Q&A: 科学的根拠にもとづく政策決定のためにデータ・ビジュアライゼーション(視覚化)を活用

オーストラリア健康福祉研究所(AIHW)におけるデータアクセスのリアルタイム化

「どのような怪我で入院が必要になりますか?」「遠隔地の歯科治療は都市部と比べてどうですか?」「オーストラリアの医療従事者は需要の拡大に対応できるペースで増えていますか?」

オーストラリアの政策決定者がこうした質問をすると、オーストラリア健康福祉研究所(Australian Institute of Health and Welfare: AIHW)は適切な回答を用意しなければならない。健康福祉関連の情報や統計を担当するこの国家機関の目的は、情報・統計の活用を高度化することによって国民の健康を増進させることにある。政府や地域社会のリーダーたちは医療、住宅、社会事業に関する議論、討論を行い、政策を立案するために、AIHWが提供する情報を利用している。

本稿では、AIHWのICT&ビジネス・トランスフォーメーション担当上級幹部のウォーレン・リヒター(Warren Richter)氏のインタビューをご紹介する。同氏には政策展開プロセスにおけるビジュアル・アナリティクスの重要性と、同研究所の業務に及びつつあるビッグデータの影響についてお話を伺った。


オーストラリア政府が新たに実施した統計データ統合プロジェクトによって、調査研究や分析に利用できる情報量が増大します。地域社会にも大きなメリットがもたらされることでしょう。当研究所では、SASとSAS Visual Analyticsを使ってこのデータを探索しています。

ウォーレン・リヒター
ICT&ビジネス・トランスフォーメーション担当上級幹部

オーストラリア健康福祉研究所にとってデータ探索が重要な理由は?

当研究所のミッションは明確で、国民の健康と福祉を促進するために、信頼できる情報や統計を提供することです。それに尽きます。私達は、医療、高齢者介護、育児サービス、住宅補助、児童福祉、その他の地域社会関連分野に関する情報を収集、分析、提供しています。また、国民の合意が得られるように業績指標の算出や目標値の設定も行っています。

現在では、分析機能をどう扱えばよいかに悩むことなく、分析で何を行いたいかに集中できるようになっています。当研究所では長年、調査研究と統計の目的で大規模で複雑なデータセットを扱ってきましたが、最近になって、個人の機密情報を含むデータセットの統合についてオーストラリア政府が定めた非常に厳格な認可制度のもとで、統合機関として認定されました。最初に認定された機関は当研究所も含めて2つの機関のみです。統合機関として認定されたということは、独立した倫理委員会による承認を経て、調査研究および分析の目的で個人に関する詳細情報を取り扱う正式な認可を得たということです。

私達は、この役割と、プライバシー保護や機密保持の責任を非常に重大に受け止めています。年間に行うデータ統合処理は約90件に及びますが、その中には非常に複雑なものがあります。

この認可制度により、オーストラリア政府が調査研究や分析に利用できるデータが増大します。地域社会にも大きなメリットがもたらされることでしょう。

当研究所では、SASとSAS Visual Analyticsを使ってこのデータを探索しています。

この環境では、データ管理基盤と分析機能が見事に融合されています。データを公開する際の厳格な機密性および認証機能と、SAS Visual Analyticsなどのインメモリ・アナリティクス製品がもたらす極めて魅力的な機能の組み合わせが実現しているのです。

ビッグデータが業務に及ぼしている影響は?

私達のような統計機関にとって、ビッグデータ自体は目新しいものではありません。長年取り組んできましたし、従来型の分析を行う限りは既存のツールを使い続けることができます。しかし、より大規模でより複雑なデータセットが利用できるようになったことで、分析の可能性が広がっています。当研究所の場合、この状況はインターネットによってもたらされたのではなく、厳しい条件の下で、より多くのデータを分析に利用できるようにしたいというオーストラリア政府の意向の結果です。

ただし、私達にとっても、インターネットからデータを取得することの重要性は高まっていくでしょう。過去に生成されたデータだけではなく、事務作業中に副産物として生じるリアルタイムデータを活用する可能性を探り始めているからです。世界の統計機関の中には、すでにPOS端末などから直接フィードを取得し、リアルタイムで経済活動を測定しているところもあります。私達は、医療業界にも同様の可能性があると考えています。

ビジュアル・アナリティクスにSASを選んだ理由は?

端的に言えば、私達にとっての利用価値が高かったということです。SAS Visual Analyticsは、データセットの規模と複雑さに対応でき、使いやすいだけでなく、当研究所が求めていた分析手法とデータ視覚化機能をサポートしていました。

見栄えのする最新トレンドのプッシュボタン機能の有無よりも、総合的なプラットフォームとして活用できる点が重要でした。SASでは、もとになるデータセットを操作することも、視覚化の背後にある分析アルゴリズムの詳細を把握することも可能です。また、コストパフォーマンスの高さと、既存のデータ探索機能を強化できる点も魅力でした。

政府機関からは、「情報流通管理センター」のような機能の開発を要請されるケースが増えています。これはデータウェアハウスというよりもダッシュボードに近い機能で、意思決定者にアクセスを許可するデータ範囲をセクターレベルやセクター内の領域レベルで厳密に設定・管理することができます。SASはこのビジョンをサポートできます。

また、保健・高齢化省などの情報提供先の意思決定者や政策分析担当者を支援したいとも考えています。そのためには、さまざまな政策課題について担当機関と協力関係を築き、必要な時に必要なデータを提供することに加え、その意味を理解しやすい形で提示するデータ・ビジュアライゼーション(視覚化)機能が欠かせません。これまで行ってきた数字とテキストが中心のレポートだけでは不十分なのです。ですから私達は今、データの探索と理解をお手伝いし、適切な分析手法の適用を支援するための準備に取り組んでいます。利用者の皆様に今よりも大きな付加価値をお届けしたいと考えています。

基本的な方向性としては、最新の疑問の解消に役立たない可能性のある18ヶ月前の状況に関するレポートを待つのではなく、業務を行いながらリアルタイムで必要な情報を取得できる環境を分析担当者に提供することを目指しています。

SAS Visual Analyticsを利用している政策領域は?

当研究所では、刊行物やキューブをデータ視覚化で補うケースがどんどん増えています。また、利用者の皆様の意思決定をサポートする新しいサービスを開発するために、データ視覚化機能を拡張することも計画しています。

当研究所ですでにビジュアル・アナリティクス機能を利用している領域の一例としては、意思決定者に精神衛生サービスの情報を提示する新しい手法の開発があります。非常に複雑でめまぐるしく変化するデータセットから、訴求力の高いビジュアル表現を駆使したダッシュボードを素早く簡単に作成し、オンラインで幅広く提供できる機能には、大きな可能性を感じています。この機能を間もなく他の分野にも拡大する予定です。

新たな疑問点を解消したり、データを複数の角度から探索したりする上で、ビジュアル・アナリティクス機能はどのように役立つのか?

データセットが小規模の場合は、旧式の一般的な分析手法でも、ある程度の視覚化は可能ですし、かなり簡単に行うことができます。また、小規模なデータセットに対して簡単な回帰分析を実行することは表計算ソフトでも可能ですが、データセットが大規模で複雑になると簡単ではありません。「これがデータで、その意味はこの図のとおりです。ご覧のように分析結果はすぐに分かります。サンプリングや部分抽出の手法を決めたり、それが有効かどうかを判断したりする必要はありません」と言える環境は非常に便利です。今では、そうした事前準備をまったく気にする必要がありません。

ビジュアライゼーション機能の導入前は、分析担当者が求めていることを正確に理解した上でキューブを作成する必要がありました。今では、誰もがいつでもデータセット全体を利用することができます。もちろん、プライバシーや機密性を守るための権限設定は適用されますが。大規模で複雑なデータセットが作成されるのと同時進行でその意味を知ることができるのは、本当に画期的なことです。

最後に、ビジュアル・アナリティクスに関する長期的な目標は?

既存のデータを素材にしてより多角的に課題を掘り下げ、ビジュアル表現を用いて実世界をより的確に描き出せるようになることです。その上で、当研究所の利用者の皆様が実世界のデータをリアルタイムで分析して政策の提言や立案を行えるように、ビジュアル・アナリティクスの活用を直接サポートすることを目指しています。利用者の皆様とより緊密な関係を築き、データに関する理解を深めていくことで、より優れた政策の立案をお手伝いできるようになると考えています。非常に大規模で複雑なデータセットに簡単にアクセスし、利用者の皆様と一緒にいくつものwhat-if分析を実行することができる機能は実にエキサイティングであり、これを継続的な高付加価値サービスとして開発していきたいと思います。

課題

AIHWの多様な分析サービスに新たなサービスを追加し、機密情報を含むデータセットへのアクセスを厳密に制御できる最新の認証機能を導入する必要があった。データセットの規模と複雑さに対応でき、使いやすいだけなく、AIHWの要件に合う分析手法とデータ視覚化機能も備えたデータ探索機能を必要としていた。

ソリューション

SAS® Visual Analytics

利点

最新の疑問の解消に役立たない可能性のある18ヶ月前の状況に関するレポートを待つのではなく、業務を行いながらリアルタイムで必要な情報を取得できる環境を分析担当者に提供。今では、研究所の利用者に分析サービスも提供できるようになっている。

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