するためには、莫大な時間とコストが必要であり、“絵に描いた餅”でした」(福島氏)

エンロールメント・マネジメント部は、傷が深くならないうちに、このシステムの一時停止を決断した。このままコストをかけてシステムの改修を進めても、このシステムを基盤に大学全体にインスティテューショナル・リサーチを浸透させることは不可能だと判断したためだ。その頃に、「SAS® Visual Analytics」の存在を知ることになる。

インスティテューショナル・リサーチの目的は、意思決定の支援である。そのためには、議論を活性化させ、教職員の経験値も十分に引き出すような良質なデータ提供が重要である。議論の場で、見たいと要望が出たデータを素早いレスポンスで提示し、だれもが直感的に扱える操作性の高さが、データを“活きた情報”に変える。必要なことは、楽しさ、わかりやすさ、そして、美しさだった。SAS Visual Analyticsは、その3つを強く意識したソフトである。
エンロールメント・マネジメント部 講師 鈴木 達哉氏は、「現在の大学の教職員は、多忙です。思い立ったときに、すぐに情報にアクセスできなければ結局手をつけずに終わってしまう可能性が高いです。SAS Visual Analyticsなら、見たいときに、手早くアクセスし、データを実際に操作しながら考えを深められると感じました」と話す。

山形大学は、既存システムを置き換える形でSAS Visual Analyticsを導入し、データ提供を必要とする各部局に対し、iPadを用いてデータ・プレゼンテーションを行っている。その評判は高く、必要な部局には閲覧用iPadの提供も行っている。SAS Visual Analyticsのインタラクティブ・レスポンス機能により、あらかじめレポート作成しておけば、高速に、操作性よく、データを取り出すことができる。
「あらゆる場面で、議論に参加する教職員が、同じデータをもとに意見を交換し、考えをぶつけ合い、そして、方向性や想いを共有できれば、強い組織になることができます。SAS Visual Analyticsでデータ活用が浸透し始め、データの収集方法や見せ方、分析の切り口等の新たな提案をしてくれる教職員もいます。そうした全ての声が、新しい議論を生みます。その繰り返しを通して、大学が進むべき方向を、全員で作っていくことが大切なのです」(福島氏)

「見える化」から「言える化」へ

大学組織でよく言われる課題に、”学部間の壁の高さ“が挙げられる。学生の成績を含む個人情報を扱うシステムであるため、現在のところ、山形大学でも学部をまたいだ情報の交換には利用されていない。しかし将来は、すべての教職員がその壁を越え、経験値を加えた集合知を創り出しながら大学運営を行うことが理想だ。SAS Visual Analyticsは、その組織文化の醸成を促進する強力なツールの一つと言える。
たとえば、大学生活を通してめざましい成長を遂げた学生群を深く分析することで、そのような学生を育てるために、教職員がどうサポートしていけばいいのか、という議論が生まれる。さらに長い時間をかけて学生の人生を追っていくと、社会に出て活躍する卒業生が、どのような学生生活を送っていたのかを分析することも可能になる。

教育は、人間を対象としている。工場の生産性の向上や在庫を削減するための、機械的な数値の分析だけでは、成果は望めない。教育現場が必要としているのは、直接的に答えを与えてくれるシステムではなく、議論のベースとなる事実を「見える化」し、議論の活性化、すなわち「言える化」を実現する仕組みだ。
福島氏は、「SAS Visual Analyticsは、エンロールメント・マネジメントの質をますます高めてくれる可能性を持っています。このツールをどのように活かすのかは、私たち教職員にかかっています。学生の成長に対する“想い”と、データという“FACT”と、現場業務での“経験”を重視して意思決定を行う組織文化の醸成のために、さらなる浸透を図っていきます」と話している。

国立大学法人 山形大学

課題

エンロールメント・マネジメントを実現するために、学生に関するあらゆる情報を蓄積するデータベースと柔軟なデータ分析を可能にする仕組みが必要だった

ソリューション

利点

直感的な操作により、さまざまな切り口でデータ集計・分析できる環境を構築。
教職員は必要な情報をすばやく取り出し、より戦略的な議論と最適な意思決定を行えるようになった

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