株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ

大量データのマイニングにより顧客行動を数理モデル化する

※本記事の内容は、2007年3月現在(本記事作成当時)のものです。

携帯電話業界最大手の株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(以下、NTTドコモ)では、成熟化した市場において収益拡大を図るために、既存顧客の維持とその利用拡大を重視している。これを実現するためにSASの高度な分析環境とデータ統合ソリューションを導入。顧客行動を数理モデル化し、定量的な予測に基づいた施策を実施することによって、ますます業績を向上させている。

飽和する市場で求められる顧客の維持と利用拡大

通話中心のインフラから、決済機能を搭載した生活インフラへと変貌している携帯電話。端末の売上が飽和状態にあり、新規顧客の獲得が鈍化している現在、NTTドコモでは既存顧客を維持し、顧客の利用拡大を促す施策を行なっている。顧客の離反や利用拡大の動機は個々の事情により異なるため、行動を予測した上で先手を打つことが効果的である。限られたデータから顧客の行動を予測するには、高度な分析を実現するデータマイニングが不可欠であった。


マーケティング施策を打つ前に、成果を定量的に把握できます。あとは経営判断を仰ぐだけです。

久保田 明 氏
株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ 情報システム部 情報戦略担当部長

施策実施前にROIを算出し 換算で99億円の収益を実現

NTTドコモでは、2000年にデータマイニング技術を導入。さらに、2003年、こうした高度な分析やデータ活用を全社横断的に推進する組織であるビジネス・インテリジェンス・コンピテンシー・センター(BICC)を設置、顧客ニーズを予測する数理モデルの活用を全社的に展開した。これにより、顧客ニーズに対応して顧客満足度を向上させるには、どのようなレコメンデーションを行なえば良いのかといった、さまざまな施策を実行している。

「因果関係を定量的につかんでいるので、施策の費用対効果をあらかじめ計算できます。このため、関係者の意識合わせも容易であり、迅速な対応が可能です」(久保田氏)。

NTTドコモの2005年度の解約率は、通常の事業者が2~3%で優良と言われる中、0.24 %減少し0.77%となった。仮に、5,000万人の顧客のうち0.24%が一人当たり月に6,900円利用すれば、年間99億円を失わずに済んだという試算になるのだ。

データマイニングで、顧客行動を予測し、先手を打つ

このような効果をもたらした NTTドコモのデータマイニングとは、実際に何を行なっているのだろうか。たとえば「解約率を低減する」といったテーマを設定した場合、適切な打ち手を考え、効果を検証していく。まず、ビジネス部門の担当者が「このような人が解約しやすいだろう」といった仮説を百数十個作成する。それを受けて、DWHからデータを取得して加工した後、仮説に必要なパラメータを作成する。その数は数百から数千個にも上る。その後、数理モデルを構築し、そのモデルが解約する人を予測するのに適しているか精度を検証するというような、仮説検証のサイクルを繰り返していく。

数理モデルを利用することで、解約低減の施策に対する費用対効果を推定し、解約に先回りするタイムリーな施策が可能となる。また、仮説検証サイクルを繰り返すことで、因果関係モデルの精度をさらに高められるのである。この検証サイクルを繰り返すには、大量データを高速で分析できる自由度の高いデータマイニング環境が必要であった。

SAS により、データマイニングと大量データ統合環境を構築

「1999年当時、数社を比較検討した結果、SAS® Enterprise Miner™を採用しました。高価なRDBMSを導入することなく、SASだけでデータマイニング専用サーバーを構築できるのがその決め手でした。また、UNIXサーバー上に構築できるという条件も満たしていたのです」(久保田氏)。

同社では、パラメータを大量につくるため、データ取得や加工、分析などの一連の作業が膨大になる。そこで2005年、SAS Data Integration Serverを導入し、データ統合作業をGUI化、スケジューリング化することによって効率化させたのである。

「今では、200TBのDWHに蓄積されたユーザー約5,000万人分の履歴データを抽出・加工する段階から、データ集計・データマイニングによる分析作業に至るまでを、SASのプラットフォーム上で行なっています」(久保田氏)。

変化が激しい市場では、数理モデルの寿命は長くはない。同社では、DWHからのデータ取得、パラメータ作成やモデル作成といった数理モデル構築の段階のみならず、モデルの精度検証やスコアリングといったモデルのメンテナンスのプロセスまでをも自動化している。ビジネス部門が必要な時には、直ちに利用できるようにしているのだ。

大量データ分析で顧客理解を深め、さらなる顧客満足度の獲得へ

今後は、ますます高速帯域化・ユビキタス化していくモバイル事業や、国内から海外へと拡大していくビジネス環境への対応も視野に入れ、データマイニング専用サーバーの拡充が図られている。

「SASの多くの分析手法を駆使することで、数百個規模の数理モデルを活用するなど、今後は分析対象をさらに拡大し、多くの業務へ適用することでお客様をより深く理解し、顧客満足度のさらなる向上に努めていきたいと思います」(久保田氏)。

NTT DOCOMO
情報システム部 情報戦略担当部長 久保田 明氏 (2007年3月当時)

課題

携帯電話の顧客の離反防止や利用拡大を図る先手を打つため、顧客行動を予測する。

ソリューション

SAS® Enterprise Miner™、SAS Data Integration Serverにより、200テラバイト(TB)、約5,000万人分の履歴データのETLプロセスおよびデータマイニングによる高度な分析を実現。

利点

顧客ニーズを予測する数理モデルの構築により、携帯電話の解約率を前年度比0.24%減少。

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