福岡大学

仮説を立て数字で検証する。SASでデータ分析に親しんだ学生を育成

福岡大学では、2010年の情報システム刷新に伴い、SASの教育機関向けライセンス「SAS® Academic Program」を全学的に導入し、全学部の教職員および学生がSASソフトウェアを活用できる環境にある。商学部では、データ分析に親しんだ学生を育成するという教育方針の下、実践的な調査・分析を行うマーケティング・リサーチの講義をSASを使って実施している。


lecture in a Fukuoka University

「なぜデータを分析するのか」を理解してもらう

福岡大学は、9学部31学科に約2万人の学生が学ぶ総合大学である。教育研究の理念に掲げる「3つの共存」を図ることによって真理と自由を追求し、自発的で創造性豊かな人間を育成し、社会の発展に寄与することを使命とする。3つの共存とは、「人材教育(Specialist)」と「人間教育(Generalist)」の共存、「学部教育(Faculty)」と「総合教育(University)」の共存、および「地域性(Regionalism)」と「国際性(Globalism)」の共存を指す。

福岡大学は戦前に設立された福岡高等商業学校を母体とするため、最も伝統のある学部が商学部だ。商学部 准教授 杉本 宏幸氏は、日本における卸売業と小売業との関係性を研究している。小規模な小売業者が高品質なサービスを提供できる背景には、卸売業者の手厚いサポートがあるためではないか、という卸の特性に着目したユニークな仮説が特色。研究にはSASを活用し、流通に関するさまざまなデータを分析する。一方、ゼミや講義では、オーソドックスなマーケティング戦略を軸に置く。

杉本氏は、「私の研究について学生が興味を持てば、一定の範囲で話すこともあります。ただ、学生にとっては、自分たちの仮説を数字できちんと実証する思考プロセスを習慣づけることが大切ですから、テーマに関わらず、データの分析を通じて何を明らかにしたいのか、という仮説検証のロジックを身につけてもらうことを最重要視しています」と話す。

ゼミでは、世の中で話題になった事柄を扱うことも多い。たとえば最近では、特定保健用食品の認可を受けたコーラ飲料に関する研究を行った。コーラと特保というある意味矛盾した2つの側面を持つこの商品の本当のターゲット層はだれか、という疑問を出発点に、その実証をリサーチによって進めるスタイルだ。

学生にとっては情報の視覚化が最も大切

杉本氏の教育手法は、ゼミと講義を通じて一貫している。マーケティング・リサーチにおいて、最初に行うのは仮説を立てること。そして、まずは「調査とは何か」をテーマに講義し、質問票を作る。その後、アンケートデータを集め、それを分析し、何らかの答えを導く。

「集められたデータには、すでにそれ自体に何らかの仮説が入っているといえます。いわゆるビッグデータを扱うようになると違ってくるのでしょうが、講義で扱うのはリサーチデータです。仮説を確かめるためにマーケティング・リサーチを行うというスタイルで講義を進めます。データがあふれる時代だからこそ、仮説が重要なのです」(杉本氏)

利用するデータは、学生がキャンパス内で取ったアンケートが中心。それに加えて、過去のアンケートデータなども利用する。そうして集めたデータは、表計算ソフトやデータ分析ソフトを使ってビジュアル化する。主に利用しているのは、SAS® Enterprise Guide®である。

杉本氏は、「データに親しんでもらうことに重きを置くと、分析ソフトは手軽に使えるソフトウェアであることが大前提です。難しい手法を使って深く分析する良さもありますが、まずデータをプロットして、さまざまな方法で見て、解釈する、という基礎中の基礎を学生に学んでもらいたいと考えたところ、SAS Enterprise Guideがぴったりでした」と話す。

プロットを通し、多次元グラフをさまざまな角度から眺めることで、2次元では見えなかったデータの実像が細かなところまで見えるようになる。学生は、マウスを使ってグラフを回して360度の視点で眺めたり、色を変えたりしながら、さまざまな集計水準で事象をつかむ。表計算ソフトが実現できるレベルを超えたSAS Enterprise Guideの視覚化機能により、学生はデータを直感的に理解できるようになる。

ゼミと講義を組み合わせ、より実践的な分析を

現在の杉本氏には、福岡大学 就職・進路支援センターの商学部における責任者としての顔もある。福岡では通信販売業が盛んであるため、マーケティング・リサーチの講義が就職後に役立つシーンも多そうだ。

杉本氏は、「就職してすぐにマーケティング部門に行く学生は多くないかもしれません。ただ、学生時代にSASを使ったデータの分析に触れておくことは、マーケティング・リサーチの仕事をするしないにかかわらず、入社後6~7年して責任のある立場になったときに、必ず役に立ちますから」と話す。

学生に伝えたいのは、分析するための視点を作ること、そして分析した後のデータを読み解く目を持つことの2つ。これらは、マーケティング・リサーチの講義だけでなく、あらゆる科目に共通する重要な要素だ。

そこで杉本氏は、ゼミの学生が研究するテーマを、マーケティング・リサーチの講義の中で進めるように提案している。ゼミ生以外の学生にも、研究したいテーマや実施中のプロジェクトがあれば、マーケティング・リサーチの講義で検証することができると声をかけるようになった。学生からの反応もいいようだ。既に単位を取得済みの学生が、もう一度SASを使ってマーケティング・リサーチに取り組みたいという理由で、単位に関係なく講義に参加してくるケースもあった。

自主的な研究に講義を使ってもらうというやり方をさらに進めれば、科目間連携につながる。杉本氏は、他の教職員達と協議して、進めているプロジェクトをマーケティング・リサーチの講義で検証する仕組みができないかと模索している。学科によって異なるスケジュールや講義の制限人数など、数々の課題はあるが、教育プログラムの見直しを含めて、新しい教育のあり方を模索している。

「いまの学生は、腑に落ちないと前に進まない傾向があるようです。それは、しっかりとした仮説を持たないと分析はいつまでも終わらない、ということにつながります。仮説を立てるための前段階にうまく学生を導くことが理想。講義は厳しいかもしれませんが、学生にとって役に立つ教育プログラムを確立させたいと考えています」(杉本氏)


Fukuoka University
写真 : 商学部 准教授 杉本 宏幸氏

課題

(研究テーマ)

  • 卸売業者を中心とした流通サービス
  • マーケティング・リサーチ

ソリューション

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