銀行組織の効果的な内部統制の実現をめざす

高度なリスク管理へのチャレンジ。 銀行組織の効果的な内部統制の実現をめざす

金融機関の安全性と健全性の確保を目指したリスク管理の国際的規制である Basel II。今回新たに、オペレーショナル・リスクというリスク管理対象が加わった。先進的計測手法の場合では2008年3月から実施されるこの規制に対応するため、中央三井トラスト・グループ(以下、中央三井TG)は、SAS® OpRisk Management を採用。Basel II という外部の規制対応とともに銀行の内部管理に積極的に取り組んでいる。

※自己資本に関する新しいバーゼル合意:新BIS規制

データ収集からレポーティングまで、ワンパッケージのソリューションが欲しいということで、SAS導入を決定しました。

三重鉄太郎氏
経営管理部 調査役

NEEDS

Basel IIと内部統制。オペレーショナル・リスク管理がカギを握る

金融機関のリスク計測・管理能力の強化を目的としたBasel IIでは、三つのリスクを統合的に管理することが求められている。まず、取引先の債務不履行により発生する損失のエクスポージャである「信用リスク」。次に、金融マーケットでの債券・株式などの価格変動や外国為替レートの変動を起因として、資産価値に影響を及ぼす「市場リスク」。そして今回、新たに加わった「オペレーショナル・リスク」である。

オペレーショナル・リスク管理では、事務手続きや不正行為による不適切な内部手続き上の事故、システムの不具合や不備、テロや地震など、外部の事象による直接的・間接的なリスクに対して計量化することが求められている。

中央三井TGでは、Basel IIの導入の機会をうまく活用しながら、業務ミスなどによるリスクを最小化し、内部管理に役立てようと取り組んでいる。

「信託業法改正などにより取り扱う商品が拡大化し、業務内容が多様化しています。また、アウトソーシングやアライアンスなどにより、業務リスクの範疇も大きくなり複雑化しています。オペレーショナル・リスクの一元的な管理は内部管理上、重要度を増しており、業務品質の向上によって、お客様の金融機関に対する厳しい目にも応えることが可能になると考えています」(米田純一氏)。

CHALLENGE

限られたリソースで最大の効果を。内部統制状況評価やリスクの計量化を実現するためにSASを選択

オペレーショナル・リスク管理では、金融機関の潜在的なリスクの状況と、関連する内部統制状況の評価を自らが行ない、外部に対してその根拠を証明しなければならない。スタッフの知識やスキルが一定のレベルに達しているか。ノウハウが共有化され、かつマニュアル化されているか。そしてデータへのアクセス制限が施され、セキュリティの備えが万全なのか。

このようなミスや不正を防ぐための内部統制状況を各部署で項目ごとにスコアリングするとともに、さまざまな金融機関で過去に起きた事務ミスや不正から引き起こされた損失データを収集し、自社で今後発生するかもしれない大規模な損失を見積る必要がある。

「組織の内部統制状況を踏まえて想定しうる損失を見積らなければなりませんが、この数値が恣意的なものではなく、客観性を持った枠組みにすることは、非常に難しいと思います」(米田氏)。

オペレーショナル・リスク管理をシステム化するにあたって、中央三井TGでは、最小限のリソースで最大限の効果を上げるため、自社開発ではなくパッケージ・ソリューションの導入を検討していた。オペレーショナル・リスク管理の計測を先進的計測手法(AMA)で実現すること。そして担当者の作業負担はなるべく軽く、日本の金融機関の実情を踏まえたサポートを受けられること。こうした要望に応えられたのがSASだったのである。

BENEFIT

さらなる最新リスクに対応。金融リスク管理のベストプラクティスへ。

リスク計量化のためのVaR(Value at Risk)計算エンジン。そこに内部統制状況評価や潜在的リスク状況から導かれたシナリオデータ、社内の損失データや外部機関の損失データを用い、リスク量計算を実行し、その結果をビジュアル化する。こうした一連のプロセスをSAS OpRisk Managementは提供している。

「データ収集からレポーティングまで、ワンパッケージのソリューションが欲しいということで、SAS導入を決定しました。内部統制状況を視覚化し、部署間で比較する。これにより各業務所管部門は、自分の部署のどこが弱点なのかを知り、計量化に向けてどのようなシナリオを立てる必要があるのかを明確にすると同時に、今後とるべき対応方法など、体制整備に活用できるようになったのです」(三重鉄太郎氏)。

その結果、中央三井TGでは、自社開発した場合のシステム維持や要員などに関わるコストを抑えつつ、Basel IIへの対応と内部管理の実現を視野に入れるに至っている。内部統制状況評価の客観的な運用が担保されるので、外部へ説明しやすくなった、とも言う。さらに、情報漏洩や偽造キャッシュカード、アンチマネーロンダリングなど最新情勢を踏まえたリスクシナリオへの対応が求められている。

「銀行のリスク管理には、お客様や社会の要請、そして当局の見方など、銀行を取り巻く環境を色濃く反映する必要があります。ですからSASには、時代に即したアップデートを期待しています」(米田氏)。


PRODUCTS & SOLUTIONS
~ 金融機関全体のオペレーショナル・リスクを管理するSAS® OpRisk Management

現在、金融業界でホットなトピックである、Basel II におけるオペレーショナル・リスク管理。多くの金融機関では、各部署間のデータ不一致や矛盾が発生し、より複雑化するリスクを把握できていないのが実情です。SAS は、こうした金融機関のオペレーショナル・リスクに対し、真に実効性のある内部統制環境を実現するためのソリューションとして、SAS OpRisk Managementを提供します。オペレーショナル・リスク管理に関する情報収集からレポーティングまでウェブベースで実行可能な「SAS OpRisk Monitor」。VaR計算システムである「SAS OpRisk VaR」。1万件にものぼる外部損失データを含む包括的なデータベースである「SAS OpRisk Global Data」。これらのコンポーネントにより、SAS OpRisk Managementは、次のメリットを金融機関にもたらします。

  1. リスク要因や相関関係を捉えるフレームワーク
  2. リスクの程度や企業全体に与える影響の評価
  3. 内部統制状況改善を通じ、資本整備の最適化
  4. 外部/内部損失データベースの統合
  5. カスタムレポートなどによる情報共有
  6. レポート結果を導くソースやロジックを視覚化
  7. 国内外の規制への準拠
Chuo Mitsui Trust Group

左から三井トラスト・ホールディングス(現・中央三井トラスト・ホールディングス)
経営管理部 部長 若狭保弘氏
経営管理部 調査役 枝元裕二氏
経営管理部 調査役 三重鉄太郎氏
経営管理部 調査役 中沖秀樹氏
経営管理部 次長 米田純一氏
(部署名、役職名:2005年取材当時)

課題

外部規制対応(Basel II)と、銀行の内部管理へのパラレルな取り組み

ソリューション

SAS® OpRisk Managementにより、規制に準拠した効率的な業務フローの迅速な構築が可能

利点

金融リスク管理システムの維持や要因などに関わるTCOを大幅に削減し、Basel II への対応と内部管理を実現

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