株式会社せーの

商品割引率と店舗投入スタッフの配置を最適化し、
売上増とコスト削減を実現SASによる分析結果を最適な意思決定の根拠に

株式会社せーの(以下、せーの)は、卸売から製造小売りへの業態転換を進める中で、実店舗と仮想店舗の在庫を一元管理できる仕組みと新たな顧客会員基盤を構築。日々の業務で蓄積されるデータから最適な意思決定に役立つ洞察を得ることが必要と判断し、多様な分析ニーズに対応できるSASを導入した。結果、同社は商品割引率の最適化や店舗スタッフのシフト最適化を実現し、売上の増大と大幅なコスト削減を達成している。さらに緻密な需要予測にもとづいて各店舗の在庫量を最適化する分析モデルの実装にも取り組んでいる。

 

在庫最適化と来店客との関係強化を推進

せーのは、メンズアパレルブランドのVANQUISHを中心に、MURDER LICENSE、Varosh、LEGENDA、HEADL_INER、VCTO、3rd by VANQUISH、gonoturnの8ブランドを展開するアパレルメーカーだ。2006年春、渋谷109MEN'Sに1号店をオープンしたのを皮切りに、東京、名古屋、大阪、福岡をはじめとするファッションビルに直営店21店舗を展開。6つのオンラインショップも運営する。

アパレル製品の卸売業からスタートした同社は、在庫リスクを負わない卸売事業を中心にビジネスを展開してきた。メインブランドVANQUISHの売上が急速に拡大した局面で、直営1号店を渋谷109MEN'Sに出店後、多店舗化を推進し、自社ブランド商品の企画から製造発注、物流、プロモーション、販売までを一貫して行う製造小売業へと業態を発展させた。一方で、新しいビジネスモデルに対応できる在庫管理の仕組みを備えていないという大きな課題に直面することになった。同社 取締役 井谷 大也氏は、「店舗が増えるにつれ、需要予測にもとづく各店舗の在庫最適化や、売り場の鮮度を保つ商品コントロールが難しくなってきたのです」と語る。

顧客管理の面では、来店客の顧客リスト作成など情報収集を行っていた。しかし、せっかくの情報をうまく管理・活用できないことも悩みの種であった。たとえば、各店舗で管理していた顧客リストにダイレクトメールを送っても、その成果を定量的に把握することはできなかった。こうしたことから、顧客属性や購入履歴などをもとに顧客をグループ化しプロモーションを行うなど、顧客とのコミュニケーションを最適化する仕組みを早期に構築する必要があった。

そこで同社は、2012年春、業務改革プロジェクトを立ち上げた。井谷氏を中心に議論を重ねた中で導かれた結論は、実店舗と仮想店舗の在庫量を適切にコントロールすること、そして実店舗に来店してくれる顧客との関係性を強化することが、競争の激しい市場を勝ち抜く重要な要素になるということだった。さらに、店舗管理や在庫管理を含めたすべての業務を改善するためには、業務情報基盤と強力な分析ソリューションが必要という認識で社内が一致した。

緻密な需要予測から各店舗の適正在庫量を導く

最初に取り組んだのは、在庫管理システムと顧客会員基盤の構築だ。在庫管理システムでは、21の実店舗と6つのオンラインショップの在庫を一元管理できる環境を整えた。顧客会員基盤は、住所、氏名、性別、年齢、電話番号、メールアドレスなどの顧客属性や購買履歴、ポイントなどの情報を統合的に管理できる仕様にした。実店舗と仮想店舗のポイント会員サービス「Cメンバーズ」において、実店舗と仮想店舗のどちらで商品を購入しても共通のポイントを付与する仕組みとして結実させた。

井谷氏は、「ポイントプログラム設計の要は、実店舗と仮想店舗のポイント共通化、カードレスに加え、店頭での高い会員化率を実現するスキームを組み込むことです。具体的には、お客様が店頭スタッフに電話番号を伝えるだけで仮会員登録を完了できる独自の仕組みを構築しました。お客様との関係が深くなるに従い、顧客IDとする電話番号にひも付いて住所、氏名、メールアドレスなどの情報が蓄積される仕掛けです」と話す。

また2012年12月、従来の卸売事業向けの基幹システムとは別建てで、小売りの販売・在庫管理システムと顧客会員基盤を稼働させた。日々の業務で得られる情報を蓄積することで、ようやく分析への道筋が見えてきた。数あるBIツールを検討したものの、可視化にとどまらない多様な分析ニーズに対応できるSASの導入を決定。井谷氏は、「SASのサポートのおかげで導入は円滑に進みました。SASのエキスパートが、データの取り込み方や基本的なデータ加工の方法、データモデルの作り方を丁寧に教えてくれました」と語る。

体感で数千万円程度の効果を得た

せーのは2013年7月より、SASを使った分析結果をもとに、本部主導で意思決定を行うプロセスを回している。最大の成果は、セールなどのイベントで商品の割引率の最適化を進められたことだ。井谷氏は、「これまではデータの分析も浅く、また現場スタッフの経験や勘に頼って、30%オフ、50%オフなど大雑把な割引率の設定がなされていました。過去の実績データに基づく、アイテムごとの売れ行きの評価が不十分なうえ、一律の割引率を適用してきたため、中には値下げしなくても売れた商品、もっと値引きしなければならなかった商品もあったはずです。そこで、年末のセールでは商品カテゴリごとに価格弾力性を求めるモデルを作成し、割引率と購入率の相関を把握して最適な割引率を算出できるようにしました。体感ですが数千万円程度の改善効果はあったはずです」と語る。

店舗スタッフのシフトを適正化できたことも大きな成果だ。これまではピーク時の作業量に合わせてシフトを組んできたため、時間帯によっては無駄な人件費が発生していた。そこで、店舗、曜日、時間帯別の購入客数の実績データをもとに顧客の来店傾向を割り出し、スタッフ数を適正化するシフトを作成。
接客レベルを低下させることなく、店舗の人件費を約20%抑えることができた。

井谷氏は、「高精度な分析を行うためには、データの品質を確保することが不可欠です。たとえば、セールの売れ行きが不調だったケースを想像してください。その原因がセールを告知するPOPの未設置、不適切な売り場レイアウトにあっても、本部は"セールの反応率は悪かった"と判断してしまいます。

つまり、データの生成過程を把握し、得られたデータが分析対象として"使える"ことを確認する作業が不可欠なのです。そういう意味では、今回のSAS導入は、分析以前に、現場のオペレーションを見直す絶好の機会になりました」と話す。

2013年には、スマートフォン専用アプリ「C MEMBERS」をインストールした顧客が、実店舗に来店するたびに自動でポイントを付与するサービスも開始した。何度も来店してくれるファンに、購入の有無に関わらずポイントを還元しようという取り組みだ。この仕組みにより、店頭スタッフが、顧客の属性や来店頻度、過去の購買履歴を把握し、顧客ごとの接客や商品提案に役立てる販売環境作りを目指している。

同社は現在、実店舗および仮想店舗の在庫量を最適化する分析モデルの開発に着手している。緻密な需要予測をベースに各店舗の在庫量を最適化できれば、欠品による販売機会損失の抑制と余剰在庫にかかるコストの削減を期待できる。また、店舗責任者約20人が集まる週次の会議を圧縮できたり、会議資料作成の労力を軽減できたりなどの効果も見込んでいる。

井谷氏は、「分析によって、ブランディングへの影響度の高いファン層やインフルエンサーを特定するというテーマも面白いと考えています。たとえば、購買履歴データに加え、店頭センサーを用いた来店履歴データがあれば、新しい切り口で顧客のセグメンテーションが可能になります。セグメントされた顧客グループごとに適切なプロモーションを展開できれば、さらに顧客との距離が縮まるはずです。そうして競合との差別化やブランド価値のさらなる向上を目指していきたいです」と話している。

Ceno Company
せーののプロジェクトメンバー

課題

卸売業から製造小売業へ業態転換を実現したが、新しいビジネスモデルに対応できる在庫管理の仕組みを備えていなかった。需要予測にもとづく在庫最適化や、売り場の鮮度を保つ商品コントロール、戦略的なプロモーションを実現するための分析ツールが求められた

ソリューション

データ分析結果をもとに意思決定できるプロセスを運用することが可能。顧客の属性や来店頻度、過去の購買履歴を解析し、顧客ごとの接客や商品提案に役立てられる現場づくりをサポートできる

利点

割引率と購入率の相関を把握して最適な商品割引率を算出し、売上の増大を達成。顧客の来店傾向から店舗スタッフのシフト適正化も実現し、アルバイトの人件費を約20%削減した

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