東京医科歯科大学

量的データを用いた論文作成にSASを活用、統計的アプローチによる仮説検証を実践
―SASプログラミングを通じて、より早く、より深く統計学を学ぶ―

東京医科歯科大学では、SASの教育機関向けライセンス「SAS Academic Program」を導入し、教職員および学部生、院生がSASを活用できる環境を構築している。統計処理の実践やSASプログラミングの記述を指導する大橋 渉氏の講義には高いリサーチマインドを有する学生が集い、SASを活用して複雑なデータ分析に取り組む。いまやSASは、客観的な量的研究を用いた論文の作成に欠かせない存在になっている。

リサーチマインドの高い学生の要望を満たす

東京医科歯科大学は、医学科・保健衛生学科からなる医学部と、歯学科・口腔保健学科からなる歯学部の4つの学部学科組織、さらに、医歯学総合研究科と保健衛生学研究科の2つの大学院組織を擁する医療系総合大学院大学だ。「知と癒しの匠を創造する」というミッションのもと、「幅広い教養と豊かな感性を備えた人間性の養成」「自己問題提起、自己問題解決型の創造的人間の養成」「国際性豊かな医療人の養成」の3つの教育理念を掲げる。

同大学では、民間企業などでの実務経験に基づいた目的意識をもつ社会人大学院生や、一度は看護師として働き始めた後に、より高度な知識や専門性を求めて修士課程への入学を求める大学院生も少なくないため、もともとリサーチマインドは高めである。この中で、医学部 保健衛生学科 大学院 非常勤講師 医学博士 大橋 渉氏は、統計学の講義を補足するソフトウェア実習のパートを担当。学部では8コマ、大学院では10コマに及ぶ統計学の理論を履修した学生が、同氏のソフトウェア実習を受講する。医学・保健衛生学の研究においては統計的なアプローチが極めて重要であり、統計学の基礎を理解し、実践できる力を育成することは重要な意味を持っている。

大橋氏は、「量的なデータに基づく研究を行う学生が、私の講義を受講しています。学部生、大学院生、それこそ教官に限らず、統計的な分析と仮説検証を行う量的研究がきちんとできなければ、優れた論文は書けません」と語る。

統計学の講義で学生は、さまざまな統計解析の手法とその適用領域などを含め、実例で統計学の理論を学ぶ。コンピュータを使わなくても解けるような例題が与えられるとノート上で計算し、自らの手でその適用方法を体験する。こうして、多岐にわたる分析手法について基礎から本質的な部分までをたたき込まれるため、大橋氏の講義が始まる頃には、実践のスタートラインとして十分な統計学の知識を得られる。

SASを使った講義では、SASで処理するデータをSASデータセットとして準備する「データの読み込み」を重点的に身につけさせる。どれほど信頼度が高く、優れた統計ソフトウェアであっても、解析にさえたどり着けないのであれば、高価なソフトウェアは即「休眠ソフトウェア」となってしまう。実は、解析以前のデータセットの読み込みで挫折してしまうユーザーは結構多く、自身も苦労した経験があるからこそ気付く部分でもある。SASに慣れている指導者は見過ごしがちな部分であるが、実は初心者にとっては極めて大きな壁だったりするのだ。その後、SASデータセット用いたPROCステップを実行し、データ解析の実践を学ぶスタイルをとる。

サイエンティストとしてのあるべき姿を伝える

大橋氏はユニークな経歴を持つ。理工学部から教育、社会学部の大学院修了後、複数の民間企業で社会調査・マーケティングデータなどの解析業務、臨床開発などに携わった。その後、アカデミックの世界へ戻って東京医科歯科大学で博士号を取り、2005年より東京医科歯科大学特任助教に就任。医学・生物・保健統計の教育方法論、統計的手法の適正化、および遺伝薬理学などの専門家として教鞭をとってきた。

民間企業での経験で、1つの哲学を得たという。たとえば、いくつかの民間企業では、あらかじめ用意された(=期待された)答えを裏付けるために統計学を使っているが、これは本末転倒である。サイエンティストとしては本来、答えのわからないことを科学的事実として検証するために統計を使わなければならない、というものだ。最初に結論ありきでは、どのような調査・研究でもそれは単なる「アリバイ作り」に過ぎない。そのような観点からも、講義では「リサーチや研究のリテラシー」を重要視する。

統計ソフトウェアにデータを投入し、何らかの処理を実行すれば結果は出るだろう。ただ、バックグラウンドで動くプログラムや処理するデータの構造、適用する手法、そして出力された数値の意味を理解していなければ、その結果を正しく使うことはできない。恣意的に結果を作り出すこと(=アリバイ作り)は、サイエンティスト(に限ったことではないが)としては最も避けなければならない。こうした、サイエンティストとしてのあるべき姿を学生に伝えるためのツールとして、大橋氏はプログラムベースのSASを選んだ。

「SAS Enterprise Guideのように、だれもが簡単に使えるGUIソフトウェアを入り口に統計学を学ぶことは否定しません。しかし、将来高度な分析を行うための礎を築くという意味では、オプションの付与一つにも統計的知識を要求される、SASプログラミングを行ったほうが、統計学をより早く、深く理解することができます。SASのソフトウェアは、分析・統計解析を行うために必要な機能が豊富に備わっており、その精度も実証済みです。FDA(米国食品医薬品局)や日本の医薬品医療機器総合機構がSASの使用を推奨していることも、SASの分析精度の高さを証明しています」(大橋氏)

このため、大橋氏は講義ではあえてSAS Enterprise Guideを使わず、最初からプログラムベースのSASを教える。プログラミングに初めて接する学生の戸惑いも見られるが、統計学の知識をあらかじめ得ているためか、いざ始めてみると意外にも抵抗なく使えるという。

SASを使うことで、統計学を学べる

大橋氏は、「統計学をきちんと理解してさえいれば、SASのプログラムは一般に考えられているほど難しくありません。そして、SASを使用すれば、プログラムを記述するための前提となる統計学の知識をさらに深められるのです。学生にとって本当に役に立つ講義を提供するために、SASは不可欠です」と話す。

たとえば、SASは統計手法の誤った適用や不適切な条件式に対して、エラーや警告を発してくれる。統計学の知識が不確かだと、オプションの付与にも困ることになるので、プログラムを書く段階で詰まってしまう。正しい知識を使ってSASに正しく指示を与え、正しい結果を得る。SASを使うことは統計学をより深く理解することにも通じるのだ。

SASを使った講義は、学生たちからも高い評価を得ている。実際、すでに単位を取得済みの学生がSASのソフトウェア実習を再度履修したいと講義に参加するケースもある。最近では学生たちがSASを学習するグループを自発的に立ち上げ、講義以外の時間にも大橋氏にアドバイスを求めているという。

大橋氏は、「論文を書くための前提条件は、何らかの事象に問題意識を持ち、それを証明するための仮説を立てられることです。その上でSASを利用することを含め、仮説を数字で実証する力が問われます。そして、自分が明らかにしたいものは何かといった問題意識を持つためには、知識が必要です。学生たちが自らの力でその問題を解決する道筋を作っていけるよう、正しい統計学を教えるのが私の使命だと考えています。また、民間企業では業務の効率化が求められておりますし、実際に必要なことであるとも思います。そういう場面でEnterprise Guideやその他GUI(Graphical User Interface:クリック主体)でカチカチやるだけで結果が求まるというのはもちろんアリだと思います。しかし、教育を目的とする大学においては、効率化を求めることは時に学生の問題解決能力の育成を阻害することになりかねません。便利過ぎて考える機会を失うというのでは、教育・研究機関としての役割を果たしていないのではと考えるわけです。その上で、常に問題意識を持って自ら考え、その解決策を創り出していくプロセスを習慣づければ、より豊かな生き方にもつながります」と話している。

Tokyo Medical and Dental University

課題

(研究テーマ)

  • 統計学

ソリューション

SAS® Academic Program – Campus Program

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