Nestlé

新鮮な商品の店頭在庫を切らさない方法

Nestlé社、正確な予測によって、顧客サービスの最適化、過剰在庫の最小化、および効果的なマーケティングの基盤構築を実現

Nestlé社の生産ラインから出荷される商品は1日あたり10億個にも及ぶ。これは、文字通り世界最大の食品会社における生産量の大きさを如実に示す数字だ。「Good Food, Good Life(グッドフード、グッドライフ)」というスローガンのもと、より美味しく健康的な食品と飲料で消費者の暮らしを豊かにすることを目標にさまざまな商品を投入してきた結果、Nestlé社の品揃えは今や1万種類に達している。

適量の商品が店頭に、さらには消費者の手に確実に届くようにするため、同社は予測分析を活用している。結局のところ、どれほど優れたマーケティング・プロモーションを展開しても、お気に入りの食品を目当てに来店したのに棚が空っぽでは、逆効果にしかならない。

サプライチェーン管理を緻密に管理し、在庫レベルを厳しい条件で維持しようとするNestlé社の取り組みが、その事業規模を反映したものであることは言うまでもない。同社の絶大な規模ゆえに、グローバルレベルでの計画は極めて複雑な作業だ。商品カテゴリー、販売地域、おびただしい数の関連部門が複雑なクモの巣のように絡み合う。

また、食品・飲料業界に特有の事情によって、事業計画はさらに困難さを増す。季節の影響、天候に左右される原材料の収穫量、需要の変動、他の小売業界の動向といった要因のほか、傷みやすい商品を数多く取り扱うという事情も手伝い、この業界における生産計画や物流手配は難度が高いのだ。

今では、顧客データの階層構造を自在にドリルタウンして詳細を調べることができ、プロモーションや特別オファーの効果を別の統計モデルに取り込んで分析することも可能です。

マルセル・バウムガルトナー(Marcel Baumgartner)氏
グローバル需要計画パフォーマンスおよび統計予測部門の責任者

拮抗するKPI間の板挟み

「当社では、サプライチェーン管理は業務フローおよび業務プロセスの形で確立されたものになっています」と説明するのは、Nestlé本社でグローバル需要計画パフォーマンスおよび統計予測部門を率いるマルセル・バウムガルトナー(Marcel Baumgartner)氏だ。「専門の担当者たちが輸送網に目を配り、倉庫を効率的に管理しながら、顧客対応の最初の窓口にもなります。特に重視している領域は計画、厳密には需給計画です」

同氏によると、需給計画プロセスでは、顧客サービスレベルおよび在庫レベルという2つの重要な指標にもとづいて調整が行われる。納期内に完了した納入の割合(%)として定義される顧客サービスレベルは、在庫を拡充すれば向上できる。しかし、在庫レベルの上昇は資本の固定化につながり、保管スペースの確保が難しい場合も多い。また商品の鮮度も問題となる。

この業界では、単価の抑制と品質の確保を両立させ、原材料の大量仕入メリットを活かすために、非常に大規模なロットで商品を生産するのが一般的だ。こうしたいわゆる「見込み生産」戦略は、同じ製造業でも自動車業界などで多く見られる「受注生産」方式とは対照的である。「適切な商品を適切な場所に、適切なタイミングと数量で配置するためには、顧客からの受注をできるだけ正確に予測できる能力が極めて重要になります」(バウムガルトナー氏、以下同様)

もちろん予算や販売目標など、他のビジネス指標も重要だ。同氏によれば、最も重要な目標は「結果の後追いではなくプロアクティブ(能動的)に指標を把握」できることだという。Nestlé社ではこれを実現するために、業務プロセス間の緻密な連携、顧客とのコラボレーションの強化、適切な予測手法の活用を重視している。

統計と直感

予測を立てる方法には大きく2つの選択肢がある。主観的な方法では、主として計画担当者が培ってきた経験にもとづく推定や査定を通して、将来の動向を予測する。統計的な方法では、データを用いて予測対象の問題にアプローチする。

SAS導入前のNestlé社では、SAP Advanced Planning and Optimization(SAP APO)の予測機能をベースにして、APOに組み込まれたオープンソースの統計ソフトウェア「R」で作成したモデルを組み合わせて使用していた。ただし、得られた予測結果に対して、同社の需要計画担当者が必要に応じて手を入れていたという。この環境をより強化するために導入されたのがSASであり、SAP APOに対する完璧な補完が実現した。

統計予測は、十分な履歴データを利用できるほど信頼性が高まる傾向がある。「しかし、分かってきたことが1つあります。それは、過去を見ているだけでは統計情報から将来を予見することはできない、ということです。この点は、どれほどモデルが複雑でも同じです」

つまり、バウムガルトナー氏の部署にとっての課題は統計手法そのものではない。同社の複雑な環境において重要なのは、予測の信頼性を評価する手段がある、ということだ。この観点から最も注目することになった2つの要素が、変動性への対応方法、そしてSASだった。

「特定の商品の需要をどれだけ正確に予測できるかは、その商品の需要の変動性に大きく依存します。特に、需要の変動幅が大きい商品の場合は、予測手法の選択と組み合わせが非常に重要となります。SAS® Forecast Serverは、このタスクを驚くほど簡単にしてくれます」

Nestlé社が需要予測に関して特に重視しているのは、いわゆる「マッドブル(猛牛)」だ。これは、大量で変動性の高い商品を意味する同社独自の用語である。マッドブルとは、例えば「Nescafé(ネスカフェ)」のように平常時は1年を通じてほぼ安定して売れる商品であると同時に、販促キャンペーンの効果が現れやすく一気に販売量が増大する商品のことを指している。こうした予測可能性の低い品目について需要予測を作成する場合には、単純な統計計算はあまり役に立たず、需要計画担当者の経験に遠く及ばない。唯一の解決方法は、履歴データに対し、過去の変動状況を説明する注釈を加えておくことだ。バウムガルトナー氏の部署では、この目的に役立つ指標として「予測付加価値(FVA, Forecast Value Added)」という手法を活用している。FVAは、予測プロセスの各ステップが予測エラーの軽減または増加にどの程度関与するかを数値化する指標だ。

知識が増えれば推測はおのずと減る

バウムガルトナー氏によれば、SAS Forecast Serverはこのシナリオに理想的なツールだ。拡張性に優れたソリューションであるため、少数の専門家で幅広い地域をカバーすることができる。また、適切な統計モデルの選択がほぼ自動化されることは、SAS Forecast Serverの最も強力な機能のひとつだという。

「それと同時に、今では、顧客データの階層構造を自在にドリルタウンして詳細を調べることができ、プロモーションや特別オファーの効果を別の統計モデルに取り込んで分析することも可能です」

このシステムの予測結果は将来を明確に描き出す。旧来の予測方法と現行のSAS Forecast Serverのプロシジャ(ほとんどの場合はデフォルト設定を使用)による予測結果を比較すると、現行のSASを用いたシステムでは、ポートフォリオの予測可能な部分について予実が一致、または実績が予測を上回ることが多くなっており、その結果、需要計画担当者がマッドブルに集中する時間が増えているという。

最後に重要な点をもう1つ。それは、SAS Forecast Serverのように高度なシステムであっても熟練した需要計画担当者の代わりにはなりえないと、Nestlé社が強調していることだ。「特にマッドブルに関しては、ビジネスの事情に通じ、高度な信頼性、経験、知識を備えていることが鍵となります」。そのため、予測プロセスが複雑な商品に取り組む時間が増えるほど、計画担当者は生産に関する意思決定の的確性を高めることができる。そして、どれほど猛暑の夏が到来したとしても、ビーチでNestlé製のアイスクリームが品切れになる事態を避けることが可能になる、というわけだ。

課題

適量の商品が店頭に、さらには消費者の手に確実に届くようにするため、幅広い影響や要因にもとづいてサプライチェーン管理、生産計画、物流手配をグローバル規模で行う必要があった。

ソリューション

利点

信頼性の高い予測手法によって担当者の時間が解放され、変動性の高い商品の需要計画に集中できるようになった。生産に関する意思決定の的確性が向上したことで、顧客の期待を裏切らない供給体制を構築することができた。

Nestléについて

世界最大の食品会社。86ヶ国の469拠点に33万人以上の従業員を擁し、年間売上高は900億スイスフラン(約9兆5,000億円)を超える。この数字に象徴される販売力と莫大な利益により、グローバル市場のリーダーとして君臨している。

本記事に掲載された導入効果は、各企業によって異なる状況やビジネスモデル、入力データ、業務環境に固有のものです。SASの紹介する顧客体験は、各企業に固有のものであり、業務面や技術面の背景もそれぞれ異なるため、各事例に掲載されたあらゆる証言は、導入の典型例を示すものではありません。導入にともなう金銭的効果、導入結果、ソリューションのパフォーマンスなどの特徴は、個別の顧客による機器構成や機器のコンディションに著しく左右されるものです。本事例は、すべてのSASの顧客が当該事例と同じ導入効果を得られるとするものではなく、そうした効果を保証するものでもありません。SAS製品および提供サービスの保証内容は、各製品・サービス向けに発行された保証書に記載された内容に限られます。したがって、本事例に掲載された内容は、それらの保証内容になんら補足するものではありません。事例に掲載された顧客は、各事例をSASとの契約にもとづいて提供しているか、SAS発行のソフトウェアの導入成功にともなう体験を要約しているにすぎません。

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