株式会社ジャックス

統計手法を活用し、プロモーション品質の向上と効率化を実現
マーケティングオートメーションの導入により、さらなるマーケティングの高度化を目指す

株式会社ジャックス(以下、ジャックス)は、マーケティングの強化に取り組んでいる。作業時間の短縮からプロモーション品質の向上を目指してデータウェアハウスを刷新。同時にSASを導入し、高速にデータ抽出できる基盤を整えた。統計手法を用いた結果の検証や分析も始まり、成果が見え始めた今、さらなる飛躍を図り、マーケティング自動化の仕組みを構築しようとしている。

我々のマーケティング高度化への取り組みは、キャンペーンターゲット抽出の効率化からスタートし、分析力強化により、量だけでなく質の向上を図ることができるまでに着実に成果を積み重ねてきました。この取り組みは、『日本を代表する先進的なコンシューマーファイナンスカンパニー』を目指す当社の新中期経営計画の中核的な施策として位置づけられ、カード事業の収益拡大に貢献していくことが期待されています

山田 仁氏
株式会社ジャックス 営業戦略本部 カード企画部 カードプロモーション課 課長

マーケティング力の強化に伴い、急増するキャンペーン対応への挑戦

ジャックスは、640万人以上のカード会員を擁する「ジャックスカード」で知られる、日本を代表するコンシューマーファイナンスカンパニーだ。カード事業、クレジット事業、ファイナンス事業、ペイメント事業を中核に、プリペイドカードなど新規事業にも積極的に進出し、ベトナムやインドネシアへの海外展開も加速している。
同社が、コンシューマーファイナンスカンパニーとしてさらなる飛躍を遂げるための収益基盤と位置づけているのがマーケティングの高度化だ。2004年にはマーケティング・チームを発足。現行システムの前身となるデータウェアハウスと統計解析ツールを導入した。
当初キャンペーンの数は限られていたが、状況は変わる。結果を出すためキャンペーンの数をこなさざるを得ず、少ない人員で年間300ものキャンペーンを実施する必要に迫られたのである。
時間との戦いが始まると、システムの弱さが浮き彫りになってきた。
データウェアハウスのパフォーマンスは十分ではなく、キャンペーン対象を抽出するだけでかなりの時間を奪われた。SAS導入以前の統計解析ツールは、結果を集計するだけで、分析を行うところまで能力を発揮できなかった。さらに、数多くのキャンペーンを行っていると反応率も下がってしまう。
量をこなすのに精一杯な状況が続いていたことに危機感を感じた同社は、抽出のパフォーマンスを高めるためのデータウェアハウス基盤の更改と、キャンペーンの質を高めることを目指したSASの分析ツールの導入を決断する。SAS選定の決め手になったのは、単にデータ抽出のスピードを高めるだけでなく、将来的に、マーケティングオートメーションの実現まで可能な点だった。

ターゲット抽出のスピード化を実現、PDCAサイクルを回し、質の追究へ

同社 営業戦略本部 カード企画部 カードプロモーション課 課長 山田 仁氏は、「お客様に利用いただく金額が伸びる一方、少子化の影響で新規入会会員が限られてくることは見えていました。そのため、お客様から選ばれるカードビジネスを展開するには、ご入会時から個々のお客様に対し、最適なオファーを最適なタイミングで実施できるマーケティングシステムが必要であると考えたのです」と話す。

2011年、マーケティング・チームはカードプロモーション課となり、キャンペーンの量と共に質を高めることに本腰を入れることになる。2013年3月にSASは稼働開始し、以前のシステムとの整合性を検証しながら、9月に全面展開された。

分析のフロントに使うのは、エンドユーザー向けに実践的な分析環境を提供する「SAS® Enterprise Guide」だ。事前にトレーニングを受け、使いながら操作を覚えていく。情報システム部門の協力も得て、操作マニュアルを準備してもらうなど、17名のスタッフは、比較的すんなりSASになじむことができたという。
同社 エキスパートマスター 田中 梨詠氏は、「SAS Enterprise Guideは扱いやすく、実際に操作しながらすぐに慣れることができました。営業部門などから数字が欲しいと言われた際に、以前なら数日かかっていたデータ抽出作業を迅速に行えるようになったのには非常に助かりました」と話す。
さらなるレベルアップも期待される。同社 エキスパートマスター石井 淳氏は、「以前は1日がかりだった作業が1時間で終わるようになったが、さらなる効率化を図ることで、それを10分にできる部分も多いはず。使いこなすレベルを底上げすると共に、スタッフ全員が統計手法を活用した分析の考え方を身につけ、実行できるところまで持って行きたい」と話している。
データ抽出にかかる時間は大幅に減った。データ作りに要していた時間は体感的に半減したという。そのため、空いた時間を結果検証に充てられるようになった。統計的手法も取り入れ、徐々に高度な分析を行えるようになってきたのだ。

統計解析手法の一つであるロジスティック回帰分析も取り入れた。たとえば、アウトバウンドコール対象抽出のためのセグメント条件が60分類にも上っていた中、回帰分析によりスコアリング、選別した結果、最終的に7分類にまで集約することができた。その7分類の条件で抽出した対象に見込み率を掛け合わせ、それぞれに最適なコールを実施した結果、優良なリストが枯渇していく中で反応率の向上に成功した。
東京と大阪にあるカスタマーセンターに設置されているアウトバウンド部門の士気は高まり、検証結果を踏まえて、カードプロモーション課と共に、次なる施策を前向きに討議できるようになった。

カードプロモーション高度化によるカード事業の収益拡大に向けて

SAS導入による効率化や分析環境の基盤も整い、施策の質も改善されてきた。また、スタッフのスキルアップも進むなど、着実に成果を積み重ねつつある。マーケティング強化の土台となるこれらの施策を継続・改善しながら、同社は次のステップへと踏み出そうとしている。2015年春に導入を決定した「SAS® Marketing Automation」によるマーケティングの自動化だ。
同社 スタッフマネジャー 金山 二郎氏は、「数多くのクレジットカード会社の中から、我々を選んでいただいたお客様に、より有益な情報を提供するにあたって、オファーするタイミングは重要です。そのため、個々のお客様の行動を迅速に把握し、最適なタイミングで最適なオファーを出すイベント・ベースド・マーケティング(EBM)のアプローチを取り入れようと考えました。システム選定の際には、SAS Enterprise Guide、SAS Enterprise MinerなどSASの既存資産をシームレスに統合・活用できる点に加えて、担当者にとっての使いやすさが決め手となりました」と話す。

稼働は2015年秋を予定している。提携カードやカードローンの新規入会者毎の初回利用促進のオファーなど、これまで手作業で行っていた部分を自動化すると共に、EBMの手法を取り入れ、様々なプロモーションを人手を介さずに展開するところまで視野に入れている。また、複数チャネルにわたり統合的に施策を行うオムニチャネル連携に向けた取り組みも含め、様々なコミュニケーションチャネルを駆使しながら、お客様に最適なサービスを最適なタイミングで提案できるようになることを目指している。
2015年4月より、同社の新中期経営計画がスタートする。そのような中、マーケティング力の強化は、「日本を代表する先進的なコンシューマーファイナンスカンパニー」を標榜する同社の重要なテーマである。その中核に位置づけられた同社のカード事業とSASにかけられる期待は大きい。

文中記載のご担当者の所属部門、お役職は2015年3月時点のものです。

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課題

データ抽出のパフォーマンスとキャンペーンの質を高めるだけでなく、マーケティングオートメーションも実現可能な分析基盤が必要であった

ソリューション

利点

データ抽出・作成にかかる時間を大幅に短縮し、空いた時間を結果検証に充てられるようになった。分析結果をもとに最適なキャンペーン施策を展開し、反応率を高めることにも成功している。

関連資料